Reject新作『ディア❤ヴォーカリスト』を紹介してみる【後編】
前編はこちら→【前編】
前編では肝心の表題が紹介できず、シチュエーションCDについての説明に終始してしまったため、今になって続きです(笑)
シチュエーションCDについての解説なぞどうでもいい、という方はこの記事からどうぞ。
本来書きたかったのはこっちだ……
乙女向けコンテンツというと、今では「オトメイト」と「Reject」の二つの会社が大手かなぁ、と思います。
ちょっと前までもう一社あったんですけど、事業停止されてしまったんですよね……
今回は「Reject」のシチュエーションCDシリーズ『彼はヴォーカリスト ディア❤ヴォーカリスト』の紹介です。
* * * * * * * * * *
この「Reject」さん。
とにかく作品ごとの個性が強いです(笑)
ドSの吸血鬼兄弟に罵られたり殺されかけたりする恋愛シミュレーションゲームとか。
悪魔とかエクソシストとか堕天使がいる、ヒーローをヒト側に導くかアクマ側に堕ちるか究極の選択を迫られる恋愛シミュレーションゲームとか。
いつ死ぬとも分からない新撰組の隊士との甘酸っぱく"ない"逢瀬の恋愛シミュレーションCDとか。
乙女ゲーム王道の王子様路線とか無い、ぶっ飛ばした作品が出ております。
すごいっす。耐えられない(腹筋が)
この会社は、男性社長がディレクション&プロデュースしている、というのが大きいんじゃないかなぁ、と思います。
男性向けの美少女ゲームの女性向け、みたいな路線があります。R15ぐらいは当たり前に突っ走っていきますからね。
商品もゲームとシチュエーションCDシリーズが多いですが、各作品のキャラクターソングも多く出していて、その多くが社長ご自身が作詞なされています。
なんというか……色っぽい作詞と台詞が登場する、非常に癖の強い楽曲プロデュースとなっております。
好き嫌いはなかなか激しいかなぁ……
言葉遊びだとか韻を踏んだ歌詞が多いのも特徴ですかね。
そして、今回の『ディア❤ヴォーカリスト』シリーズで私がうっかり釣られた理由は作曲者にあります。
アニソンやゲーム音楽、そして、数多くの声優さんご本人名義やアイドルに楽曲提供を行っている「R・O・N」という方が『ディア❤ヴォーカリスト』シリーズ全曲の作曲を手掛けているのです。ご自分でもバンドをやっていて、そちらでも作曲・歌唱をしています。
ご自分での歌唱だと、
・『Daisy』 ( TVアニメ「境界の彼方」エンディング)
・『Renegade 』 (TVアニメ「GANGSTA. 」オープニング)
・『Genesis』 ( TVアニメ「Dimension W」オープニング)
など、がありますね。
楽曲提供だと、
・OLDCODEX (2012年10月までのサウンドプロデュース。ギターとしても参加)
・声優・新谷良子さん(『ギャラクシーエンジェル』ミルフィーユ・桜葉役や『さよなら絶望先生』（日塔奈美役など)の楽曲への作曲参加
などなど。
他にも声優・小野賢章さん(映画『ハリー・ポッター』ハリー・ポッター役やTVアニメ『黒子のバスケ』黒子テツヤ役)や浪川大輔さん(TBSテレビ『A―Studio』ナレーション、アニメ『ルパン三世』石川五ェ門(三代目)役、またの名をKY(漢字読めない)声優)などの楽曲提供がありますね。
あと、ちょっとびっくりしたのが、
・NEWS『Fighting Man』
……NEWS。
まじか。
まだギリギリ山Pも錦戸亮くんも居るNEWS(^^;
R・O・Nさんの楽曲はキャッチーでポップなノれる曲が多いですねー。
J―POPとJ―ROCKのいいとこ取りな感じで。
耳馴染みが良いというか。
OLDCODEX時代の曲もすごくカッコいいです。
……おっと、このままだとOLDCODEXについて語りそうなので、そろそろ本題行きます。
もうすでに長い。
* * *
『彼はヴォーカリスト ディア❤ヴォーカリスト』
こちらのシリーズは全６人のヴォーカリストたちが、生き残りをかけてラストソングを歌う、というコンセプトのシチュエーションCDとなっております。
要するに、ちょっと(主に性格に)問題アリなヴォーカリストたちが所属会社からのクビ寸前宣告を受けて最後の歌を歌う、っていう。
そのため、表題曲とカップリング曲というCD構成になってます。めっちゃ普通だね。
