エピファネイア産駒は本当に早熟か

エフフォーリアやデアリングタクトを輩出したエピファネイア。だがエピファネイア産駒は競馬ファンからいつも「早熟」と言われる。それだけならまだしも早枯れとまで言われる始末。エピファネイア産駒の古馬成績は本当に悪いのだろうか?血統とデータ面から考察する。

血統

まずエピファネイアの血統構成を見てみよう。父はシンボリクリスエス。ボリクリの父はロベルト系、母父はボールドルーラー系。どちらも晩成傾向が強い血統。シンボリクリスエス自身も3歳秋から強くなった。

母はシーザリオ。オークス、アメリカンオークスを制したスペシャルウィークの最高傑作。更に産駒成績は現役成績よりも良く、3頭の産駒がG1を勝ち種牡馬入り。シーザリオ産駒は早熟傾向が強いのが特徴。

ここで注意しなければいけないのが、シーザリオの配合相手である。「主張が強くないタイプ」の種牡馬と配合された場合、シーザリオの影響がとても強い子が生まれる(主張が強くないというのは多様な産駒を輩出するという意味と捉えても良い 母系の良さを引き出すキングマンボ系はその典型例と言える)。サートゥルナーリアやリオンディーズがそのタイプ。逆に主張する種牡馬であるシンボリクリスエスとの子であるエピファネイアは晩成と早熟の中間と言っても良さそうだ。

エピファネイア自身が早熟と晩成の中間(個人的には早熟よりの晩成タイプ)ならば産駒は環境や血統によって早熟にも晩成にも成りうるのではないだろうか。

産駒成績

実際の成績を見てみよう。古馬重賞成績は 4-7-7-70 複勝率20%。エピファネイア産駒は意外と古馬でも悪くない。ただある条件があるかないかで天と地ほどの差がある。それがノーザンファーム生産かどうか、そして母父がサンデー系かどうかだ。

「ノーザンファーム以外で生産され、母父非サンデー系」のエピファネイア産駒の古馬重賞成績は 2-3-3-23 複勝率25% 単勝回収率122% 複勝回収率86% いかがだろうか。これの代表にデアリングタクト、イズジョーノキセキ、ジャスティンカフェがいる。

デアリングタクトは繋靱帯炎明けにも関わらず宝塚で3着、中2週で挑んだJCでは直線で不利があったが追い込んで4着。
イズジョーノキセキは5歳であのソダシを撃破し重賞制覇。同年の有馬記念では13番人気で4着。
ジャスティンカフェはエプソムCで重賞初制覇したがその時5歳。その後マイルCSでは7番人気ながら3着。中々良い成績だと思う。
また母父はサンデー系だが、非ノーザン生産馬であるセルバーグは4歳で重賞制覇。2~3歳重賞では芽が出なかったが古馬になって成長した一例だ。

ただ逆にノーザンファームで生産された母父サンデー系のエピファネイア産駒は古馬重賞成績が1-1-0-24 複勝率7.7% 単勝回収率9% 複勝回収率13%。最悪だ。これが今の競馬ファンで言われている「エピファネイア産駒の古馬重賞はゴミ」の正体だ。これに該当するのがエフフォーリア、アリストテレス。

エフフォーリアに関してはかなり可哀想だと思う。エピファネイア産駒は追走力に乏しく、直線が長いコースが得意という特徴がある。しかし大敗した大阪杯や宝塚記念は小回りのハイペースと全く適正が合っていなかった。ドバイSC→天皇賞秋ならもっと成績は良かったと思うがそれはタラレバ。ただアリストテレスは古馬になってAJCC勝ち、京都大賞典2着こそあるがそれ以外はかなり成績が悪い。この2頭のイメージに引っ張られているのだと思う。

なぜノーザン生産、母父サンデーがこういう結果を生むのかは分からない。私の仮説は【ノーザン生産→育成は基本クラシックを見据えた調教をする。それが成長力ある血統と相性が悪い。また母父サンデー系との配合で生まれる「サンデーサイレンス4x3」が早熟に影響する。】

これが正しいのかは知らない。皆さんもコメントをお願いしたい。正直母父サンデー系に関しては関係ないと思い始めている(苦笑)。しかし育成に関しては強い相関性があると確信している。ただしノーザン育成が施されたとしても、成長が遅いと判断されクラシックを全く意識しないローテーションを組まれた場合なら、古馬でも十分活躍できると思う。そこはまだサンプルが少なすぎるので予測でしかないが。

結論

「エピファ産駒は早熟」と言い切るのは今のところ早すぎると思う。シーザリオの影響で早熟傾向は存在するが、シンボリクリスエスの影響もあり古馬で活躍は可能。ただ「ノーザンファーム生産、母父サンデー系」を満たす馬は早熟傾向が強化され、逆に「非ノーザン生産、母父非サンデー系」を満たす馬は晩成傾向が強まる。後者なら古馬だからといって割り引く必要は全くない。

(勿論これは2023年12月時点での結論であり、サンプルが多く集まれば結論が変わる可能性は大いにある。)

追記
2024年に入ってからの古馬重賞+5番人気以内の成績

中山金杯 ノーザンファーム生産 エピファニー 牡5
1番人気11着
日経新春杯 岡田スタッド生産 ブローザホーン 牡5
1番人気1着
AJCC ノーザンファーム生産 モリアーナ 牝4 
4番人気4着

今のところ傾向通り。
もしノーザン生産の古馬エピファネイア産駒を買うのであれば、追走力の必要ないレースを選びたい。スローペースだったり、外差し馬場だったり、脚を溜める騎乗が上手い騎手だったり、そういうケースならまだ買えるだろう。





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