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お客さんの居心地のいい家

お客さんの居心地のいい家って、いい。
私が育ったのはありふれた家庭で、特別なことなど特にない…と思ってきたけれど。
今思うと、とてもとても素敵なことだったんだなあ、と感じるのは…家に来る人は家族みんなの大切なお客さんで歓迎するってこと。もちろんセールスの人や宗教勧誘の人には玄関で帰ってもらっていたけど、けっして失礼な言い方や態度はしていなかったかと。
“人”に対する基本のマナー、があった。
そんなこと特別意識していなかったけど。世の中そうでない人…自分の好きな相手には感じ良くて、そうでない相手にはツンツン…もけっこういるもんだね。
そんな失礼な大人の態度を子供がしょっちゅう見ていたら、自然とその言動を真似してしまう。子供は成長するにつれ、“人に対して失礼な態度を取ってはいけない”ということに気づく人が多いと思うけれども。
父の葬式のとき、東京の従姉妹が泣いた。「(親と共に帰省した盆や正月に)伯父さんはいつも優しくしてくれた。いい思い出ばかり」。この家での楽しい記憶が、従姉妹の人生の灯の一つになっている。
従姉妹の言葉に、父の生き方が報われている気がした。「人が寄らん家はあかん(人が寄ってこない家は良くない)」と亡き父は良く言っていたから。
私が生まれ育った家は、典型的田舎の長男の家で、盆、正月には、父の兄弟家族が集った。父は6人きょうだい。叔父叔母たちがとても楽しみに集っているのがよくわかった。
私がいとこの中では一番年上で子供たちはまるでキャンプ状態だった。私は中学生くらいになると、母の手伝いで布団を出したり料理を運ぶのを手伝ったり…夜遅くまでの宴会のあと、片付けの茶わん洗いが終わるのは夜中の2時を回っていた。
映画「サマーウォーズ」を観たときは、布団と食事用意する労力思いクラクラ…。大変ですよ、あれ…。きっと監督は、子供時代に、大勢の親戚が集まる楽しい思い出があるんだろうな。
母は、盆や正月になると叔父や叔母に、何日に来る?何時くらい?などと聞きながら、待っているからねと歓迎の心を伝えていた。母曰く「人が寄るのは有難いと思てる。ちゃんと掃除するし」…うんうん、私も友だちが来訪する日を目安にして、頑張って掃除してる。
長男は大変その嫁はもっと大変…と言われがちで、事実大変なこと多いはずだけど…。。
みんなが喜んで集う“お客さんの居心地のいい家”を維持していたこと。それは、両親の静かな誇りだったと思います。

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