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「いっけなーい!遅刻遅刻選手権」にエントリーしました☆第8話

◯同・校門前の道(朝)
審判員、アンパイアマスクを外す。
修哉の父、相澤爽太(42)であった。
爽太「初めまして。私、修哉の父、相澤爽太でございます」
菜緒、驚く。
菜緒「えーーーっ!!そうなんですか?!あ、はい、初めまして…え、どういうことですか?…ん?ハッ!!」
菜緒、爽太の顔をまじまじと見て、
菜緒「もしかして…貴方が黒幕…」
爽太「いえいえ、まさか。このイベントは修哉の我儘から始まったイベントでして…」
菜緒「あ、はい…」
爽太「私はどちらかというと反対してたのですが修哉に説得されて渋々…その代わりに近くで見守らせて頂こうと思い、こんな格好を…」
菜緒「そうでしたか…」
爽太「修哉のおばあちゃんっ子っぷりは尋常ではなくて。まあ、おばあちゃんというのは私の母でもあるんですが」
菜緒「まあ、そうですよね…あの」
爽太「はい」
菜緒「修哉さんはなんでこんな回りくどいことを?」
爽太「修哉曰く『突然、幼少期のことを思い出した。おばあちゃん以上に気になる人がいる。どう接触したらいいか分からない。だから自然に近付けるイベントを考えた』だそうです」
菜緒「やっぱり、オタクの息子さん、相当変わってますね…」
爽太のスマホがポーンと鳴る。
スマホのLINEメッセージを見る爽太。
爽太「菜緒さんすいません」
菜緒「ハイ?」
爽太、自分のスマホを菜緒に差し出す。
菜緒「?」

〇スマホ画面
LINEの映像通話画面に修哉が映っている。

◯同・校門前の道(朝)
菜緒「(スマホ見て)えっ!シュウチン?!」
修哉の声「菜緒さん、すいません。実は…お願いしたいことが…」
× × ×
爽太、アンパイヤマスクを被りなおし、腕時計を見ながらきょろきょろと辺りを見渡す。
菜緒の声「お待たせ~!」
ヘアメイクをバッチリ終えた菜緒がやってきた。
菜緒「ちなみに6分で終わらせた」
手にはスマホをセットした自撮り棒を持っている菜緒。
菜緒の後ろにはCTSグッズを身に着けた琴李と麻希が立っている
ライトを持っている琴李。
メイク道具を持っている麻希。
麻希のメイク直しを受けながら、スマホを構えて髪形をチェックしている菜緒。
菜緒「…」
修哉の声「菜緒さん、すいません。実は…お願いしたいことが…」

〇回想・校門前の道(朝)
スマホ画面の修哉を見ている菜緒。
画面の修哉「その節は本当に申し訳ない」
菜緒「それはもういい。で、何?」
画面の修哉「確かにこのイベントは京香さんに僕が近づくために仕組んだイベントだ。ただそのことを知っているのは今のところ君だけだ」
菜緒「はいはい、今度は口止めね…ねえ、私、少し前にシュウチンの番組に呼ばれたけど、もしかしてそれも京香の情報を知るため?同じ学校だから?」
画面の修哉「半分正しく、半分間違ってる」
菜緒「それしかないだろ」
画面の修哉「本当に偶然なんだ。番組で人気TikTokerの君をオファーしようとなった時に、君のプロフィール欄の在籍高校が目に留まった」
菜緒「確かに私は合陣高校に在籍って隠してないからね」
画面の修哉「合陣高校が山無県治国市にあるのは知ってた。治国市は僕にとって特別な思い出がある土地なんだ。だから…」
菜緒「望海京香も同じ治国市の出身で、もしやと思い調べたら偶然にも私は彼女と同級生だったと。でも、番組でその話題、全然聞いてこなかったよね」
画面の修哉「…」
菜緒「ま、なかなか聞けないか。同級生の京香さんはどんな子ですか、なんて…」
画面の修哉「僕が今言いたいのは…」
菜緒「ハイハイ、口止めの件、承知しました。その代わり…条件があるんだけど」