収録曲も、自分が最後に歌うなら、っていう楽曲です。
このCDの面白いところは「いわゆるキャラクターソングではない」というところです。
キャラソンっていうと、そのキャラクターが自分の仲間とか友達とか恋人に向けた曲だったり、自分の半生とか生活について歌ったり、世界観について歌ったりするのが普通です。
もう、ガッツリそのキャラの歌、なんです。
そして、それを歌う声優さんも(大体)そのキャラの声音で歌います。
でも、今回のディアヴォシリーズは違うんです。
バンドマンキャラクターのキャラクターソング、というよりは、そのキャラの人生とか考え方とかを反映した歌になってます。
現実のバンドもそうやって作詞作曲されてるんだろうな、っていう「外に向けた曲」になってるんです。
そして、それを歌う声優さんも真剣歌唱を披露してくれてます。
面子もベテランさんから新人さんまで、ばっちり歌える方々がラインナップされてます。
シチュエーションパートも収録されているのですが、もうセリフと全然声が違う、歌への全力っぷりです。
最高です(真顔)。
地声で歌う声優さんって結構レアなんですよ。
人気声優なら個人名義でのデビューすることもありますし、自分で作詞作曲してバンド組む方もいますが、若手だとなかなかなくて……
若手でも歌が上手な人たちが多いので、こういうCDでもいいから地声で歌う機会あると面白いんですけどね。
今回は全６枚の中から特に推したい３枚の紹介をさせていただきます(^o^)/
カレはヴォーカリスト❤CD 「ディア❤ヴォーカリスト」 エントリーNo.2 モモチ CV.豊永利行
色街に 堕ちて咲く花 千夜一夜
【泡唄】Veronica Vo.モモチ (CV.豊永利行)
ロックバンド「ヴェロニカ」のヴォーカリスト・モモチのラストソング。
・表題楽曲『泡唄』
花魁の結ばれなかった恋心を歌う、切なく激しい燃えるようなラブソング。イントロの三味線の美しさとギターのイントロの入り方が最高にかっこ良くてずるいです。
和風ロックで、シチュエーションパートの可愛いモモチが格好いい歌声を披露してくれます。
中身クズだけどこんなに歌うまいならいいかなぁ……いや、良くないな。
モモチ役の豊永利行さんはご自分でも作詞作曲をしての音楽活動もされてますので歌唱力も高く、普段はキャラの声で完璧に歌い上げるプロでございます。
その声どっから出した！？ っていう高音域で歌うときもあるので、変幻自在な歌い手さんなんですよね。
カップリング楽曲『全能感』は豊永さんだからこそ歌える変調あるバラードロックになっております。
こちらは出だしから艶のある歌声を披露してます。
……最初全然買う気なかったのに、和風ロック好きなのと歌唱がかっこよすぎてうっかり買ってしまった……後悔はしていない。
ちなみにシチュエーションパートの話を少しすると、可愛い声を全部台無しにするドSっぷりと、飴をポンッと吐き出す話でした。
飴を吹き出す"ポンッ"って音が小気味いい感じでした。
カレはヴォーカリスト❤CD 「ディア❤ヴォーカリスト」 エントリーNo.3 ジュダ CV.斉藤壮馬
変幻自在の脳で、日々を壊せ！今すぐ、エスカレーション！！
【エスカレーション！】KAGARIBI Vo.ジュダ (CV.斉藤壮馬)
バンド「KAGARIBI」のヴォーカリスト・ジュダのラストソング。
・表題楽曲『エスカレーション』
自分が自分であるため、過去も葛藤もなにもかも振り切って道を邪魔するものはぶっ壊して駆け抜ける、ポップさ溢れるJ―ROCK。キャッチーなギターイントロがにぐっと引き込まれます。
すごくR・O・Nさんらしいキャッチーなメロディーラインの曲です。
「変幻自在に夢を描く脳があるのに、夢を夢のまま終わらせるのか？」という挑発的な歌詞に、爽やかなジュダの歌声が乗るポップソングですね。
日本らしいのポップさのあるロックだとも感じます。
声質自体は甘い声なので女性のほうが好きそうですが、曲調は万人向けかなぁ。
個人的な聴きどころは間奏前の、女性と見紛うばかりの透明感ある高音です。
それまで格好良さを存分に見せつけて疾走していく歌が、すっと綺麗に伸びる歌声に収束する感じはなかなかゾクゾクしますよ。
ジュダ自体ははなかなかのクズ男ですが、この歌声なら……いや、よくないな……全然良くないわ。演じた声優さんが「世の乙女はこんなのが好きなの？ 大丈夫？」って心配するぐらいのキャラクターでしたからね……
