物産展でバイトした話3(場内整理編)
今回は物産展バイトの「場内整理編」についてです。
まず場内整理がどんなお仕事かというと、お客さんに案内したり、チラシやパンフレットを渡したり、「最後尾はこちらです」という看板を持って立ったりなど、人の移動をスムーズにする業務となります。
分かりやすい例としては、ライブコンサートでの席の案内係が挙げられます。
これだけ聞くと「立ってるだけだし楽そう」「暇になったりするんじゃない?」と簡単そうに思う人もいるでしょう。
実際私も場内整理を担当する前はそこまで難しくないかと思っていましたし、時々目にする場内整理担当の人を見るとフロアの片隅でボーっと立っていたので、心底羨ましく感じたものです。
ところが実際やってみると思った以上に大変な部分もありました。
では一体、場内整理が具体的にどんなお仕事なのか、何が大変だったのかについて見ていきましょう。
・場内整理をしたきっかけ
私が場内整理を担当した日は、もともとは昆布屋の販売員として働くシフトでした。
それが数日前、人事部から「昆布屋から場内整理に変更できませんか?」と依頼があったので返事して場内整理へ変更、という流れです。
ちなみにこの日は私の最終出勤日であり、従って場内整理を1日しか体験していません。さらに日曜日ということも重なり、多くのお客さんが訪れました。
この時点で私は「日曜で場内整理の人手が足りんのんやな」ということは察しが付きながらも、場内整理が具体的にどんなことをしているのか全く分かりませんでした。
そして出勤日当日、自分は一体何をすれば良いのか、誰の指示で動けば良いのか、分からないことだらけで不安で仕方ありませんでした。
だって人間、どんな楽な仕事でも何をするのか分からないと「自分はどうすれば良いのか」って心配になりません?
当日すぐ指示役の人が来て「あなたはこれから~してください。私がそばにいますので、分からないことがあればすぐに聞きに来てください」って感じですぐ伝えてくれれば良いですが、ここは物産展という社員も従業員も皆自分のことで手一杯な殺伐とした現場です。
そんな場所で誰かが助けてくれるわけでもなく、かといって社員に聞きに行きたくても、話しかけづらいというか、明らかに話かけてはいけない状況ということもあります。
つまり私ははじめて担当する業務で何をすれば分からない中、指示役からもしばらく放置プレイを食らうという状況に置かれたのです。
実際私は出勤して社員に何をすれば良いか聞きにいきましたが、何やら深刻な会話をしており、聞くに聞けない状況でした。かといって私に何の指示もしないはずもないだろうと思ってしばらく待っていましたが、なかなか会話が終わりそうにありません。
あの時間は辛かった・・・
周りはみんな忙しく動き回っている中、自分だけ何もできずただ立ち尽くして指示を待つしかない状況は・・・
つまり何が大変って、自分が何して良いか分からないまま指示がもらえず、ただ時を過ごさなくてはならないシチュエーションがあったことです。(なんか場内整理と関係ないな・・・)
それからしばらく経った後、ようやく社員が私の元に来て指示を伝えてくれました。
ようやく場内整理の仕事がはじまります。
・場内整理の業務内容
9:45~18:00というシフトで私がした主な業務は「行列の整理」でした。
物産展には人気店もいくつかあり、そういう店にはいつも長蛇の列が出来ています。中でもスイートポテトを販売しているお店は平日でも常時20人くらいの列があり、これが休日ともなるとその数はさらに増え続けます。
私の役目はその列を崩さず、なおかつスムーズに人が移動できるよう通路を整えることでした。
具体的にはポールとチェーンで動線を作ってお客さんをその中に誘導し、列は1列になるようお客さんにお願いしつつ、前が空いたら速やかに後ろの人に進むよう誘導します。
簡単な図で説明すると、下記のような感じです。
スイートポテトは物産展で最も人気のあるお店でいつも長蛇の列があり、それを私と最後尾の看板を持つ人との2人態勢で整理していました。また、店の列はスイートポテトの背後に沿って作られていますが、途中からその背後にあるレストランへと列が飛ぶため、そのまま列を作ると列が通路を塞いでしまいます。
そこでスイートポテト側の列と、背後のレストラン側の列を分けて、お客さんが列の間をスムーズに移動できるよう誘導するのが私の役目でした。
基本的には前の列が進んだら後ろの列の人に「前が空きましたのでどうぞお進みください」と声をかけるだけでしたが、時々スイートポテト側の列をそのまま最後尾と勘違いして入ってしまうお客さんもいたため、声をかけてレストラン側の列へと誘導することもありました。
これだけなら「なんだ、意外と楽じゃん」と思われるかも知れませんが、これがやってみると意外とキツイ。まず何がキツイって通路には大勢のお客さんが行き来していて、いつスイートポテトの列に加わるか分からないので常に目を光らせなければならないことです。
特にお店の背後には仕切り越しにスイートポテトを作る工程が見えるばかりか、焼き上がったスイートポテトが大量に並んだ光景やその匂いまで漂ってきます。
それはもう良い香りで、お店の裏側は並ぶお客さんと通路を歩くお客さんに加え、スイートポテトを作る光景や香りを楽しむために近づいてくるお客さんでごった返しており、注意深く列を見ていないと誰が列に並んでいるか分からなくなるのです。
それだけならまだしも、中には「なにこの行列→ちょっと見てみよう→あら良い香り→買う」にシフトする人もいて、そういう人は大体スイートポテト側の列を最後尾だと勘違いします。これを放っておけばレストラン側の列の人が怒ってしまうので、なおさら列や通路を行き交う人には注意しなければならないのです。
そしてもう1つ大変なことといえば、時間が分からないことでした。
