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私が地理を選んだ理由。

 今まで専攻を聞かれるたびに、そもそも地理学って何やるの?って聞かれることがよくありました。

 多くの大学受験生にとって重要な教科か?と問われれば、必ずしもYESではないことから、多くの人にとっては馴染みのない学問ではないかと思います。

説明したらいいのかうまく言語化できていなかったのですが自分なりの理由を再考してみました。

もちろん、何十年と研究されて、いくつもの研究業績をもつ先生方からみれば地理学を少しかじったことしかない素人なわけですが、進学先としてあまりメジャーではない教科をあえて選択した立場として,地理についてよく知らないその他大勢に向けて,現在の自分だったらこう説明するという位置づけでここに記録しておきます。


まず、「地理をやっている」と言ってよくある反応は

ボーリング調査してるの?」というものです。

地質学者のイラスト

地理学は地面を構成する鉱物に関心をおく地質学とはちょっと違います。

たしかに地質についての理解は必要ないわけではないですが、研究成果を理解するときや、論の展開の根拠として必要な場合に地質学者の成果を引用させていただくことが大半で自ら研究の中心にすることは多くないと思います。 

地理学とひとことで言っても自然地理学人文地理学に大きく分けられると思います。前者は地球上に人間が存在していなくても成立する学問だと理解しています。後者に関しては、人間の存在が不可欠です。この点が決定的な違いかと思います。

もちろん、現在地球上で起こっていることは多様で複雑に関係しているので、地球温暖化ひとつとっても両者はお互いに影響を及ぼしあっていて、自然科学といえど人間の活動を無視できないし、人間の活動も自然環境に依拠していることから両者は不可分なのかもしれませんが、便宜上以上のような分け方で大きくは間違ってないと思います。

多くの方が想定される「地質学的な地理学」は自然地理学のなかの地形学という分野にのみイメージ通りといってもいいかもしれませんが、そのほかの分野では必ずしも「地質学的」ではありません。

地形学とは現在私たちが経っている台地がどのようにできたか?について地面の下にある様々な履歴をもとにストーリーを再現することです。小学生のころから山登りなどが好きだったので興味はある分野でした。

ただ、私のより関心がある事は地理のなかでもそのほかの分野にあることが学ぶ中で分かってきました。

それでは、私が関心を持つ分野は何かというと、人の存在が必要な人文系の地理でした。ただし、履歴をもとにストーリーをつくるという点は自然地理学と共通しています。参考にする情報が人が作ったものかどうかの違いです。

その時々における人々が何を生活の糧として生きてきたのか、その片鱗を垣間見ることができることにとても興味を持っていることがわかりました。

江戸時代から明治維新後の近代化を経て、戦争の時代に突入し、敗戦し、その後復興して拡大していく激動の20世紀には土地の記録がものすごい勢いで書き換えられていきました。そうした時代の変化の中で生きていくために様々なひとが迷い、翻弄されたり、時代は変わっても個人としては変わらないことを突き詰めてきた人など、生きててきた人の数だけあることに思いをはせることが好きでした。それはあまりにも多様で、同じ時代でも地域が違えば異なるし、同じ地域でも時代が異なれば多様性があることに魅力を感じていました。

レイヤ

今見ることのできる景観は,これまで積み重ねであり、途中経過にすぎません。これまでも変化してきたし、これからも変化していくもので完成することはありません。同じ地域でも構成する人は変化していきます。

まちづくりに関しては近年さまざまな立場の人から叫ばれるようになりました,2014年に発表された「増田レポート」を機に地方創生の機運が高まります。


名指しで消滅可能性都市と指摘をされた地方自治体を中心として各地で人口減少を食い止めるために様々な試みを行うようになりました。

この動きは、地理に関心がある私としては非常におもしろいなと思いながら見ています。

今までその地域に暮らす人がどのような生業を行ってきたのか、に関心があり、なぜ東京に人は集まるのか?みたいなことを専門家だけでいろいろ考えていたのが、「専門家」ではない人たちが、東京に出ていかないもしくは地方に戻ってくることを促すために、「なぜ東京に集まるのか」とか、「地方だからこその良さとは」のような仮説をたくさんの人がそれぞれの言葉を用いて言語化・可視化する作業を始めたからです。

さてここで、私が考える魅力ある地域とは何か?についてちょっとコメントさせていただければと思います。ありきたりな答えかもしれませんが、自然に魅力がある地域です。

例えば、実家の家業でもある林業をあげると、日本は多くの地域で森林資源に恵まれているにもかかわらず、それが十分に活用されないでいる地域が多いのが現状です。そんななか森林資源を活用してさまざまな取り組みをしている地域を見てみるとそこには、自分事として考え行動する人がいます。

森林という資源があるという前提条件は同じであるのに対し、それを活用して仕事や生きがいを作り出すことのできる地域とそうでない地域があるのは、決定的に人の違いだと思いいたるようになりました。

これからの私たちが生きていく世界はわからないことがたくさんあります。地球規模で深刻な問題になっている新型コロナウイルスや気候変動が迫るなか、何が正解かどうかはわかりません、ただ、地理をやって強く感じたことは、

それは「過去を生きた人々も同じ」だということです。常に大きな困難に立ち向かい克服してきた歴史があります。そこには当時できることを精一杯やってきた先人たちの積み重ねがあり、未来は今の積み重ねでしか作れません。今の地域が魅力がないとすれば、少なくとも今までのやり方ではよくないということはわかります。そこで今までとは違うことをやってみる必要があるかもしれません。

最後に、50年、100年先の世界で地理に興味を持った少年がいたとしたて、

2020年を生きた人々がもがいて動き回った痕跡をみて、「ちょっとは頑張ってたじゃん」くらいに思ってもらえるように生きることができたらいいなと思う今日この頃です。



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