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「いっけなーい!遅刻遅刻選手権」にエントリーしました☆第7話

◯ 通学路・合陣高校の校門の近く(朝)
修哉と菜緒の顔がゆっくり近づいていく。
菜緒、目を閉じーー
ホイッスルが鳴る。
審判員の声「70番、失格!」
菜緒、目を開けて、
菜緒「えっ?!」
× × ×
菜緒や修哉、審判員の上空を鳶型ドローンが飛んでいる。
鳶方型ドローンの小型カメラは菜緒に向けられている。

◯合陣高校・用務員室内(朝)
たくさん並んでるモニターの中の一つに上空からの菜緒の姿が映っている。
ゲーミングチェアに座ってモニターを見ている男子学生の後ろ姿。
大きな伸びのあと、ゲーミングチェアから立ち上がる男子学生。

◯同・用務員室・前(朝)
用務員室のドアが開き、中から出てくる男子学生。
パタン!とドアが閉じられる。
校門の方に歩き出す男子学生。

◯通学路・合陣高校の校門の近く(朝)
審判員が菜緒にレッドカードを差し出している。
菜緒「え、今、失格って言った?!(修哉を見て)シュウチンどういう(こと)?…」
修哉、顔面に手を遣り、下からメリメリとライフマスクを外す。
修哉とは似ても似つかない顔が出てきた。
菜緒「に、偽物!まさか?!」
修哉の声「そのまさかだね」
菜緒、声が聞こえた校門の方を見る。
校門の扉が開き、男子学生--学生服の修哉が現れる。
菜緒、修哉を見て、
菜緒「シュウチン?!嘘!」
修哉「嘘ではない」
修哉、自分のほっぺたを強めに引っ張る。
修哉「本物だ」
菜緒「何で学校側から出てくるのよ」
修哉「ギリギリまでどこにいようとこちらの勝手だ。あー、もちろんそろそろ通学路に出る予定だったけど」
菜緒「あ、足は…」
修哉「確かに僕は子供の頃の事故で足を怪我をした。なので歩く時のバランスは少し悪いが日常生活にほぼ支障はない。ちなみに子供の時に痛めたのは右足だ」
菜緒「えっ?だってあの時、左足を引き摺ってて」
修哉「番組で共演した時?…スタジオの柱に左足の小指をぶつけた日か。ああ、あれはめちゃ痛かった…」
菜緒「何してんだよ!紛らわしい!…でもスタッフさんが…」
修哉「スタッフに子供の時に足を痛めた話をした事はあるよ。でもそのスタッフには右か左かどっちの足かは伝えてない。多分勘違いしたんじゃないかな」
菜緒「嘘でしょ…」
修哉「もし、君にも何か勘違いさせてしまったんなら申し訳ない。でも失格は失格だ。ご苦労様」
菜緒「シュウチン、サイテー!地獄に落ちろ!」
修哉「それより…聞きたいことがあるんだが…」
菜緒「何、急に。全く協力したくないんだけど」
修哉「まあ、そう言わずに。ちょっといいかな」

◯合陣高校・校門近く・用務員室前(朝)
修哉に促され用務員室に入る菜緒。
後から中へ入る修哉。

◯同・用務員室・内(朝)
並べられたモニターの数に驚く菜緒。
菜緒「何これ!ちょっと!用務員室を勝手に改造するなよ」
修哉「許可は貰ってる。それより…」
モニターには上空から映された高校近辺の通学路の様子が映っている。
修哉「鳶型ドローンからの映像だ。通学路のほぼ全域を網羅している」
菜緒「はあ」
修哉「君の同級生の望海京香さん、彼女だけずっと行方不明なんだ。見かけなかったか」
菜緒「はい?京香がどうかしたの」
修哉「彼女が家を出た後の食パン型参加証からの電波の信号は確認したんだが、その後途中からさっぱり電波を拾わなくなって…鳶型ドローンをあちこち飛ばしたけど全然見つからなくて…」
菜緒「食パン型参加証から電波を拾う?どんな仕組みなのよ!ちょっと!全然偶然の出会いじゃないじゃん!京香の食パンからの電波をキャッチ出来なくて困ってる?それってまるで…」
修哉「えーっと、彼女の電波だけを拾ってる訳ではなくて、つまりその…」
菜緒「それって京香のための出来レース…」

◯同・校門近く・用務員室前(朝)
ドン!とドアが開き、菜緒が出てくる。
菜緒「ふざけんなよ!!何なのこの茶番!!」
修哉が慌てて後を追って出てくる。
修哉「いや、待って、違う。誤解だ。そうじゃなくて…」
菜緒「京香が何処にいるかなんて知らない…ねえ、何なの?確かに京香の様子もちょっとおかしかったけど…ねえ、昔、京香との間になんかあった?ねえ!」
修哉「そ、それは…」
声(女性)「ヘックション!ん?誰かが噂してる?」
菜緒・修哉「?(辺りを見渡す)」
修哉、ふと、上の方を見る。
修哉「!!」
菜緒も上を見て、
菜緒「嘘…何で?何やってんの」

