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MASKDOLL

MASKDOLLという作品がある。このnoteのアイコンも、MASKDOLLだ。

2018年の個展で「dream cell」という、うさぎに段ボール製の覆面マスクを被せた作品を発表した。
そこからの流れを経て、2019年FANTANIMA!でMASKDOLLを発表。SNSでも会場でも、思いもよらぬ反響があり驚いた。
普段人形になど全く興味がないという方からもうれしい評価を沢山いただいた。


私は、自分の造形力に対してコンプレックスを持っている。
人形は立体物なので、制作の際には3D脳とでも言うのか、頭で思い描いているものや2D状態のイメージを3Dに変換させなくてはいけない。
分解や構築を頭で理解し自分の描いているものに落とし込んで形にしていく能力。それに伴う手先の技術。
ここでいう造形力とはそういったものだ。
課題にぶつかるたびに、自分の能力・技術の低さを痛感する。
数をこなせ、手を動かせ、鍛錬せぇ、それを言われたらこちらから言い返せる言葉は何もない。
それでも新しいタイプの人形を制作するときは次に進みたい。楽しんで作る余裕は、なかなかない。


見られたくない知られたくない悟られたくない、そういう心情が働くとき人は顔を隠そうとする。
心を読まれることを回避するための、笑顔、泣き顔。

私は自分が持っているコンプレックスを、人形にマスクを被せるという手段で隠した。

それは、帽子を深くかぶるときと同じような安心感があった。
一体完成し、二体完成し、マスクを被った素顔の見えない子たちを何日もかけて並べてゆく。
MASKDOLLの魅力は、数が増え集団になるほどに発揮された。
一人でぽつんと佇んでいるような子ばかりを目指していただけに少し不思議な感覚だった。

FANTANIMA!は予定通り開催され、MASKDOLLは東京でも大阪でも受け入れてもらえた。
制作したすべての子たちはすぐにお迎えが決まった。

その後もMASKDOLLを作ってほしいという有難い声をいくつもいただいてきた。
あの流れに乗れば、MASKDOLLを介してもう少しだけ自分の名前を売ることができたのかもしれなかったが、慎重になった。

MASKDOLLを求められ続けるということは、自分にとっては脅威だった。

自分のコンプレックスを隠すために被せたマスクなのだから。



これは、2019年秋のNo one knows、2020年のFANTANIMA!で発表するball joint dollへと繋がっていく。

MASKDOLLは、求められるがまま続けられるものではなかったが何事もなく終わらせるわけにもいかない。

2年ぶりの展示を果たすため、一体、二体と、今作り続けているところ。

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