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【マーメイドS】アリスヴェリテを◎に指名したワケ

◎アリスヴェリテ1着(4番人気、単勝910円)

先週の日曜に京都の芝2000m(内)で行われた牝馬重賞のマーメイドS。私自身の体調が思わしくなくて予想に推奨理由を添えられなかったので、ここで軽く触れておきたい。推奨理由というより、“好走したワケ”を書く感じで進めていくことになる。

最軽量となる50キロのハンデだったのは、当然のこと小さくない推奨理由である。他にも見逃してはいけない買えるポイントが2つあって、反対に大きめと言える不安点が1つあった。

1つ目の買える要素は、状態面の上乗せが大きかったことである。

マーメイドSの前のレース、2勝クラスを勝ったのが5月25日。その前のレースは3月24日で、中8週の間隔だった。そして、中間が順調だったわけではない。

脚を腫らしてしまい、調整が狂っていた。4月26日(金)に坂路(栗東)で51秒7-12秒5と速い時計を出していたが、脚を腫らした影響で時計が1週飛ぶ。次に時計になったのが5月10日(金)の54秒5-12秒9で、1週前追い切りになる16日(木)が53秒8-12秒3。当週は終いにしっかりと追われ、52秒3-12秒3を出した。

在厩していて大きく休ませたわけでなく、完全に緩んだわけではなかったのだろう。でも、一頓挫あった状態で厳しい実戦を乗り切るのは簡単なことではない。それで勝ち切ったことの意味は大きい。

マーメイドSはそこから中2週。反動はなかったようで、1週前の金曜に坂路で55秒8-12秒5を乗ると、最終追いは終いにビシッと追われて51秒8-12秒1をマークした。レース当日は、馬体重が2勝クラス勝ちの時と比べて2キロ増の468キロ。中身も息も良くなっていたのは間違いない。

2つ目の買える要素は、血統からくる底力である。

2勝クラス勝ちは、舞台がマーメイドSと同じ京都の芝2000m(内)。2番枠からのスタートで、ヤネは新人の柴田裕一郎、3キロ減が利いて斤量は53キロだった。ゲートが開いてスッと出たが、9番のルソルティールも出脚が良く、これを制すために裕一郎が少し手綱を押す。これでスイッチが入ってしまい、暴走する感じでグングンと後ろを離すことになった。

テンの3ハロンは34秒5で、1000m通過が56秒8という速さ。そして、その後も大きくラップは緩まない。4コーナーに入る地点の1400mの通過が1分20秒6で、ここで後続との差は14馬身ほどもあった。

直線に向いて、さすがに脚色が鈍っていく。最後はカンティプールに勢い良く迫られて交わされるかと思ったところ、ギリギリ残ってクビ差で勝利した。上がりの3ハロンは12秒0-12秒4-12秒8の37秒2。勝ち時計は1分57秒8(良)だった。

ここで注目しないといけないのが、いつも書いている“ゴールしたあとの姿”である。最後は一気に詰められ、ゴール直後には2着カンティプールの体が完全に前に出ていた。が、レースが終わって息を吐くと、アリスヴェリテはまた少し走り出すような感じになる。そして、カンティプールの前に出た。

ゴールした瞬間だけを見れば、アリスヴェリテはそのあとに後続に次々と交わされておかしくなかった。しかし、そうはならなかった。レースが流れて勝ち時計も速くなると、当然のこと差す方だって大変である。後ろは余力はなく、アリスヴェリテの方に余力が残っていて、ゴールしたあとで後ろを離していくぐらいになっていたわけだ。

生物である競走馬は、どんなに強くても速いラップをずっと踏んでいくことはできない。だから飛ばして逃げたアリスヴェリテの脚勢は大きく鈍ったのであって、根っこの部分でスタミナが切れた=備えているタンクが空になったのではなかった。あれだけガリガリとムキになって走り、しかも、2000mを全体で速い時計で走破したことを考えると、彼女の“ゴールしたあとの姿”は特筆すべきぐらいにスゴイものだった。

もともとアリスヴェリテは、2歳時にアルテミスS(GIII・東京芝1800m)で1着ラヴェル、2着リバティアイランドとクビ+クビ差の3着に駆けて非凡な素質を示していた。3歳の春にはスイートピーS(L・東京芝1800m)で、1着ウヴァロヴァイトと1馬身差の2着に好走している。「ちと押しが利かないけど、粘り強く脚を使うな」という印象を私個人は持っていた。

