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【安田記念2024】東京芝1600mの特徴と馬場傾向(トラックバイアス)

安田記念の好走傾向=馬場差無

安田記念(東京芝1600m) 過去5年好走馬直線進路

直線平均進路:9.9頭目÷大外平均:15.4頭目=馬群内直線位置:65%
4角平均位置:8.1番手÷出走平均数:16.0頭=馬群内道中位置:51%
好走馬上がり3F平均タイム=33.24秒

春の東京連続GⅠ開催最終回であり、春の古馬マイル王決定戦。一時は絶対的なNo.1マイラー不在のため、距離延長する短距離馬や距離短縮する中距離馬が侵略してくるような時代があったら、近年はその時のトップマイラーが揃うようになり戦いは熾烈となっている。
レースの傾向は内外だと比較的真ん中~外で内に偏ることは少ない。これは馬場的な要因ではなく、レースの性質上このような傾向が見られているのだろう。(詳細は後述する予定)
脚質にはバイアスはほとんどなく、先行馬も差し馬もバランスよく好走している。
上がりのタイムは33秒台前半で末脚のスピード、終盤での加速力も好走には重要になる。

★東京マイルはノンフレームコース

東京マイルGⅠはNHKマイルC、ヴィクトリアマイル、安田記念と年間3度行われ、開催時期は5~6月の近い。通常同じコースのレースであれば馬場条件なども含めてレース展開や血統の好走傾向など類似することが多い。しかし、この3レースに限っては三者三様である。

NHKマイルCが最も前傾度合いが強く前半からスピードで押していって中盤で一度落ち着くものの最後はスパートでスタミナ勝負。Vマイルは牝馬限定戦らしく脚を溜めて終盤で一気にスパートをかける上がり勝負になっているため後継度合いが最も強い。そして安田記念は前後半のラップが他のふたレースと比べてフラットに近いため、序盤中盤終盤と最初から最後までスピードを出し続けるバランスの取れた能力を求められるレースである。

同じコースで近い時期に行っているのにこれほどまでにレースの特徴が異なっていくのにはコースの形態が影響していると考える。

東京芝1600mは3角あたりがスタートとなり、ワンターンのコース。直線が長い東京のため、もちろん向正面も長く、このコースは向正面を目一杯走った上で最初のコーナーである3角を迎えることとなる。コーナーまでの距離が長いと、内外のポジション争いに余裕が生まれて激化しにくく、コース由来による枠順の有利不利が生まれにくい。
またコーナーが緩やかで癖が少なく直線は長く広く、坂を登坂するが急ではないため、最後まで各馬が力を出しやすいフェアな舞台になっている。

コースに癖がないということは、各馬の思惑が反映されやすいとも言える。これが1番の理由となってコースによるレースの特徴が生まれにくいノンフレームなコースであり、レース毎のメンバー構成やレースの立ち位置によって傾向が異なるというわけだ。

安田記念とマイルCSの違い

安田記念の対局にあるレースは同じ古馬マイルGⅠのマイルCSだろう。

安田記念マイルCSラップ比較(~2023)

マイルの頂上決戦らしく、前後半の比較では偏差が少なく引き締まったラップを刻んでいるものの、全体像で見ると明かな違いがわかる。安田記念とマイルCSでは後者の方が800m通過が明らかに緩い。前後半3Fではちょうど浮き出てこない箇所ではあるため数字上盲点になりがちだが、これはコース形態を考えると当然である。

京都/東京コースレイアウト比較

東京芝1600mは2角あたりからスタートとなり、550mほどある向正面を目一杯走ったのちに3~4コーナー→525.9mの直線となる。道中に小さなアップダウンがあるものの高低差は2m弱しかなく、しかもスタートからなだらかではありながらも下り坂になっているため前半~中盤はそこまで大きく緩むことはない。
しかしながら京都芝1600mは最も特徴的である3角の大きなアップダウンがある。スタートから初めのコーナーとなる3角までは700m以上の直線が続くものの、途中から上り坂が始まってしまうために600~800m通過では緩んでしまう。
よって、安田記念では中盤が緩みにくく平坦なラップを刻むレースになるのに対し、マイルCSでは多少息が入った上で3角終わりからの下り坂で勢いがついたまま直線平坦でスピードが緩まないというのがそれぞれコース由来にレースの特徴である。

安田記念の常識が崩れ始めている?

