Reject新作『ディア❤ヴォーカリスト』を紹介してみる【前編】
乙女向けの「シチュエーションCD」についてはあまりレビュー以外に語られることがないような気がして、先日久しぶりに乙女向けCDのシリーズを買うようなマネをしたので、noteで需要がないから語ってみようと思います。
需要、っていうか、そもそも発想に無かったり供給も無かったりしますよね、このジャンル。
◆そもそも「シチュエーションCD」というものについて
所謂「ドラマCD」と良く似ています。
あ、一応「ドラマCD」の説明もしておきますかね。必要無さそうだけど。
「ドラマCD」とは、アニメの映像無い版のように捉えて頂ければ。
基本的にボイスと効果音、モノローグで構成されます。声だけによる動きを想像させる演技だとか、複数キャラクターのテンポ良い掛け合いが魅力ですね。
声だけで絵がないので、小説のドラマCD化も。漫画化したりアニメ化したりして下手に絵を見るより、作品のイメージが壊れない、なんてこともあります。
もちろん、声優のキャスティングが合っていれば、ですが。
一方「シチュエーションCD」は、大体キャラクターはひとりで、そのキャラクターが聴く側に語りかけるスタイルが主です。
ま、あれだよね。
ざっくり言うと「キャラが『私』だけに愛を囁いてくれるCD」ですよね。ぶっちゃけ。
例えば「オレが君を守るから……」とか「君だけを愛してる……」とか、直接愛を囁いてくれたり?
「お前って、ホントダメな奴だよな……だから、オレが傍に居てやるよ」とか「貴様ごときがこの私に近付くな、死ね」とか、ツンデレしたり、罵ってくれたりするわけですね。
それも、大体イケメンがイケボ(イケメンボイスの略)で←ここ重要
現実世界でやられたらその瞬間にお前とは永遠にサヨウナラしそうな台詞も、2次元イケメンがキュンとくる声で『私』だけに語りかけてくるわけですよ奥様。
ここで大事なのが、『私』だけに語りかけてくる、ってところですかね。
ドラマCDにももちろん乙女向けジャンルはあります。
でも、これは『ヒロイン』っていう、顔も生い立ちも少なからずキャラクター性も持っている『独立したキャラクター』がいて、そのヒロインキャラに対してヒーローが愛を囁いたりなんだりしてる、っていう違いがあるのです。
ドラマCDはあくまでもキャラクターとキャラクター間の掛け合いであって『私』が入る余地はなく、それを傍観のスタンスで聴くか、ヒロインに自分を重ね合わせて聴くかは聴く人次第でしょうけど……
ようするに、
・ドラマCD=二人以上のキャラクターがいて、その関係性のなかで話が進む。
・シチュエーションCD=あるキャラクターと『私』の間で話が進む。
って、感じですかね。
伝わるかな。
具体的に言うと、
「俺のこと、好きなくせに」「そ、そんなことないよ」「ふーん……そう?」がドラマCD。
「俺のこと、好きなくせに」「……(無言の間)」「ふーん……そう?」っていうのがシチュエーションCD。
シチュエーションCDはこの「……(無言の間)」の部分に自分が入り込む余地があるわけです。
「……そんなことない」とか「そうだよ、悪い?」とか「うん、好き」とかその人それぞれに回答が思い浮かべられるわけです。
で、大概こういうセリフの後って壁ドンされてちゅーとかされるわけですね。その人がよっぽど変な回答しない限り、ちゃんと回答に沿ったラブラブな感じが続くわけです。
「強がっちゃって拒否したけど彼は見透かしてる」という流れとか、「ほら、素直に言えるじゃん」っていう流れとか。
ツンケンした回答しても、素直な回答しても、違和感が出ないように計算されてる。
マジで良くできたシナリオ構成っていうか、流れとして違和感がでないように上手く作られてますよ、こういうのって。
まぁ、男性キャラクタータイプごとにそういうのが好きな女性のタイプがあって、そういう子達はこういうシチュエーションが好き、っていうテンプレーションもあるんでしょうけどね(笑)
しかも、今は特に時代が進化してるのですよ。
『ダミーヘッドマイク』というものをご存じでしょうか。
このマイクはマネキンの首みたいなものの両耳に高感度のマイクが仕込まれていて、声を吹き込む声優さんの喋る位置によって聴く側もその位置から直接語りかけられているような、そういう微妙な位置のニュアンスまで表現できる凄いマイクなのです。
すごい臨場感なんです。
ヘッドフォン推奨って言われますが実際その通りで、こういうの聴くなら一度体感の価値有りですよ。
真後ろの遠くから呼び掛けられる感じとか。
後ろから抱き締められて、至近距離の少し後ろから直接右耳に囁かれてる感じとか(いかに右耳に囁かれていようとも、少しだけ左耳にも届く声量で話していればきちんと左側からも声が聞こえます)。
だから、そのキャラクターが『私』の前で話してれば、ちゃんと前から聴こえるんですよ、声が。
ヘッドフォンで聴いてるんだから、変な話だけど。
立体的に声が聴こえるのです。
純粋にこの技術はすごい。
より近く。
臨場感ある体感を。
シチュエーションCDは日々進化しているのです……
と、まぁ、シチュエーションCDについて説明するだけでそこそこ長くなったね!
あ、でも、こんだけ語っておいてアレなんですが、私は嫌いなんですけどね、シチュエーションCD……(笑)
ぞわぞわするんです……
王子さま的なセリフを確立した女性キャラクターに語りかけてる分には「うんうん、幸せにお成り」とか「大丈夫、口は悪いけどその男はキミのことが大好きなんだよ」とか、すっごく微笑ましく聴けるんですけどね。
こっちに直接語りかけてくるやつだけは、もう、体が拒否しますね。しかもダミーヘッドマイクという素晴らしい技術のおかげでリアリティーあってね。ぞわっとしてね。手が反射的にイヤホン引き抜いてますからね。
好きな声優さんなのに、声は好きなのに、セリフだけが受け付けない……つらい……非常につらい……
「俺のこと、好きなくせに」とか言われた日には「お……おう」とか「お前の自意識過剰だ」「ナルシスト乙」とか思っちゃいますね。
夢も希望もへったくれもないですね。
そんな感じで非常に個人差がありますが、楽しめる人には「乙女な夢を叶える」素敵なコンテンツだと思います、シチュエーションCDって。
ラインナップされてるイケメンも様々で、王道王子さま系キャラから、人外非道系キャラまで多彩ですよ。
あまりに多彩すぎて、演者の方々はフリートークで「世の乙女は本当にこれでいいのかい……?」という感想まで漏らしております。ホントにね。
そういえばシチュエーションCDって店頭みてると女性向けが大半だよなぁ、と書いてて思ったんですが、男性向けは男性向けで女性が喘ぐだけのエロボイス集とかDLだといっぱい出てくるから、まぁ、こういうのは声だけだからこそ、自分だけでどっぷり浸かれるのが魅力なのでしょう。
書きたかった表題の件、書けないままなぜか長くなったので後編に続きます。
後編は、シチュエーションCDが嫌いな私がうっかり買ってしまった、面白いコンセプトを持ったシチュエーションCD『カレはヴォーカリストCD ディア❤ヴォーカリスト』シリーズについてです。
宜しければ続きもお付き合いくださいませ。
→【後編】
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