第64回目「ASKA Terminal Melody」(4月24日放送分)

今回は4月最後のタミメロで、月に一度のASKA本人の出演だった。

4月21日のチャリティーコンサート『TOKYO SYMPHONIC WAVW 2022』に出演した後の番組収録であった。コンサートでは、横浜少年少女合唱団と『歌になりたい』を熱唱したが、歌い出しを間違うというミスをしてしまう。本人は、「こういうコンサートに出るときはミスはよくあるし、慣れている」と話してるが、今回は内心かなり緊張したんじゃないかと思う。他には、『PRIDE』、『君が愛を語れ』、そしてアンコールでは『SAY YES』を歌った。また、前回と前々回のゲストであった尾崎裕哉氏も出演し、父の代表曲である『I LOVE YOU』を裕哉氏自身の歌声で披露した。

このようなオーケストラのコンサートで、ASKA自身が心がけていることがある。オーケストラの演奏団の人たちの底力に毎回魅了されているという。自分1人が主役ではない。そんな思いからか、コンサートに出るときは、「例えば64人の演奏家の人たちと歌うときは、65人目のASKAです」と紹介するという。ここに、ASKA自身の本来の優しさや謙虚さといった人柄があるんじゃないかなと感じる。

そして、今月13日東京国際フォーラムで無事完走を果たした今回のライブツアー「hgher ground アンコール公演」の話に移る。ライブでは、子連れでライブに行く人が多く、親・子・孫の三世代で参加する人も珍しくないという。ASKA自身はデビュー当時、「3年やれたらいいんじゃないか」と思っていたそうだが、なんと今年で40年多い、43年も続けていることになる。今日に至るまで様々な出来事があったが、デビュー当時からずっとファンとしてASKAについていく人も少なからずいるんだろうなと思う。

ここで明かしておくが、"実は僕自身も今回のツアーに参加してました"。僕が参加したのは2月5日の大阪公演。その2日ほど前に、元々Twitterで繋がっていたファンの1人であるEさんから、LINEで「友達が当日ライブに行けなくてチケットが余ってる。そこで友達の代わりに参加してくれる人を探している」と誘われたことがきっかけだ。

誘われた直後は、やはり参加しようか少し迷いがあった。というのは、去年11月にブログやSNSでのASKAの言動に不安を感じたことからファンのコミュニティを離れ、音楽もしばらくまともに聴いてなかった。また、その前の月である1月には、匿名掲示板の成りすましやライブに誘ってくれたEさんとは別のファンの1人とごたごたがあって、悶々とした日々が続いていた。それでも、「音楽は嫌いになれない、音楽のファンは辞められない」という気持ちの方が勝り、ライブの参加を決意した。

開場前に会場に着くと、Eさんと連絡を取って、実際にEさんと対面した。SNSから知り合った人と実際に会う経験は今回がはじめてである。極度の人見知りである僕だが、Eさんとはグータッチで挨拶をし、気分を少し和らげながら会話も少し交わすことができた。また、ツーショットも撮ってもらって、その時の写真は今も大切に保存している。

それから約2年数か月ぶりのASKAとの対面となった(因みに前回の参加は2019年12月の京都)。感想は、今年64歳とは思えないほどの声量と喉の調子だった。やはり音楽ファンは続けるべきだと思った。参加してなかったらとても後悔していたことは言える、絶対に言える。

そのコンサートの中でも、これは一番忘れられないというシーンがある。チャゲアス時代の1曲である『なぜに君は帰らない』を演奏したが、その導入となるドラムプレイだ。去年11月に亡くなった菅沼孝三氏と今回バンドメンバーの1人として参加した娘のSATOKO氏との夢のコラボである。コラボは、孝三氏の映像を通じて行われたが、その映像はチャゲアス時代のライブで、『CAN DO NOW』を演奏する前のドラムソロの部分を使用したという(おそらく95年のASIAN TOUR IN TAIPEIであろう)。僕自身もリアルタイムで見たが、言葉に表せないくらいの感動を覚えた。また、ASKAは今回のツアーを孝三氏の置き土産だと語っており、旅立った孝三氏への思いが今回のツアーの核となったのは間違いない。

今回、ASKA自身が選んだ1曲は『君が愛を語れ』

ソロでミリオンヒットとなった1991年3月6日発売のシングル『はじまりはいつも雨』のB面である。だが、今回流れたのは2018年に発売されたアルバム『SCENE Ⅱ』のリミックス版の音源だ。

この曲の製作背景には、戦争があった。1990年8月にクウェート侵攻が起こり、それが翌年の湾岸戦争へとつながる。この戦争が世界中に広がらないかと、当時の人々は不安で、先行きの見えない未来に無力感を覚えていた。そこでASKAさんは、このような状況の中で音楽を通じて平和を訴えられないか、音楽で人々を救えないかと考え、この曲を作ったのだろう。

僕はこの曲に初めて出会った当初は恋人とのラブソングだと捉えていたが、このような製作背景を考えるともっと深い意味がこめられているのかもしれない。『君が愛を語れ』の『君』は、恋人1人だけを指すのではなく、今、この曲を聴いている我々、ファンを表しているのではないだろうか。人々の争いは絶えずどこかで起こっていて、不安だらけの世の中だけど、せめて作品、音楽の世界では平和を分かち合おうぜと強く訴えているように感じる。

また、最後のサビの歌詞「愛が愛を語れ」にも注目したい。それまでの歌詞は「もしも僕が倒れたならば 君が愛を語れ」だったが、僕も君も倒れた場合は「愛が愛を語れ」と呼びかけてる。これは「愛」というものが永遠の存在であり、時間を超えて残り続けるものだということを表しているのだろう。しかし、愛は決して目ではっきりと見えるものではなく、僕たち人間は「愛とは何か?」について、時に他人と仲良くしたり、時に他人と喧嘩する経験を積み重ねながら考え続けている。「愛」は2文字の言葉で表されているが、実は言葉ではなかなか言い表せないぐらいとても複雑なものではないか。

この曲は、前述したように今月のチャリティーコンサートで歌われた。現在の世界情勢とも重なる部分があり、この曲の存在感はますます大きくなることであろう。


来月からはリクエスト特集。余談であるが、短編小説を書くかも。


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