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【種牡馬辞典】Kingmambo系・Smart Strike系

Kingmambo

<プロフィール>
1990年生、米国産、13戦5勝
<主な勝ち鞍>
1993年仏2000ギニー(T1600m)
1993年St.ジェームズパレス(T8F)
1993年ムーランドロンシャン賞(T1600m)
<代表産駒>
エルコンドルパサー(1998年NHKマイルC、ジャパンC、1999年サンクルー大賞)
Lemon Drop Kid(1998年ベルモントフューチュリティS、1999年ベルモントS、トラヴァーズS、2000年ホイットニーH、ウッドワードS)
アルカセット(2005年サンクルー大賞、ジャパンC)
キングカメハメハ(2004年NHKマイルC、日本ダービー)
Henrythenavigator(2008年英2000ギニー、愛2000ギニー、St.ジェームズパレスS、サセックスS)
<特徴>
父は大種牡馬Mr. Prospector、母は1987、88年BCマイル連覇などGⅠ10勝の女傑Miesqueという超良血馬。本馬自身、競走馬として芝マイルGⅠを3勝し、半妹East of the Moonも1994年仏1000ギニー、仏オークス、ジャックルマロワ賞などを制覇。その他、全弟Miesque's Sonは種牡馬としてGⅠ馬を輩出し、全妹Monevassiaは名繁殖牝馬ラヴズオンリーミーを経由してリアルスティール=ラヴズオンリーユーを出すなど、本牝系の勢いはとどまることを知らない。さらに、本馬自身も種牡馬として父母譲りのスピードを武器に多くのGⅠ馬を輩出。リーディングサイアーには縁がなかったが、如何なる条件でも一流馬を出し続けた万能っぷりは他の名種牡馬たちに引けを取るものではなかった。これは、Nashua≒Nantallahの3×5由来のパワーや母母Pasadobleが持つ重厚過ぎるスタミナ血脈が根拠に挙げられ、後継種牡馬キングカメハメハのマルチな活躍はまさに父譲りの特徴である。ジェイドロバリーやファスリエフなどは本馬と相似の血の関係。Kingmambo≒ジェイドロバリーのインブリードを持つレッツゴードンキやメイショウマンボが道悪やダートを苦にしなかったことは、サンデーサイレンスには無いパワーを本血脈から受け継いだ証といえるだろう。

-エルコンドルパサー

<プロフィール>
1995年生、米国産、11戦8勝
<主な勝ち鞍>
1998年NHKマイルC(T1600m)
1998年ジャパンC(T2400m)
1999年サンクルー大賞(T2400m)
<代表産駒>
ソングオブウインド(2006年菊花賞)
アロンダイト(2006年ジャパンCダート)
ヴァーミリアン(2007年ジャパンCダート、東京大賞典、2007、10年川崎記念、2007~09年JBCクラシック、2008年フェブラリーS、2009年帝王賞)
<特徴>
日本とフランスでGⅠを制し、1999年凱旋門賞ではMontjeuとの壮絶な叩き合いを演じた日本競馬史に名を残す歴史的名馬。3代母Lisadellは名繁殖牝馬Specialの全妹で、母サドラーズギャルはSpecial=Lisadellの全姉妹クロスを3×2で重ねた形。さらに、本馬は父にKingmamboを配して、Nureyev≒Sadler's Wellsの3×2、さらにはSpecial=Lisadellを3×4・3でインブリードした強烈な近親交配馬である。Special=Lisadell譲りの立ち肩で、首差しから胸前の力強さは迫力満点。ダートも洋芝もものともせず、1400~2400mの幅広いカテゴリーで勝利を挙げたことは万能種牡馬Kingmamboの直仔らしさともいえるだろう。種牡馬としても僅か3世代の産駒からヴァーミリアン(2007年ジャパンCダート、東京大賞典、2007、10年川崎記念、2007~09年JBCクラシック、2008年フェブラリーS、2009年帝王賞)、ソングオブウインド(2006年菊花賞)、アロンダイト(2006年ジャパンCダート)と芝、ダートを問わずGⅠ馬を輩出。父系の勢いは寂しい限りだが、名繁殖牝馬クリソプレーズがその血を受け継いでおり、その仔クリソライト、マリアライト、クリソベリルらには本馬のパワーと底力が存分に伝わっている。