安田記念過去10年前後半 ラップバランス

中盤に緩みがなく引き締まったラップを刻む事が安田記念の特徴と先述しているものの、近年はその流れが少しずつ変化しているようにも感じる。
過去10年の平均ラップを前後半5年ずつに分けて比較をすると、前5年よりも後5年の方が若干後傾ラップになっている事がわかる。その差は約1秒程度で、マイル戦においてこの違いは大きいだろう。
この違いについて、少し考えてみた。

好走馬と逃げ馬の主な重賞好走

過去10年の好走馬3頭とペースを演出する逃げ馬のそれまでの主な重賞好走レースを一覧にしてみた。2018年までは逃げた馬や好走した馬の多くが芝1200~1400mのマイル以下で実績を残している事が多い。これはこの時代絶対的なマイラーが存在しなかったことでマイルよりも少し長い距離と少し短い距離にそれぞれ適性のある馬たちがマイル業界へ進出してきていた事が主な理由と考えられる。
これがメンバー構成の上で成り立っている事を物語るように、2016年は逃げ馬の作るラップと結果的に好走した馬たちが短い距離以外(1600m~1800m)に適した馬だったためレース質が異なったように感じる。
反対に2019年以降は2019~2020年が短距離ではないものの前半からハイペースで他馬を引っ張っていくアエロリットが逃げ馬だった事で緩さを感じない展開となったものの、2021年以降は1600m以上に適性のある馬たちがレースを演出、活躍したことでペースが一気に緩やかとなった。

このようにメンバー構成によって展開が異なることも、ノンフレームコースが故の特徴であり、どの馬が逃げてどの馬が活躍するかを想像することで好走馬がある程度パッケージされるようになるだろう。

一見リピーターコースに見えるも

ノンフレームコースと名付ける東京芝1600mは特徴がないことが最大の特徴であり、そのレースの性質がそのまま反映されていると感じる。

安田記念 リーピーター 一覧

過去10年でみても、好走馬は連続しているケースが多い事がよくわかる。特にその時にレースの性質の類似具合によって変化し、ロゴタイプが逃げた2016~2017年はロゴタイプ、アエロリットが逃げた2018年~2019年はアエロリット、アエロリットがいなくなったもののスプリンター系のダノンスマッシュが逃げてペースが速かった2019年~2020年はインディチャンプ、2021年~2023年はペースが緩んだためにシュネルマイスターとソングラインが連続好走している。
今年のメンバーでどの馬がレースの展開を演出するのか、それによって昨年同様のレースとなってリピーターが好走するのか、それとも全く異なった馬たちが好走するのかが変わるだろう。

当週の馬場傾向

<トラックバイアス>
2019年 土曜:5.1/日曜:6.0
2020年 土曜:5.1/日曜:7.3
2021年 土曜:9.8/日曜:9.9
2022年 土曜:10.4/日曜:7.0
2023年 土曜:7.9/日曜:6.2

※数値はその日の3着内馬がL1Fで内ラチから何頭分離れた場所を走ったかの平均値

Cコース2週目でコース替わりからあまり日が経っていないため傾向自体はそれほど外に寄ることはない。しかしながら開催が6月になるため年によっては雨の影響を受けてることもあり、数値が高くなることもある。


注目馬

★逃げ馬は「ウインカーネリアン」

予想をする上でポイントは誰が逃げ馬で、どのようなペースを演出するかだろう。今回、過去の脚質やテンのスピードなどから逃げ候補筆頭はウインカーネリアン。前走芝1200mからの400mの距離延長でスプリント感覚が残ったままの出走になるだろうし、近2年の東京新聞杯と昨年毎日王冠ではハナを切って4角までレースを引っ張っている。
この馬の実績はマイル近辺にあって、スプリンタータイプではないことや、他に芝1200m重賞で好走した馬が参戦していないことから近年の安田記念に近いペースになる事を想定し、印を打ちたい。

◎セリフォス
比較的緩めで1600m~1800mぐらいに適性のありそうな馬に向きであろう今回の流れ、さらに昨年そのような展開で実際にこの舞台で好走している事からのリピーター期待も含めてこの馬が馬券圏内の確率が最も高いと言えるだろう。
前走は鞍上も言葉を濁すほどに太め残りだったようで、ここで走るための準備をしてきているだろう。東京マイルGⅠの勲章を欲しい立場が故にここは大勝負となるだろう。

ロマンチックウォリアー
近走はコーナー4つのシャティン芝2000mで連続好走していて、息の入る中距離レースでの実績◎。ただこの馬自体、スチュワーズC(G1)でゴールデンシックスティに敗戦するまでは芝1600mにもチャレンジしていただけに、マイル的なスピードも持ち合わせているのではないかと考える。
脚を溜めて切れる脚で好走するような日本的なレースが多い最近の安田記念においては適性の高い馬に感じる。

★最終予想はX(旧Twitter)で公開予定です。

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