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子どもを伸ばす環境づくり~誌上講演~

この記事は,令和4年6月21日,
佐渡市立さわた幼稚園にて行った,
保護者の方を対象とした講演を誌上再現したものです。

皆さんこんにちは。
今年度も,お招きいただき
ありがとうございます。

今年度,第1回目のお話は,

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「子どもを伸ばす環境作り」というタイトルで,
先々に向けた内容になっています。

スライド2

もちろん,昨年度お話しさせていただいた
「愛着形成」が,なんといっても大切なのです。

そこは子どもの心の土台,
何かを成し遂げるための
精神的な土台として一番必要です。

今日はその土台の上に,
どんな家を建てたらよいのか
というお話をしていきます。

スライド3

そう遠くない未来,
おそらく私たちが生きている間に,
AIやロボットが,今よりも社会のインフラとして定着し,
人間の代わりに仕事をしてくれる時代が
刻々と近づいています。

現在でも,すでに人間がやっていた仕事を
AIや機械が行っている部分が結構ありますよね。

佐渡では,身近なところですと,
TSUTAYAの無人レジなんて,
もう当たり前になっていますね。

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子どもたちが大人になったとき,
果たして彼らに仕事はあるのでしょうか?
子どもたちがなりたい職業,
人気ナンバーワンはYouTuberですが,
YouTubeそのものも
将来的にはなくなると言われています。

人間にしかできない仕事,
機械ではできない仕事,
それができる人が,
将来の社会で仕事を続けられる,
と言われています。

スライド5

現在,就職したら定年まで
同じ職場・同じ職種で働ける人が
実は意外に少ないと言われています。

皆さんのご家族でも,
転職をしたり,全く新しい仕事をされている方も
いらっしゃるのではないでしょうか。

どこに行っても,
それなりに仕事ができる人は,
この図の「ポータブルスキル」
というものが高い人です。

専門的な知識や技術があれば
それに越したことはありませんが,
人間がやる仕事,
人間と一緒にやる仕事が
ほとんどである場合,
仕事の進め方と
人間関係の作り方の
2つのスキル・力が求められるのです。

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これを子どもたちに当てはめると,
このようになるでしょう。

いかにして自分なりに勉強を進めて
学習内容を身に付けていくか。
学校や学校の外のお友達と仲良く付き合っていけるか。

この力がそれなりにあれば,
学校生活は楽しく過ごせるのではないでしょうか。

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年長のお子さん達は,
あと数ヶ月で小学校入学になります。

小学校に入ると,
いわゆる「お勉強」が始まります。

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親御さんとしては,
期待も不安も
様々あるだろうと思います。

何か習い事をさせた方がよいのか?
とも思われるかと思います。

それもいい。
それもいいと思います。

ただ,その前に,
学ぶための基礎となる力が育っていると
なおよいと思います。

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小学校入学の前にできているといいな
という力は大きく分けて2つあります。

アカデミックスキルといって,
先程の所でお示しした通り,
勉強のやり方です。

もう一つはソーシャルスキル。
これが友達とうまく付き合っていく力です。

「人の振り見て,我が振り直せ」
という言葉がありますが,
周りのお友達の様子を見て,
今,自分がやるべきことを判断し,
同じようにできる力はとても大切です。

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これは年長さん,
そしてその子たちが小学校1年生の時点,
同じ子どもたちを調査した結果から
わかったことです。

満5歳の時点で,
人の動きを真似する力
「動作模倣」と言いますが,
それが小学校1年生での
勉強する力や,友達とうまくやっていく社会性,
気持ちの面=情緒にも
大きく関係しているのです。

真似ができる子は,
小学校に行ってから
勉強,運動,友達付き合いなどが
うまくいく。

逆に,真似が苦手な子は,
学校で苦戦しがちです。

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また,同じ調査の中で,
話を聞いて理解する力,
自分の思いを話すことができる力は,
学力に大きく関わっていることも
わかりました。

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子どもの発達には個人差があります。
ですから,今からいろいろと
お示しすることは,
あくまでも平均値,
一般的な基準としてお聞きください。

例えば,文字を読む力は,
わざわざ教えなくとも興味をもち始め,
年長さんの時点で音読することが
できようになる子が多いのです。

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今,お子さんたちは,
文字に関してどれくらいのことが
できるでしょうか?