これは血統から来るところが大きい。父はキズナ、母の父はコジーン。母は米国産馬で、半兄にリアンヴェリテ(父ゴールドアリュール)、全兄にキメラヴェリテがいる。

兄はどちらも個性派だったので、覚えている方も多いだろう。競馬を始めたのが最近という方は、ネットで戦績を調べたり、実際のレース映像を見ていただけたらと思う。

2014年生まれのリアンヴェリテは、ダートの1400m~1800mで飛ばして逃げるのが得意技だった。11番人気で2着したこともある。17年生まれのキメラヴェリテは、10番人気だった若葉Sで大逃げから2着に残って穴を開けた。

そして、アリスヴェリテも…。兄たちは自分のリズムで走るとバテそうでバテない持久力、底力を発揮していたが、妹も同じ特徴を継いでいた。

話は変わって、マーメイドSで心配だった点。それは2勝クラス勝ちの時に、柴田祐が暴走スイッチを入れてしまったことである。続けて同じコースを走るわけで、また行きすぎてしまう危険性があった。

マーメイドSは柴田祐が骨折して乗れなかったため、永島まなみに乗り替わりになった。枠は外の13番枠(16頭立て)。1番枠のベリーヴィーナスが押してハナを主張しそうで、「これをペースメーカーに使う形で2番手に控えるのかな?」という感じがあった。これはもちろん私がその可能性が高いと思っただけで、逃げにこだわってハナを叩くことも考えられた。

結局、選択したのは“逃げ”だった。ベリーヴィーナスとは2勝クラス勝ちの前のレースで一緒に走っていて、控えたところ相手に逃げ切られて2着に終わっている。それが陣営の頭にあったか? あと、単純スピードとなるとアリスヴェリテの方が上で、さらにハンデがベリーヴィーナス(53キロ)より3キロ軽いことも意識したはずである。

いろいろとシミュレートした上で、ハナを確定させ、折り合いをつけることも両立させるという作戦をとることにしたのだろう。「勢い良く交わしていけばベリーヴィーナスも控える」と考えたはずで、実際にそうなった。

出していくことによって暴走するリスクが高まるのは、陣営ももちろん理解している。それでも対策は講じていて当然で、息を入れさせることに成功する自信が少しはあったのかもしれない。でも、それはやはり“賭け”である。そして、賭けを打つのは、競馬だから間違ったことではない。

かくして、結果はアリスヴェリテの勝ち。ハナを確定させるのに2ハロン目が10秒9になり、やはり持っていかれて大逃げを打つ形になった。それでも、2勝クラスを勝った時よりは息が入っていた。4コーナーに来て手応えが残っている感じで、大丈夫そうなムード。最後は走りが崩れたが、2馬身差で押し切ることとなった。

勝ち時計は1分57秒2(稍)。1000mの通過は58秒3で、1400mは1分21秒1、上がりは11秒6-12秒0-12秒5の36秒1だった。

マーメイドSにおいても、“ゴールしたあとの姿”には注目すべきだ。前のレースと同じようにまたスッと走り出していて、後ろを離すぐらいになっていた。50キロがあまりに大きかったので斤量が増えていってどうかだが、とにかくゴールしたあとの姿がアリスヴェリテの奥の深さを感じさせる。

ここでまとめ。「前走は一頓挫あって順調でなかった=状態面で上積みがあった」、「持久力に富んでゴールしたあとに脚を使うところがあった=底が割れずに相手が上がっても応じて戦える」…。あまり言われないところで、アリスヴェリテにはこんな強調できるポイントがあったのである。

「とにかく細かいところまでチェックする」…。これは競馬予想において絶対的に必要なことである。面倒と思う方がいるかもしれないが、これをやって狙える馬を見つけ出し、それで結果につながる、要するに馬券になるとなった場合、その喜びは何ものにも代えがたい。

出走馬の過去のレース映像を多くチェックするのは、手間的にも時間的にも簡単なことではない。でも、過去の情報が蓄積されているサイトを確認するとか、厩舎の話をチェックするとかで、決定的なものを見つけられることがある。

私もこれといったものがあれば予想コメントの中で書くようにするので、そちらも参考にしていただけたらと思う。

さあ、今週は京都で争われる宝塚記念。雨にたたられることになりそうだが、春競馬を締めくくる大一番を楽しみたい。


騎手、調教師、馬主、エージェント、専門紙の記者などとのコネクション強化を図ります。有益な予想をお届けすべく、全力で取り組んでまいります。