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暑熱対策は何のため?(田村明宏)/週刊トレセン通信

 来週から始まる2回新潟競馬では競走時間帯の拡大が実施される。昨年は1898年の統計開始以降で史上最も暑い夏だったし、今年もまだ梅雨が明け切らない7月8日に府中市で最高気温39.2℃を記録して早くも猛暑を予感させている。少し時期は早いが、ルメール騎手は宝塚記念終了後に既に1カ月のリフレッシュ休養に入っているし、先週からは川田騎手も2週間の休養を取っている。各々、違う事情があるのだろうが、ここまでの疲労が蓄積する時期でもあるし、対策を取るのは当然だろう。

 JRAが暑熱対策を取るのは主に3つの理由が考えられる。一番は競走馬の健康管理のため。サラブレッドはレースで高いパフォーマンスを求められるアスリートに似ていて暑い環境下での競走および調教は熱中症や脱水症状のリスクが高く、暑熱対策はパフォーマンス向上に直結する。更に騎手並びに厩舎関係者のためでもある。競馬に携わる関係者も熱中症や体調不良の危険がある。暑熱対策によって健康と安全を守ることが競馬開催を円滑に進行させるために重要だ。もうひとつ重要なのは競馬ファンのためである。競馬場で観戦する観客も暑さによる熱中症や体調不良に注意が必要だ。休憩を取るための施設やクールダウンするためのサービスや情報提供も十分に行われる必要がある。こんなことは私が言うまでもなく主催者が考えていることだろう。

 少し意味合いは違うが、主に北半球のアメリカやヨーロッパ諸国では社会全体として夏場にサマータイムを導入して、冬に比べ1時間、時計を早めることで逆に仕事の時間も早く終了させている。JRAでは競馬中継の事情もあって1Rの開始こそ9時35分と早くなっているが、休憩を挟んで再開されるのは15時10分になっていてどこまで涼しくなっているかは微妙なところだ。ちなみに冒頭で述べた7月8日の府中市で最高気温が記録されたのは13時53分だった。勿論、今年は試験的な実施ということもあるので今後は状況を見てということになるが、今回の暑熱対策が何のために行われるかということが曖昧なままならすべての関係者にとって意味がない事になりかねないと思っている。


田村明宏TM

田村明宏(厩舎取材担当)
昭和46年6月28日生 北海道出身 О型
今週の注目馬は日曜メイン、ジュライSに出走を予定しているケンシンコウ。戦績を振り返ると3歳夏にレパードSを勝って4歳夏にはこのレースを勝っている。更に5歳夏には後のダートGⅠ勝ち馬ジュンライトボルトに半馬身差の3着。昨年こそ夏場に出走がなかったが、典型的な夏馬だ。休養明けでも。


本稿は2024年7月17日に「競馬ブックweb」「競馬ブックsmart」に掲載されたコラムです。下記URLからもご覧いただくことができます。

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