カレー色の山月記
毎年夏になると各出版社が販促キャンペーンをする。景品がもらえたり、表紙やカバーが変わったり。
毎年この時期はつい本屋をのぞいて見てしまう。地味に新潮社の、カバーが一色になるやつが好きである。今年はどの作品がピックアップされてるかなと思ったらなんと山月記があるではないか。
山月記は学校で習った小説で一番好きな作品だ。自分はああいう格調高い漢文調の書きぶりに弱いのでまんまとハマった。もちろん中身もめちゃくちゃ面白い。
というわけで今年はキミに決めた!とレジに持っていき、しっかりおまけのしおりまでもらった。そして鞄の中に詰め込んだ。
しばらくして気づいた。「お昼に買ったパン屋さんのチーズカレーナン、入れっぱだ」
まあいいや、と思いながら家に帰るとしっかり山月記はカレーの香りになっていた。これもまた運命か、山月記は黄色一色だったのだ。まるでカレーの色までも移ったかのように。
「その匂いは我が友李徴子ではないか」
いいえ、人違いです。
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