実はこのフロアには時計がなく、時計を見て時刻を判断することもできず、時間は自分の持っている時計で確認する必要があります。しかし私は時計を持っておらず「一体今何時なんだ」と気になってばかりいました。
ここで多くの人は「スマホ見て判断できるでしょ」と思うかも知れません。
確かにスマホで時間を見ることはできましたが、お客さんによっては従業員がスマホを少し見るだけでも「サボってるな」と思われかねません。
こんなご時世ですから、すぐ傍に多くのお客さんがいる状況で私は、ポケットからスマホを出さず時間だけ確認することも躊躇したのです。
もしも私が時間を確認しているのを厄介なお客さんが「従業員がスマホをポケット越しに見ていた」なんて言おうものなら面倒が増えます。そんな嫌なことを増やすくらいなら、時間が分からない方がまだマシだと思っていました。
ですので、時計を持っているだけでもかなりマシになると思います。
そうして私は営業開始の10時~交代が来る12時過ぎまでずっとスイートポテトのお店で行列整理をせっせと行っていました。
交代後は列の間の人でなく、列の最後尾に立たされました。
今度は「最後尾はこちらです」の看板を持つ人の役です。
こちらもただ看板を持てば良いわけではなく、スイートポテトの列に並ぶお客さんを見極め、スイートポテトを買いたい人なら自分の前に立つよう誘導し、そうでない場合はそのまま通ってもらうという対応をしました。
楽といえば楽ですが、何しろ人が多く、誰が何を求めているか判断しながら見ていないと列に割り込みされるリスクもあり、常に気を張っておかなくてはなりません。何よりこの時点で列はさらに拡大され、レストランの壁を曲がりその先の通路まで拡大していました。列に並ぶ人は50~60人くらいまで増えていて、もはや何のお店の列が分からないほどでした。図にすると、下記のような感じです。
ちなみにトイレの先は10mくらいで行き止まりになっていて、もし列がこの先まで埋まるとこれ以上はもう作れないという状況でした。幸い、列はあと数メートルで行き止まりというところで止まりましたので、ここは肝が冷えましたね。あと、フロア奥にある列の最後尾まで私が行ってしまうと、フロアにいるお客さんはスイートポテトの列の最後尾が分からなくなってしまうと思い、フロアの端っこで最後尾の看板を持ち、やってきたお客さんに「最後尾はこの奥です」という感じで誘導しました。
こんな状況もさすがに15時くらいになると段々とお客さんが引いてきたおかげで列に並ぶ人も少なくなってきました。そして16時には最後尾の看板を持つ必要もなくなるほど列も少なくなりました。
この時点で私は社員から特に新しい指示こそ受けなかったですが、ただ最後尾の看板をずっと持っていても変だと思い、とりあえずフロア全体を見回ることにしました。
すると通路が埋まって人が進みづらくなっている箇所がいくつかあったので、「すみません!道の真ん中は空けていただくと助かります!」という感じでお客さんに声をかけたり、人だかりができているお店はポールとチェーンを使って動線を作って誘導したりしました。
そんなことをしていると同じ場内整理の人が何やらお店の商品棚の下を開けて中から容器を取り出しています。一体何をしているのか聞くと「水抜きをしているんだよ。これをしないと水漏れの原因になる」と言われました。
よく見ると生モノを扱う商品棚の下には取り出し口が付いていて、そこを開けると長さ50cmくらいの容器が出てきて定期的に水を捨てる必要があります。
特にすることもなかったので、その後は水抜きをしつつ、フロアを回り混雑している場所がないか見て回っていました。
ラスト2時間くらいはずっとこの調子だったので、場内整理はピーク時こそ大変だと思いますが、人が少なくなるとグッと楽になる業務だと思います。
以上が場内整理の主な業務です。
まとめると「行列の整理」、「水抜き」の2つが主ですが、ほかにも「チラシ配り」「案内」といった業務もありました。(私はチラシ配りませんでしたが・・・)
終わりに
以上が私の経験した物産展バイトの全てです。
応募時はレジを打つ「販売員」と商品を売り場に届ける「搬入」の2つがあり、私は搬入を希望しましたが、商品の補充や接客を含む「販売員」の仕事も任されました。
また、シフトの途中で新しいお店の販売員として働いたり、場内整理を頼まれたりしました。このように見ると、実際問題スタッフの人数は恐らく十分に補充されているとはいえず、やはり人手不足に陥っていると思われます。
つまり物産展バイトは100%希望した通りの仕事ができるわけではなく、状況に応じてほかにも様々な業務を請け負う可能性があるため、その点だけ念頭に入れておけば、後で急な変更を求められても、慌てることが少なくて済むでしょう。
実際私は休憩中、従業員のおばちゃんに「希望した仕事と違う仕事をやらされてるんですけど」と言うと、さも当然という顔をして「ああ、それ百貨店あるあるやで」と返事されました。
希望した仕事内容と違うという話は何度か耳にしたことはありますが、こうしてわが身に起きてみると、やはり困惑してしまうものですね。
ただ、それをマイナスに受け止めるのではなく、それも一つの経験と前向きに捉えるしなやかな気持ちも大切かな感じました。とはいえ、事前にレジは嫌ですと言っておきながら、いざ現場に立つとレジをさせられそうになるというケースはさすがに業務の範囲を超えた違法行為だと思うので、度が過ぎる依頼は断る勇気も必要です。
最後に、この記事を鵜呑みにして働けば万事OKというわけでもありません。
私のいた百貨店では単に上記の内容が職場ルールというだけで、違う百貨店やフロアだと、当然違うルールも存在するでしょう。
上記の内容はあくまでも参考程度に留めておき、実際の現場はキチンと社員の指示や社内ルールを守った上で働いてくださいね。
この記事が少しでも物産展バイトに役立っていただければ、心からの喜びでございます。