朝日杯FS 出走馬診断

はじめに

先週の阪神JFと同舞台で行われる、朝日杯FSは2歳マイル王を決めるレースで、今年はジオグリフ・セリフォス・ダノンスコーピオンの3強ムードである。しかし1400や1800路線から出走してくるアルナシーム・オタルエバーなども侮れない存在。どの馬が今の阪神の馬場に適性があるのかなど、いくつかのポイントごとに診断していきたい。

✔︎ 1 右回りの経験

右回りを経験している馬は右回り2歳G 1において、重要なポイントである。2歳という若駒はとにかく経験がものを言う。初めての経験は、人間に例えてもそうだが戸惑うのが当たり前。そんな中いきなり大舞台で初めての右回りとなれば、対応はできても手前を変えるのが遅れたりなど、少しロスが生まれる可能性がある。
データではあるが、過去10年左回りしか経験していない馬で馬券になったのは3頭のみ。あのトップマイラーのグランアレグリアですら3着に敗れている。先週の阪神JFも左回りしか経験していない、ナミュール・ステルナティーア・ベルクレスタの有力馬は敗退している。

今年の出走確定馬で左回りしか経験していない馬は、トウシンマカオのみ。右回りの経験という点では有力馬は問題ない。

✔︎2 追走力

朝日杯FSは1200.1400から出走する馬も多数で、過去のラップを見てもハイペースもしくはミドルペースくらいのラップになる傾向がある。ということは、速い流れを経験している馬は有利であり、逆に極端なスローペースしか経験していない馬は不利である。先週は2.3.5着馬が1400からの出走で結果を残した。1.4着もそれなりに速いペースを経験しており、速いペースでもしっかり追走できた経験が生きたと考える。スローペースしか経験していないステルナティーアは、道中不利もあったが7着と敗れている。

今年の出走確定馬でスローペースしか経験していない馬は、ダノンスコーピオン・ドウデュースである。

✔︎ラストの持続力

阪神1600は瞬発力も求められるが、最後まで脚を使える持続力も求められる舞台で、総合力が問われる。特に今の阪神はかなり馬場コンディションは悪く内は死んでいるので、外に出してタフな上がりのかかる馬場で最後まで末脚を持続させられる馬が有利である。ゆえに、瞬発力戦が得意な馬にとって今回はきつい展開となることが予想される。タフな中山競馬場や開催が進んだ馬場で最後まで末脚を持続させられた経験のある馬を今回は狙うべきである。

今年の出走確定馬で持続力戦を経験している馬は、アルナシーム・ジオグリフ・プルパレイ・セリフォスである。

以上の点を踏まえて、出走馬を診断していく。

セリフォス

この馬は新馬戦が終わってから2歳の中ではトップマイラーになるなと確信した。それくらい評価は高い。事実3戦3勝で数々の素質馬を破ってきた。マイルでは敵なしの状態である。
新馬戦は最初の200mのペースが遅かったものの、そこからは11秒台のラップが続く持続力戦。2着馬はアルテミスS2着馬のベルクレスタでレベルの高かった一戦であった。
2戦目の新潟2歳Sでは、持続力と瞬発力の総合力が問われたレースで極めてレベルが高かったといえる。外差し有利の馬場でインから突き抜けたセリフォスの力はここでは1枚も2枚も違った。新潟2歳S組はその後勝ち上がり率が高く、また重賞でも結果を残している。
3戦目のデイリー杯2歳Sは藤岡佑介騎手に乗り替わりで、直線大外をぶん回しクビ差の1着。正直上手く乗ったとは言えない騎乗であった。しかし、今回と同舞台でさらに馬場の傷みが進んだ馬場でも瞬発力を発揮できたのは大きな収穫であった。
どんなレースでも対応できるのがこの馬の強みであり、正直不安な点は見当たらない。一週前の追い切りの動きもダイナミックで申し分ない。今回はC・デムーロに乗り替わりで期待はさらに高い。

ジオグリフ

正直ここに出てきたのは驚いた。コマンドラインとの使い分けであるとは思うが、1600の速い流れに対応できるのかまず考える必要がある。
新馬戦はかなり強い内容で、瞬発力とスピードの持続力が問われたレースであった。ラスト3Fは11.2-11.0-11.3で余力のある勝ち方。東スポ杯2着馬のアサヒに騎乗していた石橋騎手は直線向いた時は正直勝ったと思ったはず、それをあっさり交わすのだからかなり強い。
札幌2歳Sは、良馬場とはいえ開催最終週であり、上がりのかかるタフな馬場であった。坦々と12秒台前半のラップが続く持続力戦になり、地力の問われたレースになった。スタートは少し遅れて後方からの競馬で、折り合い重視。残り800mあたりから捲っていき、直線ではほぼ先頭に立ちノーステッキで4馬身差の圧勝。タイムは平凡だが、この馬も前走とは異なるレース質での勝利であり収穫は大きい。課題はあるが、能力は疑う余地なし。マイルは少々短い気もするが、対応は可能。