さりげなく,
しりとり遊びや,
文字を逆さにして読むなどの
遊びをしてみてください。

もうすぐ小学校だから
ドリルをやるよ。
塾に行くよ。
ではなく,
日常生活の中で,
さりげなく文字を使って遊ぶことが
学びの基礎になります。

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同じように,
小学校で算数を勉強するときに,
幼稚園の時点で
既にお子さんたちがわかっている,
できていることが
数に関してもたくさんあるはずです。

これもあくまで個人差がありますが,
数の力については,
これぐらいのことができるという
目安があります。

「5までの概念」というのは,
例えば「5個ちょうだい」と言われたら,
パッと見て5個集められるということです。

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ここまで,
いろいろと焦らせてしまうような
話をして本当にすみません。

では,ご家庭では
子どもたちの基礎的な力を伸ばすために,
どんなことをしたらよいのでしょうか?

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私がまずお勧めするのはお手伝いです。
「なんだそんなことか」と
思われるかもしれませんが,

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例えば食事の準備や片付け等のお手伝いを
その子ができるレベルでやってもらう。

お手伝いを通して
このような学習に関わる
大事な力をつける練習が,
いろいろとできるのです。

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「いや先生,手伝いの前に,
うちの子は自分のことも
なかなかできないんですよ」
という場合もあるかもしれませんね。

自分で自分の身の回りのことができることを
身辺自立といいます。

実は,
この力も小学校1年生の学力に
関係してきます。

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お子さんは,
すでに様々なことが
できるとは思いますが,
お子さんができないことや苦手なことは,
まずはお手伝いしてあげて,
それを徐々に徐々に
減らしていく方法がお勧めです。

時間がないときなどは,
大人がパッとやってあげてしまいがちですが,
子ども自身が,
自分でやれる時間を
確保する余裕があるといいですね。

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そう,私たち大人の関わり方が,
子どもたちを大きく伸ばす環境に
なっているんですね。

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これは新潟県出身の
山本五十六さんの名言です。

これが子どもたちが
何かを身に付けるときの大原則です。

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小学校に入ったときに,
子どもたちは一日授業を受け,
毎日宿題も持ってくるでしょう。

勉強が好きな子もいれば,
苦手な子もいます。

勉強への意欲を高め,
それが身に付くためには,
「学んだことが役立っている」
という実感が必要です。

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これは勉強の方法によって,
どれだけ記憶が定着しているかを
表している図です。

話を聞いただけでは,
丸一日経つと5%しか覚えていません。

今,皆さんは私の話を
スライドを見ながら
聞いていただいているので,
明日の今頃には20%は
覚えているということになります。

一番記憶に残るのは,
自分が学んだことを
すぐに人に教えることです。

今日はこんなことがあった。
こんな話を聞いた。
こんな本を読んだ。

それをなるべく早く,
誰かに教えてあげると,
学んだことをは80%も定着します。

スライド24

例えば,お子さんが,
音読の宿題を持ってくるとします。

そのときに,
しぶしぶ音読をやらされるのではなく,
「今日勉強してきたことをママに僕が教えてあげる」
という気持ちで音読できれば,
意欲はかなり変わってくるのではないでしょうか。

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昨年度,子どもへのほめ方
というお話をさせていただきました。

たくさんほめていただいていると思います。

もし,お子さんに好きなこと・得意なことがあったとき,
例えば「サッカーがうまいね」と,
ほめるのももちろんよいのですが,
将来,誰しもがサッカー選手になって,
それで食べていけるわけではありません。
それはほんの一握りです。