ジュダ役の斉藤壮馬さんは若手ですが歌が上手くて、初めてこの方を知ったのは無名キャラの作中での歌唱を聴いて「この歌上手い人誰だろう？」と調べたのがきっかけでした。
ビジュアル系バンドのボーカルのような甘い歌声が持ち味なので、女性向け作品の出演と歌唱は多いです。
まぁ、逆に言えば囁くような甘い声は個人の好き嫌いは激しいような気もします;
個人的には「エスカレーション！」はディアヴォシリーズで一番好きな曲です。
この曲に出会わなければ、今ここでこんな長いレビュー書いてない。
カップリング曲「Sweet Devil`s Night」は悪魔が女の子を落とす、ビジュアル系なカワイイ楽曲となっています。もうこれ歌声と相成ってもはやアイドルソングだよ。
シチュエーションパートは、とちおとめがあればすべて丸く収まる、って感じでした。
ジュダくんが一番情緒不安定な気がします。
それでもとちおとめあればなんとかなるから🍓
カレはヴォーカリスト❤CD 「ディア❤ヴォーカリスト」 エントリーNo.6 ユゥ CV.花江夏樹
許しても 許せなくてーー、諦めかけてるなら 信じれば？
【AWKWARD？】JET RAT FURY Vo.(2)YOU (CV.花江夏樹)
バンド「JET RAT FURY」のヴォーカリスト・ユゥのラストソング。
・表題楽曲『AWKWARD？』
ギターと電子音が駆けめぐる疾走感溢れるJ―ROCKです。楽曲系統としてはジュダに近いものがありますが、こちらのほうがエレキギターが鳴る、真っ直ぐカッコ良さに傾いた楽曲です。
全てぶっ壊すジュダに対して、こちらは弱さも飲み込んで全てを乗り越えていく気概を感じるユゥの信念を感じる、応援ソングでもあります。
初めて聴いたときは「あんまりパッとしない……？」と思ったんですが、聴けば聴くほど歌詞の意味が呑み込めてきて、気づいたときには大好きになっていたスルメ曲です。
噛めば噛むほど味が……美味しい……
ユゥ役の花江夏樹さんの声質が中高音向きなこともあり、迫力という面では欠けて居るかもしれませんが、この曲のカッコ良さはそういうところじゃない、っていうのが魅力かもしれません。
R・O・Nさんのノリがいい曲にメッセージ性ある歌詞と、聞き取りやすい歌声が合わさってこの曲を形作っていると感じます。
ユゥ役の花江夏樹さんは過去にニコニコ動画で歌い手をやっていた過去もあり歌はもちろん上手いんですが、なによりも歌声が高くてかわいらしいのが特徴です。
その一方で、突然格好いい声も入り交じるのでギャップにやられる人もいそう。
カップリング曲『I need your love』は素直になれない男の子の不器用なバラードラブソングです。
個人的には表題曲よりもこちらのほうが花江さんの声質に合ってて、より深く歌声が堪能出来る気がします。
バックで鳴るピアノの音が切なさを醸し出す、素敵なロックバラードです。
シチュエーションパートは、愛想のいい表の顔とツンデレな裏面が入り交じるハリネズミのようなユゥの抱える内情が垣間見える内容でした。
上記の二人よりわかりやすく可愛げがあるので大分良いです。いや、でもやっぱりクズだわ🐭
* * *
ディアヴォーカリストシリーズはこちらで全曲の試聴ができます。
イントロからAメロ、Bメロ、サビ、というアニメのOPカットばりに一曲の雰囲気がしっかり楽しめる試聴なので是非とも！ 聴いてみて！ 欲しい！！
他にも、王道J―ROCKのレオード(CV.増田俊樹)の曲とか、電子ポップなエーダッシュ(CV.木村良平)の曲とか、ドラマチックなシエル(CV.KENN)の曲とか、ほんとはもう全部紹介したいぐらいですが、やると終われないので諦めました(
……実はこれでも大分内容削ったので、色々愛が走りすぎるとダメだな、と感じる今です。
こんな長い紹介記事にお付き合い頂いた方、ありがとうございました。
最後まで読んだ方がいるのか非常に不安です……(笑)
ちょっとでも興味沸きましたら、まず公式サイトにて試聴頂ければ嬉しいです。
……実は結構音楽好きでイヤホンとかそこそこ良いの使ってたりもするので、これは書いてて非常に楽しかったです。
音楽系のテキスト、機会あればまた書きたいな。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？