〇合陣高校・校門前の道・曲がり角(朝)
髪形のチェックが終わり、スマホの自撮り棒を構えなおす菜緒。
菜緒(心の声)「――このイベント・ICCCは出場者にシュウチンの居場所が特定される可能性があるので生中継されていない。参加者の生配信も禁止されている」
菜緒「そろそろ配信スタートするね」
菜緒(心の声)「でも既に京香以外の全員が脱落。あとは京香とシュウチンがぶつかってカップル成立を見届けるだけの段階。『ここから私のチャンネルで生配信させてくれない?』それが私の…」
菜緒「(小声で独り言)取引条件…」
琴李と麻希「菜緒さん」
菜緒「はい?」
琴李「この後、体育館でCUTのライブがあるらしくて…」
麻希「あの…そっちに行ってもいいですか?」
菜緒「えっ?ああ…そうなんだ。行ってらっしゃい」
琴李「やった!!」
麻希「それじゃすいません、失礼します」
琴李と麻希、校門の方へ去っていく。
菜緒「マジか。気になる…」
菜緒、自撮り棒を構え直し、
菜緒「一人でやるか」
菜緒、スマホのスイッチをオン。
菜緒、スマホに向かって
菜緒「どうも~菜緒で~す!緊急生配信スタートしました!知ってる人もいると思うけど、私、シュウチンの『いっけなーい!遅刻遅刻選手権』に参加してたんです。しかーし!つい先ほど脱落してしまいました。ぴえん」
泣き真似のポーズをする菜緒。
菜緒「そして『いっけなーい!遅刻遅刻選手権』略してICCCもいよいよ佳境を迎えております!参加者が次々と脱落し、今最後の参加者とシュウチンが接触しようとしております。そこで私、シュウチンサイドから特別な許可を貰い、その様子をなんと!急遽、生中継させていただくことになりました!」

〇駅のベンチ(朝)
中学生男子二人がスマホで菜緒の配信を見ている。
中学生男子A「菜緒がICCCの生中継やってる!」
中学生男子B「まじで?すげえ!」

〇合陣高校・校門前の道・曲がり角(朝)
自撮り棒のスマホのカメラをインからアウトに切り替えて配信し続ける菜緒。
菜緒「ということで、あ、今、曲がり角から見て上手側にシュウチンの姿が見えました!」
曲がり角の上手奥から学生服にヘルメット、エルボーパットとニーパットをを付けた修哉の姿。
修哉「…(ポーカーフェイスで)」
菜緒「そして曲がり角の下手、反対側に最後に残った出場者の姿が見えてきました。果たしてそれは誰か?」
曲がり角の下手奥から制服にヘルメット、エルボーパットとニーパット、ゼッケン「0005」を付けた京香の姿。
菜緒「最後の一人、エントリーナンバー5番、望海京香選手です!」
菜緒(心の声)「あーあ、京香のための出来レースか。京香、お幸せに」
京香、食パン型参加証を口に咥える。
ゆっくりと走り始める京香。
京香「ーー」
×××
曲がり角を挟んだ反対側から歩いてきている修哉。
修哉「ーー」
× × ×
走っている京香。
京香(心の声)「シュウチン、会いたかった」

◯フラッシュバック・公園・12年前
幼稚園時代の京香、みのりが公園で遊んでいる。
園児服の男の子が現れた。
後ろから陽光が差し、男の子の顔はよく見えない。
男の子、京香とみのりに近づいてくる。
京香、みのり「…」

◯曲がり角・下手(朝)
走ってくる京香。

◯曲がり角・上手(朝)
歩いてくる修哉。

◯フラッシュバック・公園・12年前
だんだんと京香とみのりに近づいてくる男の子。
近づいてくる男の子の園児服に「あいざわしゅうや」の名札が付いている。
それを見ている京香とみのり。

◯曲がり角(朝)
実況する菜緒。
菜緒「二人が近づいてきました。もうすぐです!」

〇フラッシュバック・公園・12年前
幼稚園時代の京香とみのりの前で立ち止まる男の子ーー修哉。
京香の一歩前に出てくるみのり。
京香「(みのりを見て)!…」

◯曲がり角(朝)
歩いてくる修哉。
走ってくる京香。
× × ×
実況する菜緒
菜緒「あと少し!」
× × ×
曲がり角に差し掛かる修哉。
曲がり角にくる京香。
修哉「――(ポーカーフェイスで)」
京香「――」
修哉と京香がぶつかる!
と思いきや、その直前で京香がグッとかがみ込む。
修哉「えっ?!(驚き立ち止まる)」
× × ×
実況中の菜緒。
菜緒「な?!」
菜緒の手の中の自撮り棒のバランスが崩れる。
× × ×
京香、顔を上げ、
京香「(修哉の顔を見て、ニヤリ)…」
京香、曲げた膝を勢いよく伸ばし、ショートレンジのカウンターで修哉の鼻っ柱に頭突きを叩きこむ。
修哉「!…」
(第9話に続く)



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