ですが,お子さんが
「なぜサッカーが上手なのか」
というところをよく見ていくと,

相手のことを考える力がある,
周りをよく見ている,
状況判断がうまい,
などの,
どんな仕事についても
生かせる力が見えてくるかもしれません。

そこは本人にはわからないところなのです。

そこを気づかせてあげる,励ましてあげる。
そのことが,子どもたち自身の
強みを知って生かすことにつながります。

スライド26

絵描きで身を立てる人も
ほんの一握りです。

ですが,デザインや色彩のセンスを生かして
できる仕事はたくさんありますよね。

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子どもに「大人っていいよ」と,
私たちは胸を張って言えるでしょうか?

スライド28

子どもたちが「早く大人になりたい」
と思えるような,
親御さん達が,
自分の人生を生き生きと,
楽しく過ごしている姿を見せることが,
何よりの教育なのかもしれません。

スライド29

子育ては,やることがたくさんです。

子育てに関する考え方も
人や国よって様々です。

やってみなければわからない。
なかなか,その結果は見えてきません。

効率よく子どもを育てることなんてできません。

ひたすら回り道をしながらでも,
気がついたら
子どもたちは大人に成長していた
ということではないでしょうか。

スライド30

今日の話はこれで終わりです。

この後は短い時間ですが,
皆さんのご質問にお答えしたいと思います。

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実は,昨年度の終わりに
いただいていた感想の中に,
私へのご質問がありましたので,
まず,そちらにお答えしたいと思います。

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登園しぶりをするお子さんについて。

今は,登園しぶりも
なくなっているのかもしれませんが,
お答えしていきます。

登園しぶりには様々な原因があります。

幼稚園の活動がつらい,
おうちにずっといたい,
そして本人の中の発達や特性の問題もあります。

ですので,まずはどうして行きたくないのだろう?
ということを,先生方や親御さん達で
考えることが必要です。

原因がわかってきたら,
それを完全に取り除けないことも
たくさんありますが,
環境を変えていく工夫を
していくことが大事です。

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次です。
愛情を確かめるために
「パパ嫌い」と突き放すようなことを
言うお子さんについて。

パパにしてみれば悲しいですよね。

例えばなのですが,
このような返し方はどうでしょうか?

「パパ嫌い」と言われたら,
まずはパパの気持ちを伝えます。
「嫌いと言われてもパパは大好きだよ」と。

そして「嫌いと言うなんてダメでしょ!」ではなくて,
Iメッセージと言って,
パパを主語にして,気持ちをお子さんに伝える。

そしたら,少しお子さんが考えられるように,
悲しそうにしながら
距離を取るというのでどうでしょうか?

その場では「ごめんなさい」が
言えないかもしれません。

ですが,なんとなくお子さんも
「ひどいことを言ってしまったな」
という気持ちが残り,
その後の言動が変わってくると思います。

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次々とお菓子を欲しがるお子さんについて。

これは,決まった量を食べたら,
キッパリおしまいにした方がよいです。

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特に砂糖の入っているお菓子は,
脳内に快楽ホルモンを出します。

麻薬と同じ効果です。

自分の意思ではなかなか止められません。

私もこの「徳用しっとりチョコ」を食べ始めると,
自分の意思では止められないことがありますよ。

スライド35

砂糖依存になってしまうと,
体内に砂糖が足りなくなったときに,
不安感に襲われることがあります。

まさに麻薬と同じです。

発育のためには,タンパク質が多く,
よく噛んで満腹感が得られるお菓子がお勧めです。

スライド36

少し値段はかかりますが
タンパク質の入ったお菓子も売られていますよね。

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または,お菓子が食べたいという欲求に応えて
一緒に調理をしてみるのもよいかと思います。

お手伝いのところでも触れましたが,
クッキングは知的発達に非常に効果があります。

様々な段取りを考え,覚え,実行していく。

これはドリルよりもよい勉強になりますよ。

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ではこれから参加者の皆さんからの
ご質問にお答えしていきたいと思います。


昨年度の内容はこちらです。


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