誰も知らない
MASKDOLLからの流れで何を作る?
ここで何か掴まないと、私の方がMASKDOLLに飲み込まれてしまう。
何が作りたいのか?わからない。
この繰り返しだった。
何を作ればいいのかわからないけれど何か作らなくてはいけない。
私にとって、ものづくりは手段だ。
何のための?
私の作品を通して私自身は何を感じ、そして何を届けたいのか?
辿り着きたい場所はどこだろう。
「君ならどうした?」
懐かしい声だ。
ただ立っていることに必死だった、あの横断歩道。あの駅のホーム。
誇れる技術も語れる歴史も立派な功績も何もない。私には何もない。汚ればっか目につくな。
ただ立っていることに必死だった、あの絵の前。あの人形の前。
そこに在る姿や問いの質、纏っている気配、内包している強さ、まなざし。
「大丈夫、大丈夫」と小さな字で書いたんだ。
何もない?じゃあ、何かあるってなんなんだい?
今だって何もないよ。
それでも、あの時ちゃんと立ってただろう。
ゆるやかにぼんやりと、やりどころのない気持ちを浮遊させながら掻き混ぜる。
誰も知らない。
だけど私だけが知っている。
それは、小さな息つぎのような静かで密やかなよろこび。
あなたにも知ってほしい。
隠さなくていいから、だからもうマスクは置いていこう。
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