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Mリーグ/3月5日/多井隆晴、驚愕の一打!恐るべきバランス感覚。

◯出場選手ほか

3月5日Mリーグ。

本日の対戦は、

渋谷ABEMAS 多井隆晴
TEAM RAIDEN/雷電 萩原聖人
EX風林火山 滝沢和典
KADOKAWAサクラナイツ 堀慎吾

の4人。

 残り試合もわずかで、熾烈なレギュラーシーズンボーダー争いが注目されているが、今日の注目は、ABEMASとサクラナイツの1位・2位争い。

 現在の両チームのポイント差は201.4ポイント。トップラス2回で逆転する位置まで来た。
 1か月前に独走のABEMASにここまで迫ってくるチームがいるとは、誰も想像していなかったであろう。
 いわんや、トップはABEMASで確定だから、ちょっとつまらないなと思っていた視聴者も数多くいたはずだ。

 レギュラーシーズンのド終盤で、ボーダー争いの他に、トップ争いという楽しみを与えてくれたのは、もちろん、

 サクラナイツの内川幸太郎選手と、本日出場の堀慎吾選手である。

 もちろん多井プロも、今日は負けるわけにはいかない。毎年本命と評されながらも、Mリーグファイナルステージを制したことがないABEMAS。本日のサクラナイツとの勝負に勝利し、再びチームを独走態勢へと導けるのか?

 最速最強の真価が問われる大一番。

◯実況、解説

 なお、本日の実況は小林美沙、ゲスト解説は杉浦勘介。

 杉浦勘介? 誰???

 と思った視聴者も多かったのではないだろうか。自分もその一人である。

 杉浦勘介さんは、プロ連盟に所属するA1リーガーである。(昇格したてらしい。)。画面で見た第一印象は、将棋強そう笑 見た目やしゃべった感じのインパクトはそれほど大きくはなく、なんか賢そうな人だなと思った。でも、勘介って名前はインパクトあって良いわ。

 ここ何回かは、ツッチーや渋川さんじゃなく、ゲスト解説陣が日替わりで呼ばれている。ここまでは、金太賢プロ、HIRO柴田プロ、醍醐大プロ、河野直也プロの4人が呼ばれていた。競技麻雀など、Mリーグ以外のプロ対局を、ほとんど見たことがない自分ですら知っている4人であった。

 しかし、今日の杉浦勘介プロは、本当に初めて聞くお名前。(A2からA1に昇格したばかリと、競技麻雀が好きな方の間では知名度はかなり高いのであろう。)

 試合結果は置いておいて、先に書いてしまうが、

 杉浦プロの解説は素晴らしい!!

 の一言に尽きる。
 日替わり解説陣5人の中においては、自分としては、圧倒的に良かった。ツッチーはさておき笑(エンタメ枠なので)、レギュラー解説の渋川さんと比べても遜色ないというか、初めてのMリーグ解説であれだけ適切に解説できることを考えれば、渋川さんを超えたと言っても良いかもしれない。

 正直、Mリーグの試合そっちのけで、杉浦さんの解説に聞き入ってた。そして、杉浦プロの対局動画見たい!!と思ってしまった。

 どこが良かったか、いろいろ書きたいけれど、長くなるのでやめた。

◯東1局 3軒リーチ!!!

 早速、多井と堀がぶつかる。

 多井 カン2ピンリーチ

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 堀 カン8ピンリーチ(追っかけ)

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     どちらも、ドラの南がトイツで打点のあるリーチ。

 ここに割って入ったのが、ハギー。

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 堀の当たり牌、8ピンを重ねてのリーチ!

 これを多井から一発でマンガンをアガる。 ハギーやるじゃん。

◯東2局

 この半荘は結果から言うと、東パツでマンガンを振り込んだ多井が65000点オーバーのダントツトップになり、「多井さんさすが!!」ってなるのだが、

 実は、この東2局のある一打に、多井プロのすごさが凝縮されていた!!

 それは6巡目のこの手牌↓

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 解説の杉浦さん「これ、堀さんがピンズ高いので7ピン行きますかね〜」 

 「もしくは、8万、6万と打っていくか」

 限られた時間の中で、ちゃんと理由を説明して第一候補の7ピン切りと第二候補の8万、6万落としを説明していく勘介プロ。恐ろしく頭が良さそう。

 堀は、5巡目に自風の西をポンしてホンイツ気配。場に2枚切れの白を切ったが、ピンズはまだ溢れていない。

 堀は西家、多井は北家。多井が7ピンを切ったとしても、堀はチーすることは出来ない。

 東2局とは言え、16000点持ちのラス目。そして、まだ6巡目。普通なら、打点を上げるために赤5ソーを使い切りたいところ。

 しかし、最速最強の多井隆晴が掴んだ牌は、、、

 なんと、、、赤5ソー!!😱

 まじか!? 一瞬8万の近くに手を置いたから、8万、6万落としでゆっくり手を作るのかと思ったけど、まさかの赤5ソー切り。確かに場に4ソーは2枚切れだったけど、カン7万も1枚切れだよ。