◯同・校門近くの欅の木の上(朝)
大きな欅の木の高い枝の上に京香がいた。
家を出る時と違い、学生服ではなくジャージ姿にゼッケン、ヘルメット、エルボーパッド、ニーパッド、肩からは虫籠をぶら下げてる京香。
京香「あ、シュウチン。どうもお久しぶりでーす。菜緒も昨日ぶり。ていうか上からずっと見てたよ」

◯同・用務員室の前/欅の木の上(朝)
(以下、交互の視点で)
菜緒「見てたよじゃないよ!何でいんのそこに」
修哉「望海京香…いつからそこに?」
京香「えっと…5時過ぎとか」
修哉「そう5時までは電波を拾ってたんだ…食パン型参加証は?」
京香「あー、アレって一度口に咥えるとスイッチがオンになるんでしょ?先にやりたいことがあったから一旦リセットした。説明書にリセットの方法書いてあったよ」
修哉「だから電波を拾わなかったのか…ん?やりたいことって?」
京香「そりゃ決まってるでしょ」
京香、虫籠からカブトムシを取り出し、
京香「カブトムシ獲ったどー!イェーイ!」
菜緒「イェーイ!じゃないよ!バカ!」
京香「(クワガタも取り出し)クワガタもいるよー」
菜緒「皆がシュウチンをゲットする為に苦労してる間に、あんたはカブトムシやクワガタをゲットしてた訳だ」
京香「上手いこと言うねTikTokerさん」
菜緒「おい、調子乗んなよ」
修哉「それにしても…そんなところに居たら僕とぶつかれないぞ」
京香「だからそろそろ降りるつもりだったって…そちらこそずっと用務員室に居て、ぶつかるつもり全然ないじゃん」
修哉「だから僕もそろそろ出るつもりで…」
菜緒、京香と修哉を交互に見ながら、
菜緒「(独り言)さっき久しぶりって言った。てかずっとタメ口だし。ということはやはり…」
京香「じゃあ…様子見は終わったのね」
修哉「そうだな…虫捕りは楽しかった?」
京香「楽しかったよ。いっぱい採れたし」
京香、修哉見つめ合っている。
京香「それじゃ…降りようかね」
菜緒「(大きな声で)あーあ!」
京香と修哉、菜緒を見る。
菜緒、ゼッケンを外しながら、
菜緒「こんなことだったら、CTSのサイン&ハグ会、参加すればよかった。チクショー!」
京香「実は…菜緒の一言でもしかしたらと思ったの」
菜緒「?!」
京香「菜緒、このイベントは出来レースだって言ったよね?」

◯回想・カラオケボックス
京香に出来レースだからと言っている菜緒。
菜緒の声「言ったけど」

◯同・用務員室の前/欅の木の上(朝)
(以下、交互の視点で)
京香「ごめんね。シュウチンと知り合いなんだ。幼稚園の頃の」
菜緒「やっばね」
京香「だから、このイベントは私目当てだと思った」
菜緒「でも…」
京香「(頷く)そうだね。私も勘違いの可能性はある。自意識過剰かも…だから…」
京香、修哉を見る。
京香「とりあえず続きを始めますか」
修哉「そうだね。では気を付けて降りてきてくださいね」
× × ×
巨木に立てかけられている梯子から器用に降りてくる京香。
心配そうに見ている修哉。
それを見ている菜緒。
菜緒「(独り言)街なかで男女がぶつかるイベントでしょ?もう成立してないじゃん。この二人何やってんの…」

◯同・校門前の道(朝)
修哉と京香、少し離れて菜緒。
京香、曲がり角を見つけ、
京香「そこの角にしようか」
修哉「(曲がり角を見て)ああ」
京香「私、向こうから走ってくるから、シュウチンはこっちから来て」
修哉「(頷く)…分かった」
菜緒、二人を見ながら呆れて、
菜緒「(独り言)『偶然』とは…?」
京香と修哉、曲がり角を挟んで反対側に歩き出した。
京香、立ち止まり、修哉へ、
京香「あー、ちょっと待って」
修哉「(立ち止まり)?」
京香「まだ時間あるよね…折角だから制服に着替えていい?ジャージ汚れちゃったし。それに…そっちのがいいでしょ」
修哉「分かった…時間がない。10分後再開でいいかな」
京香「OK。用務員室借ります」
校門の方に去っていく京香。
修哉「(菜緒に)僕もちょっと準備してくる」
修哉も校門の方へ去る。
菜緒「…二人ともなんなん?」
菜緒、呆れ顔で。
× × ×
京香と修哉を待っている菜緒。
菜緒「私も何で待ってるんだか」
菜緒の後方からにじり寄っていく審判員。
審判員「(突然)この度は修哉のお遊びに付き合って頂き有難う御座いました!」
菜緒「わ!何!びっくりした急に。え、あ、はい、有難う御座います…えっと…審判員の方ですよね?」
審判員「はい、審判員でもあるんですが、私は…」
審判員、アンパイアマスクを外す。
爽太「初めまして。私、修哉の父、相澤爽太でございます」
修哉の父、相澤爽太(42)であった。
(第8話へ続く)


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