麻雀店でチヤホヤされるために先輩巨乳女を丸裸にして撃破した話⑦
【南一局 1本場】
東 上家 40,900
南 わたし 31,700
西 下家 18,600
北 対面 8,800
ドラ:發
【上家:トップ目 ドラ發ポン】
【上家 捨牌】
【わたし:2着目 手配】
麻雀大会決勝卓。
なんとか2着目で迎えた南一局に、トップ目親のドラポンです。
和了されてしまうとダメ押しの決定打。
親が残っているとはいえ、わたしの優勝は絶望的になるといっていいでしょう。
ラス目の対面さんは、ドラを鳴かせた後は絞り気味。
下家さんも、親に通りそうな牌ばかりしか切っておらず頼りになりません。
つまり――――勝負所というやつです。
「チー!」
わたしは嵌6筒を仕掛けました。
普段ならグズグズの手配で、こんな鳴きはいたしません。
トップも諦めて守備的に打ちます。
しかし今日はワンデイの大会です。
危険を顧みず、自らトップを取りにいこうではありませんか。
「ポン」
歯を食いしばって、ふたつ鳴いても、この形。
正直、怖くて仕方がありません。
お父さんなら「いま麻雀の神様と戦ってるんだ」なんて言って笑うでしょうか。
わたしにはよくわかりません。
麻雀なんて、所詮道具のひとつにすぎませんから。
配牌は整っていた方がいいに決まってるし、
試練は少ないに越したことはありません。
お父さんを味方につけるためのツールでしかない麻雀。
男と円滑にコミュニケーションをとるためでしかない麻雀。
なのになんでわたしは、この手を和了ろうと必死なのでしょう。
上家から打たれた6萬。
わたしが発声のために吸い込んむ息に重なるように、サイドテーブルのアイフォンが通知のバイブ音を鳴らしました。
ホーム画面に表示されたメッセージを横目で確認します。
あのアカウントから。
『動かなければ願いが叶う』
――――は?
意味はすぐに理解できました。
いま出た牌を鳴かずにスルーしろと言っているのです。
いやいや、まったく間一髪。
危うくメッセージに気づかず発声してしまうところでした!
わたしがこのアカウントに送った願いは全部で4つ。
そのうち3つが叶いましたから、残りはあとひとつ。
『男にチヤホヤされたい』です。
わたしの悲願とも言えます。
そのために生きていると言っても過言ではありません。
今か今かと待ち望んでいたこの瞬間。
この願いさえ叶うのならば、もう無理に麻雀を続ける必要もなくなります。
ピンクちゃんみたいに、男に囲われキャッキャウフフと過ごすのです。
ドクンドクンと胸の高鳴りが抑えきれません。
…………だけど。
「チー」
この3フーロで大会会場が若干盛り上がったように感じました。
「親のドラポンを蹴れれば、勝負はまだわからないぞ!」という興奮した声が耳に入ります
なにをしているんですかね、わたしは。
配牌から出来上がっていた16,000点は捨てられても、
なぜかこの1,000点のテンパイを捨てることができませんでした。
苦境の最中、グズグズの手から必死に手繰り寄せたテンパイが
なんだか自分と重なってしまったから?
いいえ。違います。
本当は嫌だったのです。
自分で気づかなかっただけで、
ずっとずっと嫌だったのです。
わたしにとって麻雀は、男にチヤホヤされるための道具です。
そして――――お父さんとの思い出でもあります。
お父さんに喜んでもらうために麻雀を覚えました。勉強しました。一生懸命でした。
だから嫌に決まってます。
わけのわからないアカウントの指示で、
自分の麻雀を曲げられるのが。
だって――――
「ツモ」
――――これは自分の頑張ってきた証なんだから。
「300-500は、400-600」
わたしは手に来た7索をそっと卓に置き、4センチの手を倒しました。
わたしはもしかしたら、麻雀が好きなのかもしれません。
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