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麻雀店でチヤホヤされるために先輩巨乳女を丸裸にして撃破した話④

 前回のあらすじです。
 寝て起きたら巨乳になっていました。
 
 なにをふざけたこと言ってるんだと思われるかもしれませんが、
 実際にそうなったのだから仕方がありません。
 
 あのピンクちゃんにも引けをとらない、
 大きな双丘が、わたしの胸部に現れたのです。
 
 明らかに今までのものとサイズが違いました。
 感覚としては4~5段階くらい大きくなったように感じました。
 
 こんな摩訶不思議な現象の最中ながら、人間とは恐ろしいもので、
 ひとまず先に行ったのはアイフォンのチェックでした。
 これが現代人です。
 
 1通のメッセージ。
 『あなたの願いをひとつ成就いたしました』
 あのフィッシングメッセのアカウントからです。
 
 信じられないかもしれませんが。
 私自身、いまとなっても信じられませんが。
 あの不気味なメッセージに書かれていたことは本当だったのです。
 昨日、倍満を見逃したわたしの望みを叶えてくれたのです。
 
 麻雀の流れやオカルト論は信じないわたしですが、
 このアカウントのことは信じぜざるを得ませんでした。
 だって目の前に、おっぱいがあるのですから。
 
 驚天動地。奇々怪々です。
 先日のアルコールが残った頭ですから、かなり意識は不鮮明でした。
 ですが信じて下さい、全てのブラのサイズが合わないのです!!
 
 仕方がありませんので、その日は厚手のパーカーを羽織って出金しました。気温が徐々に上がり始めていた時期だったので、店に着くころには汗です。
 我慢のかいあってか、見せてはいけないところが主張することは防げていたと思います、しかし、おっぱい自体の大きさを隠すことは不可能です。
 
 その日出勤した男性スタッフは全員、出会いがしらわたしの胸部にに目を向け、驚きの表情を見せます。
 ですが、仕方のないことでしょう。
 先日までの更地だったところに、一夜でドーム球場が建設されたのですから。
 
 しかしそのことについて、スタッフから何か言われたりすることはありませんでした。
 いや、まあ何とコメントしたものか分かったもんじゃないですけどね。
 男性からしたら、セクハラと騒がれるリスクもありますし、この不思議な現象に触れるのはタブーのような空気となっていました。
 
 ただひとりを除いては。
「おはようございま~す。……うわっ、え!!?? それ、どうしたの??」
 
 ピンクちゃんです。
 彼女だけは脳みそとお口が直列で繋がっているのです。
 
 そのときの、わたしは顔がはちゃめちゃに熱くなって、なんとか振り絞るように出た言葉が、
 「な、なんでもないです……」
の一言。

 さすがのピンクちゃんも「……そっか」とだけ言って、それ以上の言及はありませんでした。

 恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい。
 憧れの巨乳になったというのに、向けられるのは奇異の目だけです。
 豊胸!? パット増量!? そんな周囲の声が聞こえてきます。

 あの奇妙なアカウントは、わたしの望みを叶えてくれたのかもしれませんが、今の状況はわたしの望むところではありません。
 そもそも巨乳とは、問答無用で周囲の男性を欲情させられるもののはずなのに、わたしが持ってもその効力は発揮されないことが、今日はっきりとわかりました。

 ダボダボのダサいパーカーに、色気のない化粧ですもの。
 女性としての魅力はプラマイマイナスです。わかっています。

 こんなときでも、仕事はしなくてはなりません。
 お客様がお手洗いに行っている間の代走を頼まれました。

 座った瞬間、上家の親からのリーチ。

【東一局 5巡目 東家捨て牌】

東家捨て牌

 最悪です。
 渡された手にツモ8p。安全牌は皆無でした。

切り番   ツモ8p 

 いや悪くない手です。リーチさえなければ5m、7mと落としていくでしょう。

 しかし今は、お客様の代走。放銃は厳禁です。
 完全にベタオリするなら9sの対子落としでしょうか。
 無筋とはいえ2巡の安全が買えます。
 
 そんな思考の最中、アイフォンの通知が鳴りました。
 デジャブです。もしやと思いロック画面に目を向けると、

『最もダサい一打で望みが叶う』

例のアカウントからでした。

「…………」

 一夜にして、わたしのおっぱいをこんなにしたアカウント。
 不思議な力があるのは明らかです。

 わたしの願いって、巨乳以外になにか願いましたっけ?
 ていうかダサい一打ってなに? ダサいダサくないなんて主観でしょ?

「ねーちゃん、携帯なんか見てないで早く切れよ」

「あ……、ご、ごめんなさい」

 お客様にせかされて、わたしが選択したのは打8pでした。

「お、それだよ! 5,200点」

 その打牌にロンの声が掛かります。
 攻めてるのかオリてるのかわからない『オリ打ち』。
 わたしの打牌はリーチに一発で放銃となりました。

 お手洗いから戻られたお客様に、嫌味の一言をいただき、席を渡します。
 いまの打牌がダサイかどうかはわからないけど、小さな声で「申し訳ありません」とだけ呟くわたしは、ダサかったように思います。
 
 翌日にわたしの家にふたつの荷物が届きました。
 どちらも大きな段ボール箱で、送り主は不明。

 中には流行り物らしき洋服と大量のコスメが入っていました。

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