◯赤5ソーを切った意図

 「守備意識」 >    「アガる」・「打点」

 これに尽きると思う。

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 パッと見良さそうに見えるが、赤5ソーにくっつかなければ、最悪リーのみやメンピンリーチにしかならない。また赤5ソーを使えたとしても、リーチ赤の2600やメンピン赤の3900止まりもあり得る手。

 それに対して、自風の西をポンした堀は、ホンイツ含みでドラの発があれば満貫、跳満がありえる。

 もちろん、親のハギーや南家のタッキーへの警戒もあるのだろう。

 全方向への危険度を考えて、赤5ソーを先に切った。

◯7ピンよりも赤5ソーを先に切った意図

 一つには、他の三者に対して最も危険である赤5ソーを先に切ったということもあるだろう。

 それでもまだ6巡目なので、7ピン、赤5ソーの順で切って、1巡だけ赤5ソーへのくっつきを期待しても良さそうなものである。

 もう一つは、自風の西をポンしている堀への警戒度を高めていたことが大きい。

 ここで堀の捨て牌を見てみると、

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 マンズはバラバラと切られているので、手の内にはほぼ持っていないと考えられる。

 ピンズは1枚も切っていないので、もちろんピンズを多く持っているだろう。

 さて、ソーズはどうか。4ソーが2枚切られてはいるが、58ソーや69ソー待ちなどソーズの上の方の待ちが残っている可能性はある。

 これが多井が7ピンではなく、赤5ソーから切った理由である。

 どういうことかと言うと、堀の手牌に次のような形がある危険性を想定していた。

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 ドラの發がトイツかどうかはさておき、7ピンポンテンからの58ソー待ちのパターンである。

 確率的にはほとんどないことかも知れないが、このような思考をしたのではないかと、この赤5ソー切りを見て考えた。

 ちなみにこの時点での堀の手牌は、

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 この形。

 まさに多井が想定したであろう形に近い。

 恐るべき多井隆晴。あそこで、赤5ソーを切れる選手はMリーガーでも多井隆晴ただ一人であろう。

 もちろん、この赤5ソー切りの意図は、状況から推測したものに過ぎないが、赤5ソーと7ピンの切り順は、多井の中では明確な理由があるはずだ。1打1打に明確な思考を巡らせているのが、最速最強の麻雀プロたる所以である。

 この局は、結果的には多井がカン7万を引き入れてリーチ。メンタンピンツモ一盃口裏裏のハネマンに仕上げるのだが、これは単なる結果である。16000点持ちのラス目の6巡目で、赤5ソー切りを選択できることこそ、多井隆晴の凄さなのだ。

◯その後

 東2局以降は、全く危なげなく加点し、ご存知の通り、65000点オーバーのデカトップをたたきだした。お見事。

◯多井チェック① 人読み

 この対局を通して、多井プロを観察して気づいた点がいくつかあった。

 先程取り上げた東2局、実は7巡目にタッキーの切ったラス牌の白に堀が一瞬反応してしまう。そして、それを見逃さない多井隆晴。動画で見るとその様子がよくわかり面白い。この瞬間に、堀がドラの發を持っていることを、多井は確信したであろう。

 多井がよく言っている人読みというほどではないが、卓上から読み取れる情報を常に収集しているのがよくわかった。

◯多井チェック② 牌の向き

 これも多井がよく言っていることだが、配信対局に出る麻雀プロたるもの、牌の上下を揃えて視聴者に不快感を与えないようにすべき、ということを実践していた。

 チーやポンをしたときに、牌の向きを直すしぐさが2回あった。

 普段言っていることを、この大一番でも普通にやってのけるところが意識の高さを感じさせる。

◯多井チェック③ 

 これは、対局後の勝利者インタビューの時のことだが、マツカヨが、期待に応えて東2局の赤5ソー切りの理由を聞いてくれたのだが、多井は何だかんだと別の話題にすり替えて、質問に答えてくれなかった。

 自分の思考についてはあまり語らないところが、多井さんっぽい。他のMリーガーに思考をばらしたくないといったところか。

 今まで多井プロの対局ってあまり見たことなかったんだけど、じっくり見ると面白いな。

 おしまい。



 

 


 

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