-Lemon Drop Kid

<プロフィール>
1996年生、米国産、24戦10勝
<主な勝ち鞍>
1998年ベルモントフューチュリティS(D8F)
1999年ベルモントS(D12F)
1999年トラヴァーズS(D10F)
2000年ホイットニーH(D9F)
2000年ウッドワードS(D9F)
<代表産駒>
Lemons Forever(2006年ケンタッキーオークス)
Richard's Kid(2009、2010年パシフィッククラシックS、2010年グッドウッドS)
ビーチパトロール(2016年セクレタリアトS、2017年アーリントンミリオンS、ターフクラシックS)
<特徴>
2000年北米古牡馬チャンピオン。5代母Uvira(1941年愛オークス)に遡る名牝系で、3代母Gay Missile(1970年アシュランドS)のきょうだいには1980年北米リーディングサイアーRaja Babaや1977年アーリントンワシントンフューチュリティ優勝馬Sauce Boatなどがいる。また、母Charming LassieのきょうだいにはGⅠ2勝馬Wolfhound、Summer SquallやA.P. Indyを出したWeekend Surpriseなどがおり、A.P. Indyとは3/4同血の間柄だ。Striking=Busher≒Busandaの5・5×3も特徴的。Kingmamboを父に配した本馬も母父Seattle Slewの影響が強い胴長体形で、ベルモントSを制すあたりにもその影響力を感じる。種牡馬としてはKingmambo直仔らしく芝とダートを問わずGⅠ馬を輩出。アウトブリードの血統構成でもあり、主張の強い種牡馬ではなかっただろう。ちなみに、半弟スタチューオブリバティは日本でも種牡馬として活躍した。

-キングズベスト

<プロフィール>
1997年生、米国産、6戦3勝
<主な勝ち鞍>
2000年英2000ギニー(T8F)
<代表産駒>
ワークフォース(2010年英ダービー、凱旋門賞)
エイシンフラッシュ(2010年日本ダービー、2012年天皇賞秋)
Sajjhaa(2013年ジェベルハッタ、ドバイデューティフリー)
<特徴>
その年の欧州年度代表馬に選出されるGiant's Causewayに初めて黒星をつけた2000年英2000ギニー優勝馬。次走のレース中の怪我により引退を余儀なくされたが、種牡馬としてもワークフォース(2010年英ダービー、凱旋門賞)とエイシンフラッシュ(2010年日本ダービー、2012年天皇賞秋)というイギリスと日本のダービー馬を輩出し、2010年には仏リーディングサイアーにも輝いた。1993年凱旋門賞馬であり、繁殖牝馬としてもGalileoやSea the Starsなど現在ヨーロッパを席巻する名種牡馬を生んだ名牝Urban Seaは本馬の半姉。本馬は万能種牡馬Kingmamboの直仔らしく幅広いカテゴリーでGⅠ馬を出しており、2013年からは日本で種牡馬生活を送った。

