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水城せとな作品が大好きです

漫画の中でも水城せとな作品が特に好きです。
知らない人も、TV映像化された「失恋ショコラティエ」の原作者といえば、思いいたる方も多いかと。TVドラマ放映中は、まだ連載は途中でした。完結している単行本を最後まで読むと…かなりイタイ気持ちになると思う。この痛さが魅力なのです。
「失恋ショコラティエ」に限らず、お話が終了してもめでたしめでたしの気持ちになれないことが多い。漠然とした不安感…これからも生きている限り悩みは必ずできるものという確信…。恋愛模様も、ハッピーさより、苦しさが際立って描かれているかと。
人の心が、いかに複雑で一筋縄ではいかないか、を思い知らされる。
「失恋ショコラティエ」についていえば、夢見がちな年ごろの女の子、ぜひ読んでと思う。
“どんな金持ちも美男美女も出会った人としか恋愛はできない”“自分を好きになってくれない人はどんなにすてきでも映画の中の人と同じ”…(という感じの)名言の数々。
印象的な作品といえば、私は「黒薔薇アリス」です。年を取らないイケメン吸血樹(鬼ではなく樹)と、美少女の身体に心が入り込んだ20代女性。ゴージャスなファンタジーで、漫画ならではの世界観と美しさ。でも、それだけじゃない。ありえないお話なのに、やはり、恋愛心理戦や人間の業が繊細かつ冷徹に描かれていて、共感できる。
主人公の女性が、“心は身体にひっぱられるのかも“と自覚する場面にはっとしました。元はコンサバファッションの女教師だった彼女。金髪碧眼美少女の身体を持つと、だんだんその体に合った言動をするようになる。ごく自然に、身体に合うように心も変わり、そのことに誰も違和感を持たない。身体あっての心。連動していて分けられない。
主人公のイケメン吸血樹の言動が興味深い。まじめな吸血樹仲間に、女性に対しては“交渉じゃなく口説くんだよ”と諭す。そして、“女性を口説くのは自分の得意分野”と言い切り…その実践の様といったら。見ごたえあり面白い。モテる人の、人の心を操る術はこんなふうなのかと感心します。いるねこういう達人、現実でも男でも女でも。
同じことは、未完の「世界で一番、俺が○○」の、モテ男にもいえます。“落とせる”と狙った女を手玉に取っていく様はお見事。どうして作者は、こんなにうまく心理の深い部分を描けるのか…凄いです。
水城せとな氏は、お話を最後まで決めてから描き始めると、何かで読みました。だからなのか、ラストに不満を感じた作品はありません。「世界で一番、俺が○○」も、きっとオチまで決まっているはず。ファンタジーSFだけど若い男性3人の悩みが切実で、今の世相もしっかり反映していて閉塞感に満ち…とにかく流石なのです。早く続きが読みたい…!

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