ダノンスコーピオン

川田騎手から松山騎手に乗り替わりはまずマイナスである。松山騎手はそつなくしっかり乗ってくれるが、力強く追える騎手ではないためダノンスコーピオンには合わない。この馬は長くいい脚を使い勝負強いが、追走力に問題がありズブさが目立つ。そのため川田騎手や岩田康誠騎手の様な騎乗スタイルがピッタリなのである。
新馬戦は、1000m通過64秒でかなりスローペース。直線だけの勝負で、瞬発力が問われた。普通なら前で34.4の上がりを出したルージュラテールが勝つレース。それを34.0の上がりで差せたの評価できる。 
2戦目の萩Sもスローペースで、瞬発力が問われたレース。距離を伸ばしたことで少し行きたがる面を見せていた。このレース2着馬のキラーアビリティはかなり強い馬で、小倉2000mの2歳レコードを1秒7も更新した大物である。そのキラーアビリティに1800で勝てた事は素直に評価できる。陣営的には萩S勝って、ホープフルSという選択肢もあったはずだが、折り合いを少し欠く面などを見せたため、朝日杯にしたのだろう。
阪神競馬場は2戦2勝で舞台設定は問題ないが、スローペースしか経験していない点やズブさから速いペースに対応できるかという点など不安はある。総合力が問われる朝日杯FSでどれだけやれるか試金石だ。

プルパレイ

大跳びの馬で大箱コースが合う。母方はバリバリのダート血統で、キレイな良馬場の時計勝負向きの馬である。
前走は、逃げて4着と敗れているがこれは悲観する内容ではなく、よくタイム差無しの4着に残したというかなり評価できる内容である。道中はそれなれにゆったりとしたペースであったが、ラスト3F11.4-10.5-11.9と先行馬にとってかなりきつい展開となった。ラスト2Fは先週の阪神JFとかなり似ており、先行馬がほぼ全滅であったように、普通なら大敗してもおかしくない内容である。上がりも3位の脚を使っており、10.5の加速が無ければ普通に2着は確保していた。
前走も強いが、やはりアスター賞はもっと強い。タイムは平凡だが、中山の急坂を逃げて加速ラップで締めており強い馬の芸当だ。先週のサークルオブライフもそうだったが、中山競馬場を2歳で加速ラップ踏めるのは強い馬の証拠である。前走の負けで人気落ちするなら狙いたい一頭。ただ、今の阪神の馬場は合わない点と点の速い逃げ馬がいるため自分の競馬ができないと言う点は不安である。先週のウォーターナビレラの様な競馬ができれば面白い。

アルナシーム

新馬戦の時も、スタート後頭を上げたり道中も掛かっていたが、前走はさらにコントロールが効かず暴走していた。ただあれだけ道中脚を使っていたのにも関わらず、この馬自身ラスト4F11.6-11.0-11.9-12.5の後半47.0であり、案外減速幅が小さい点は評価したい。血統もかなり良血で、叔父にはシャフリヤール、アルアインがいて素質は秘めているに違いない。
今回は調整過程で様々なアプローチを試みており、ここに向けてやれる事はやっている印象。速いペースの方が折り合いやすいので、今回の朝日杯は舞台設定としたは○。しかし極端に外枠に入ってしまうと前に馬を置けないので、また暴走する可能性は高い。当日の様子と、枠順はしっかり確認する必要がある。

ドウデュース

2戦ともスローペースからの瞬発力戦で、ほぼ馬なりでの勝利。新馬戦に関しては馬場が悪い中加速ラップで勝利している。とにかく乗りやすいと武豊騎手も言っており期待が高い馬である。ホープフルSという選択肢もありながら、マイルの朝日杯FSを使ってきた。現状マイルの方がいいと武豊騎手も話しており、マイルへの不安はない。また2戦とも勝てると思って乗っていた様で、この馬のポテンシャルはかなりのモノであると評価している。一週前追い切りでは、78.4-64.3-50.7-36.5-23.0-11.4 馬也で走っており、素晴らしいの一言。体制は整ったと言える。マイル特有の速い流れになった時の対応は不安ではあるが、今の馬場はマッチしており操縦性も高く、好位で競馬できる点は今回プラスに働く。まだまだ奥深さを感じるので、期待の一頭として挙げたい。

オタルエバー

ハイレベルな新潟2歳S3着馬ではあるが、現状はやはり1400くらいがベストである。一瞬の瞬発力が武器であり、長くいい脚を使えるタイプではないので、今回の朝日杯で好走するのは厳しいと考えている。今回も逃げる戦法で行くとは思うが、1200路線から点の速い逃げ馬がいるため、そことの兼ね合いがポイントだ。また今の馬場で展開的にも前はきつい。少なくともセリフォスより先着する事はまず考えられない。

カジュフェイス

当日全然人気しないと思うが、この馬は今回かなり面白いと思っている。中京1400で行われた未勝利戦では、12.4-10.8-10.9-11.5-11.6-11.6-12.4と前半ハイラップで後半もそれほど落ちることなく馬なりで4馬身差の圧勝。時計が出る馬場だったとはいえ、タイムもそこそこ優秀で素直に評価できる。2戦目のもみじSでもまた逃げの手で、3馬身差以上の完勝。マイルでも垂れないスタミナを持ち合わせており、新馬戦で不良を好走しているので今の荒れ馬場も難なくクリアできそう。血統的にもHalo4×3のクロスで、芝で必要なパワーを兼ね揃えており、朝日杯FSを勝っているロゴタイプもまたHaloの4×3であったようにここを好走する下地は整っている。前はきつい馬場でどこまでやれるか楽しみな一頭。

最終的な印は枠順発表後にまたnoteで書きたいと思います。先週の◎サークルオブライフの様にしっかりとした見解をお届けしたいと思うので、ぜひ楽しみにしていて下さい。



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