-キングカメハメハ

<プロフィール>
2001年生、ノーザンファーム産、8戦7勝
<主な勝ち鞍>
2004年NHKマイルC(T1600m)
2004年日本ダービー(T2400m)
<代表産駒>
アパパネ(2009年阪神JF、2010年桜花賞、オークス、秋華賞、2011年ヴィクトリアマイル)
ロードカナロア(2012、13年スプリンターズS、香港スプリント、2013年高松宮記念、安田記念)
ホッコータルマエ(2013年かしわ記念、JBCクラシック、2013、14年東京大賞典、2013、15年帝王賞、2014年チャンピオンズC、2014~16年川崎記念)
ドゥラメンテ(2015年皐月賞、日本ダービー)
レイデオロ(2017年日本ダービー、2018年天皇賞秋)
<特徴>
2004年NHKマイルC、日本ダービーを変則ローテで連勝した日本競馬界の大王。父Kingmambo、母父ラストタイクーンという短距離指向の強い組み合わせでダービーでは距離不安が囁かれたが、手綱を取った安藤勝己騎手がNHKマイルCの方が心配だったと話した通り、穏やかな気性と追って良さが出る末脚から陣営はダービーの方が自信があったよう。立ち肩で筋肉量豊富、特に丸みのあるトモはまさにKingmamboのそれであり、名牝Miesqueの絶対的なスピードを確実に受け継いだ証ともいえるだろう。しかし、その母Pasadobleが重厚なスタミナ血統で、2400mを走り切るスタミナを併せ持ったことも大きな特徴だ。種牡馬としても父同様に多種多様な産駒を出し、芝短距離の絶対王者ロードカナロア、父のダービーレコードを破った2冠馬ドゥラメンテ、ダートGⅠ/JpnⅠ10勝のホッコータルマエなどGⅠ馬も多数輩出した。リーディングサイアーの座こそ2012年以降はディープインパクトに譲ったが、同馬とともに近年の日本競馬を支えてきたことは疑う余地がない。穏やかな気性とバランスのいい肉体から母の良さを尊重し、サンデーサイレンス系の瞬発力や北米血統のスピード、欧州血統のスタミナをうまく調理するのがキングカメハメハという種牡馬であった。そんな中でも、父キングカメハメハに最も似た産駒として挙げたいのはベルシャザール(2013年ジャパンカップダート)。筋肉の付き方や背中のラインなど身体のつくりがよく似ており、頭が高くやや硬めに映るフットワークもそっくり。違いといえば、父よりも若干瞬発力に劣ったぐらいか。安藤勝己騎手も新馬戦後のインタビューで、これまでに乗ったキングカメハメハ産駒の中でも最もキングカメハメハに似ている、と話している。ベルシャザールのマルチな活躍はまさにキングカメハメハ的であったといえるだろう。

--ルーラーシップ

 <プロフィール>
2007年生、ノーザンファーム産、20戦8勝
<主な勝ち鞍>
2012年クイーンエリザベスⅡ世C(T2000m)
<代表産駒>
キセキ(2017年菊花賞)
メールドグラース(2019年コーフィールドC)
ドルチェモア(2022年朝日杯FS)
<特徴>
名牝エアグルーヴ(1996年オークス、1997年天皇賞秋)の8番仔であり、アドマイヤグルーヴ(2003、04年エリザベス女王杯)、フォゲッタブル(2009年ステイヤーズS)、グルヴェイグ(2012年マーメイドS)らをきょうだいに持つ良血馬。父キングカメハメハ譲りの強靭な筋肉と母エアグルーヴ譲りの柔軟性を持ち合わせ、特にHornbeam≒パロクサイドの6×4・4由来のスタミナとスピードの持続力は本馬の大きな特徴となっている。ストライドを伸ばして走る姿は実に雄大で、現役時に本馬の末脚が止まるシーンを見たことがない。種牡馬としても自身と似たタイプを多く出し、産駒にはスタミナと持続力に長けた中長距離馬が多い。その反面、日本の大レースでは切れ負けすることが多く、産駒のGⅠ勝利はキセキが制した不良馬場の2017年菊花賞やメールドグラースが制したオーストラリアでの2019年コーフィールドCなど少々変わった舞台での活躍が目立つ種牡馬だ。

--ロードカナロア

 <プロフィール>
2008年生、ケイアイファーム産、19戦13勝
<主な勝ち鞍>
2012年スプリンターズS(T1200m)
2012年香港スプリント(T1200m)
2013年高松宮記念(T1200m)
2013年安田記念(T1600m)
2013年スプリンターズS(T1200m)
2013年香港スプリント(T1200m)
<代表産駒>
アーモンドアイ(2018年桜花賞、オークス、秋華賞、2018、20年ジャパンC、2019年ドバイターフ、2019、20年天皇賞秋、2020年ヴィクトリアマイル)
サートゥルナーリア(2018年ホープフルS、2019年皐月賞)
ダノンスマッシュ(2020年香港スプリント、2021年高松宮記念)
レッドルゼル(2021年JBCスプリント)
パンサラッサ(2022年ドバイターフ)
<特徴>
2012、13年スプリンターズS、香港スプリント連覇の偉業を成し遂げた最強芝短距離馬。その卓越したスピードは短距離5勝の母レディブラッサムから受け継いだものであり、さらにはその父Storm Catに由来する。安田隆行厩舎流のトレーニングの助けもあっただろうが、デビュー前からトモのボリュームは群を抜いていた。また、母が持つSecretariat=Syrian Seaの3×4全きょうだいクロスに由来する柔軟性も大きな特徴で、安田記念での末脚勝負にも制したことは競走馬としての幅の広さを証明する走りでもあった。種牡馬としては、ダノンスマッシュ(2020年香港スプリント、2021年高松宮記念)からアーモンドアイ(2018年桜花賞、オークス、秋華賞、2018、20年ジャパンC、2019年ドバイターフ、2019、20年天皇賞秋、2020年ヴィクトリアマイル)まで幅広いカテゴリーの活躍馬を輩出。レッドルゼルが2021年JBCスプリントを制すなどダート適性も十分に示している。

