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僕と契約して振り穴おじさんになってよ(1)――右舟囲いを語る(2)

のっけからネタで始まりました。
今回は前回に引き続き右舟囲いからの駒組み、第2回として右穴熊(振り飛車穴熊)について書いていきます。

▲2八玉という無難な進行

前回、この右舟囲いの形は「ギリギリまでこちらの駒組みの選択を遅らせる」ことに焦点があると書きましたが、今回はその一番最後の分岐について書いていきましょう。

※この右舟囲いは相振りでも金無双・美濃・矢倉の選択を保留できる形ではあるのですが、相振りについてはまたどこかで改めて語りたいので、とりあえず今回は対抗形になった場合のことのみについて書きます。

図1: ▲2八玉とする局面の例

さて、まず右舟囲いから▲2八玉と入る形についてです。
詳しくは次回以降に譲りますが、自分の左側がある程度出来上がっている段階で、「まだ居飛車側が態度を明らかにしていない」場合は▲2八玉と入る進行になります。

図2: 居飛車側が左美濃を選択した例
図3: 居飛車側が天守閣美濃を明示した例

また、このように居飛車側が左美濃系の駒組みを選択した場合も、同じく▲2八玉と入っていく形になるでしょう。

美濃と右穴熊

そもそも、美濃囲いというのは極めて優秀な囲いです。その特徴はとにかく手数の少なさと硬さを両立している点です。
一方、私の振り飛車というのは(振る筋は何種類かあるとはいえ)基本的には角道を止める形が前提であり、畢竟「持久戦しましょうよ」という意思表示でもあります。いくら美濃囲いが早く組める囲いだとしても、組み終わったあとで自分から仕掛ける意思が弱い以上、そこのメリットは薄れてしまっているわけですね。
そもそもこの右舟囲いというのは冒頭にも述べた通り「相手の動きを見て考えたい」という発想なので、「手数をかけられる状況であればとにかく硬い囲いを作る」というのが基本方針の一つとも言えます。そのため、こうした状況であれば美濃に組んで自分か仕掛けるよりも、手数のかかる囲いを組んで相手の出方を待つことが多いです。

対ノーマル左美濃

さて、それでは具体的に相手の動きに対しての選択を見ていきましょう。
まずわかりやすい図2の左美濃について、ここでこちらが▲2八玉と動いた場合、次の考えられる手は大きく2通りです。

図2-1: ▲2八玉と入ったあとの局面
  1. △5四歩・△6四歩・△7四歩

  2. △2四歩(・△4四歩)

  3. △1四歩

このうち3.の△1四歩については当然の▲1六歩の返しで再度上述の1.と2.の選択待ちになるので考えなくて良いとして、残る1.と2.についてそれぞれ考えます。

まず2.の△2四歩、あるいは△4四歩という「あまり見られない」側の方から検討しましょう。この手はその後△2三銀と上がる、左美濃から銀冠への伸展を意図しています。つまり「持久戦に乗りますよ」という居飛車側のの意思表示なのですが、昨今居飛車で対振り持久戦を志向する場合には銀冠よりも天守閣美濃や居飛車穴熊に組む方がよく見られる形だからです。とはいえ、特にこちらが角道を止めて駒組みをする場合には、たまに見る形ではあるので先に触れておきます。
この展開では自然に▲3六銀から美濃とし、相手が銀冠に組み替える間に高美濃へ組み替える穏当な手順がまず考慮に上がるでしょう。また△2三銀と上がったタイミングで▲9五歩や▲6五歩から仕掛ける手も考えられます。どちらにせよ評価値的にはどうやら居飛車側若干有利ではありますが、特に不満のない展開と言えるかと思います。

図4: 居飛車側が銀冠へ移行する局面。振り飛車側には仕掛けの選択肢がある

一方、相手が銀冠に組んでいる間を利用して、こちらも(▲3六銀ではなく)▲1八香から右穴熊に組む方向もあります。

図5: 居飛車銀冠VS振り飛車が確定した例

こちらの形でも同じく評価値的には居飛車側に若干の有利があるようですが、とはいえ居飛車側にもそこまで有効な攻め手があるわけではないので、悪くはないでしょう。

一方1.の△5四歩・△6四歩・△7四歩のいずれかのケースについては、基本的に右銀や右桂を利用した攻めの手です。また、図2-1からの分岐以外にも、先にこれら右辺の歩を上がったあとの形から△3二銀と美濃に組まれた場合でも、この分岐に合流します。

図6: 左辺の歩が突かれた左美濃

こうした場合には、こちら側は▲3八銀と上がって美濃囲いを完成させ、一旦開戦に備える形とするのが基本と考えていました。将来的には高美濃・銀冠への移行も視野には入れておきますが、既に相手側が「攻めるぞ」という構えを見せている状況で呑気に穴熊に潜っていると、相手にその間左辺をどんどん作られてことを懸念していたわけですね。

図6-1: 穴熊を組む間に右辺を作られた例

。実はこれだけ居飛車側に右辺を組み上げられたとしても、居飛車側にはこの状況を有効に崩す手段が実はなく、振り飛車穴熊が間に合うことが最近わかりました。ソフトの評価値ではまだ互角、しかも居飛車側の読み筋は△2四歩から銀冠へ組み替えるという形です。
実際にこの局面で銀冠へ移行するという手順を踏む方は多くなく、居飛車側から仕掛ける事になりがちなのですが、例えばうっかり△8六歩と踏み込んでしまうような形は居飛車側歩損ですし、△6五歩に対しては▲5六歩か▲7五歩あるいは▲6八飛で十分受けられますので、結局振り穴でよしという結論になります。

ということで、ノーマル左美濃への対抗としては、相手が居飛車銀冠を選択した場合は若干の不利という評価になるものの、基本的には振り飛車穴熊に組んで問題がないという結論に達したところで(1)を終わります。
次回は図3の対天守閣美濃を検討します。

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