イギリス

ブレグジット(イギリスのEU離脱問題)に関して①〜概略と経緯〜

数年前からずっとニュースになっているけど詳細について知っている日本人はあんまりいないような気がするこの問題。僕自身も全然知らなかった一人だったので、今回はその背景や経緯、現状、本質的な問題点と今後の見通しについてまとめてみたい。

そもそも僕がブレグジットについて知るきっかけになったのが、Twitterで流れてきたNHKニュースの記事だった。たまたま読んでみたら、想像以上に八方塞がりの状態にあることがわかり、どうしたらいいんだろうという思いに駆られたのだ。本質的に「正解」も「間違い」もないからこそ政治は難しいと思う。けれどその中で世論を聞いて議論をして徹底的に考え抜いていく推進力と忍耐強さが求められている。これはイギリスにもEUにもそのほかの国々にももちろん言えることだ。今回の企画では、ブレグジットという1つの具体例を考えつつ、現代の政治や外交の核心に迫れたらと思っている。

ただし、様々な方面も問題が複雑に絡み合う難しい問題でもあり、1回でまとめきることが難しそうなので、①概略と大まかな経緯、②EUとイギリス、③現在地と今後の見通し、という3回に分けて書いていきたいと思う。第1回の今回は、ブレグジットとはそもそも何か、そしてどのような流れで現在に至ったのかについて大まかに説明していきたい。

2016年、当時の首相だった保守党のキャメロン氏は、党内の意見がまとまらない中、政権運営をうまく進めるために1つの「賭け」に出る。EU離脱の是非を問う国民投票の実施だ。彼はEU残留支持派が勝つと踏んでいたが、僅差で離脱支持派が上回ってしまう(残留派48%、離脱派52%)。この国民投票には法的拘束力はないものの、民主主義国家である以上、この結果は重く受け止める必要がある。結局キャメロン氏は辞任し、後任のメイ氏がその後を継いでEU離脱に向けて奔走していく。

そもそもなぜEU離脱の国民投票を行うに至ったかは第2回でも詳しく説明していくつもりだが、ここでも概略を述べたい。そもそもイギリス国内では、移民や貿易などについて様々な不満が溜まっていて、「EUにいる必要はないのではないか」という意見を持つ人々も一定数いた。しかし、EUにいることによるメリットももちろん大きい。キャメロン氏は党内でEUやEUとの関わり方について不満を持つ人たちを結果で黙らせる意味で、国民投票の実施を断行した。

しかし、まさかの結果となり、状況は一変。2019年現在も全く先が見通せないような状況になるまで引きずるほどの厄介な事態になってしまう。これを機に様々な問題が露呈し、まさにパンドラの箱を開けたような事態になった。

国民投票後、新首相に就任したメイ氏。離脱に向けてEUとの交渉を開始するが、大きな問題にぶち当たってしまう。北アイルランドとアイルランドの国境問題だ。そもそもEU離脱の最大の目標であった移民の制限を行うにあたり、EUという単一市場からの離脱を行うことにメイ氏は同意した。これはかなり大きなことで、それまで自由であったヒトやモノの動きが制限されることを意味している。イギリスがEUを離脱したとしても、隣国のアイルランドはEUに残ることになる。しかしながら、アイルランドはイギリスに属する北アイルランドと陸続きになっている。イギリスが単一市場から離脱するとなると、現在特に移動が制限されていないこの国境も制限する必要が出てくる。しかし、北アイルランド紛争の和平の条件として、国境の移動の自由を保証するという取り決めをしている以上、検問を設置することはできない。でもそうすると、制度の抜け穴を使ってモノやヒトが移動しかねない。このようなジレンマに陥ってしまい、いまだにいい解決策がない状態が続いている。

ただ、離脱すると言った以上はやはり(少なくとも表面上は)離脱の必要がある。メイ氏はこう考えて、苦渋の決断をする。これがEUと交渉してまとまった離脱協定案だ。この中では、イギリスが当面の間はEUの関税同盟に止まり、いい解決策が見つかり次第そっちに移行するという、言わば先延ばしの政策がまとめられた。しかし、この案はイギリス議会で3回にわたって否決されてしまう。議会で法案を通すことがEUとの合意の条件だったので、EUとの合意もできない。このままだとEUとの合意がない離脱、いわゆる「合意なき離脱」になりかねないとして問題になっている。結局、議会と対立してその後も解決策を見出せないまま、メイ氏は辞任に追い込まれてしまった。

その後首相に就任した保守党のジョンソン氏。議会を通らなかったメイ氏の案から修正し、「イギリスはEUの関税同盟からは抜けるが、北アイルランドの国境から離れた場所に税関を設ける。そしてこのルールを4年ごとに北アイルランドの了承を得る」というように変更した。これも根本的な解決策ではないという批判もあったが、ジョンソン氏は新提案が受け入れられなければ合意な離脱も辞さない考えを示し、EUに譲歩を迫った形となり、10月31日も離脱を目指した。その後、結局議会の採決が承認されず、10月31日の離脱はできない形となったが、EU側もイギリスの合意なき離脱を避けるために各国に呼びかけて1月末までの離脱延期を承認した。議会で野党側に過半数を占められているジョンソン氏は議会の総選挙を提案し、これが承認されたため、イギリス議会下院では12月12日に総選挙が行われる見通しとなっている。議会は11月6日に解散される。選挙の結果を世界が注目している。

第1回はこの辺まで。第2回では、そもそもイギリスでなぜEU離脱の議論が出てきたのかについて、歴史的な背景を中心に見ていきたい。ではまた。



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