Smart Strike

<プロフィール>
1992年生、加国産、8戦6勝
<主な勝ち鞍>
1996年フィリップHアイスリンH(D8.5F)
<代表産駒>
English Channel(2006年ターフクラシックS、2006、07年ユナイテッドネーションズS、ターフクラシック招待S、2007年BCターフ)
Curlin(2007年プリークネスS、BCクラシック、2007、08年ジョッキークラブGC、2008年ドバイワールドC、スティーヴンフォスターH、ウッドワードS)
Lookin At Lucky(2009年デルマーフューチュリティ、ノーフォークS、キャッシュコールフューチュリティ、2010年プリークネスS、ハスケル招待S)
<特徴>
名牝Dance Smartly(1991年シリーンS、BCディスタフ)の半弟。競走馬としては体質の弱さから8戦6勝と不完全燃焼で引退となったが、種牡馬としてはCurlin(2007年プリークネスS、BCクラシック、2007、08年ジョッキークラブGC、2008年ドバイワールドC、スティーヴンフォスターH、ウッドワードS)を筆頭に数多くのGⅠ馬を輩出し、2007、08年北米リーディングサイアーに輝くなど大成功を収めた。Nasrullah≒Royal Chargerの4×5・5から柔らかいフットワークで走り、純米血種牡馬ながら芝とダートを問わない万能っぷりが魅力。さらには、それ以外に濃いクロスを持たないため、繁殖牝馬を尊重する種牡馬ともいえるだろう。

-Curlin

<プロフィール>
2004年生、米国産、16戦11勝
<主な勝ち鞍>
2007年プリークネスS(D9.5F)
2007年ジョッキークラブGC(D10F)
2007年BCクラシック(D10F)
2008年ドバイワールドC(D2000m)
2008年スティーヴンフォスター(D9F)
2008年ウッドワードS(D9F)
2008年ジョッキークラブGC(D10F)
<代表産駒>
Stellar Wind(2015年サンタアニタオークス、2016年ゼニヤッタS、2016、17年クレメントLハーシュS、2017年アップルブラッサムH、ビホルダーマイルS)
Good Magic(2017年BCジュベナイル、2018年ハスケル招待S)
Vino Rosso(2019年サンタアニタGC、BCクラシック)
Malathaat(2021年アシュランドS、ケンタッキーオークス、アラバマS、2022年パーソナルエンスンS、スピンスターS、BCディスタフ)
<特徴>
2007、08年と2年連続で米年度代表馬に輝いた歴史的名馬。Smart Strike産駒らしく綺麗なストライド走法で走り、鋭い末脚を武器に数多くのビッグタイトルを手にした。母Sherriff's DeputyはアウトブリードのDeputy Minister産駒で、本馬自身も5代アウトブリードの配合形。Deputy Ministerの影響もあり、競走馬としても種牡馬としてもダートでの活躍が目立つが、繁殖牝馬の父としてはジャスタウェイ産駒のガストリックが2022年東京スポーツ杯2歳Sを制しており、本質は肌馬の良さを引き出す種牡馬だったと考えられる。今後、日本にも入ってくるであろう後継種牡馬や繁殖牝馬が本国とは異なる活躍を見せる可能性は高いのではないだろうか。


≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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