黄金のレガシーには何が足りなかったのか
既に黄金のレガシーに関する感想は出尽くした感があるけれど、自分なりに言語化しておかないとずっとモヤモヤしたままなので、感じたことを書いてみる。ネガです。
フォーラムを眺めていても賛否で言えば否の部分が大きく、多かれ少なかれ「スクエニどうしちゃったの?」という困惑が見て取れます。
今回の何がダメだったのか、ひととおり感想を見ながら感じたのは、ただただ「雑だった」ということでした。
「黄金を漆黒暁月と比べると可哀想」みたいな話をよくされますが、シナリオのエモさの有無ではなく新生蒼天紅蓮でも見なかった全体の詰めの甘さ・完成度の低さが問題で、これは過去11年間で一度も見なかった異常事態だと感じています。
①物語の構成が雑
多くの物語は、「何らかの問題が起こり、なんやかんやあって解決する」という「ねじれの出現→解消」というパターンに落とし込まれます(もちろん例外もあります)。この最初のねじれの提示が物語を魅力的にするのに絶対必要で、プレイヤーにまず大きな絶望を与えないと、物語を読み進める原動力にはなりえません。黄金のレガシーはあまりにもそのねじれ(=絶望、緊迫感)が足りていなかったように感じました。肯定派ですら、「この物語を急いで終わらそうという気にはならなかった」と語っていて、先が気になる物語の構成にはなっていなかったのは問題でした。
→じゃあ、どうすればよかったのか
(後出しジャンケンになるし、これ以外にも無限に正解はあると思うのであくまで一個人の妄言と思って読んでください)
トライヨラに着いた直後にヴァリガルマンダが復活して眷属たちが住人達を蹂躙するなど、まずはショッキングな出来事で絶望感を煽る描写が必要だったと思います。目の前で惨劇が起こればヒカセンが関わる理由になるし、呑気な王女様のお守り感はなくなります。もしくは、ゾラージャの野望が目で見て明確に危険とわかる内容(大軍を率いているなど)であれば、まだ緊迫感を煽れたように思います。
言葉だけで「外征する」と言っていても、シャーレアンの知識をやっと取り入れた程度の技術しか持たない国の王子の野心なんて、宇宙レベルの終末を乗り越えたエオルゼア諸国にとっては大きな脅威になりえないはずです。それなのに「兄貴を止めないと大変なことになる!」「アッハイ…」と、ウクラマトの言うがままにヒカセンは力を貸してしまっていました。関わる動機があまりにも薄弱。しかも散々命張った後でウクラマトからもらったのは、アルパカ一匹だけ。グルージャジャがエスティニアンに与えた手合わせの報酬の方がマシまであると思います。
絶望と、早くどうにかしないと大変なことになってしまうという緊迫感。それが一番描かれたのはトライヨラ襲撃シーンでしたが、襲撃して住人を虐殺したと思ったら上空でのんびり待つという実に呑気なムーブをかましていて、どういうテンションで進めたらいいのかわからず困惑しました。
②キャラクターの意外性がなくて雑
ゾラージャは見たまんまの悪役だったし、コーナは見たまんまの味方でシスコンだったし、バクージャジャは見たまんまの憎まれ役でした。スフェーンはほんのり複雑さを持ち合わせていたけど、それも直前のパッチで散々見せられた「無垢な少女がラスボスでした」をそのまま踏襲していたので、やっぱり見たまんまのラスボスでした。
→じゃあ、どうすればよかったのか
ゾラージャが民衆から支持を得ているという話と、彼の無口な陰キャムーブがあまりにも乖離していて違和感しかなかったので、「いい兄」「完全無欠の王位継承者」である姿を見せてほしかった。それだったら継承の儀では強敵になりうるし、ラマチが勝てるわけがないという絶望感にも繋がったと思います。最初から悪役にしか見えなかったので、明らかに先が読めてしまっていました。表面的にでもコーナやラマチとも友好的であった方が、裏切ったときのショックは大きかったでしょうに。
黄金はこういう、プレイヤーを悪い意味で裏切らない展開しかありませんでした。既定路線しかなく、物語の振り幅が狭い。
コーナもコーナで、デレるのが早すぎたと思います。危険な場所に行かせたくないがゆえにラマチに憎まれ口を叩くフルシュノさんのようなキャラでもよかったのでは。敵か味方かわからないまま、物語に緊迫感を与えるキャラであってほしかった。
余談ですが、00年代くらいのアニメに出てきそうなシスコンキャラが弄りづらいのか、思ったよりコーナのファンアートは少ないです。彼の人気のピークは、キャラ表が発表された瞬間だったと個人的には思っています。
スフェーンはもっと早くに登場して、プレイヤーと一緒に行動させてもよかったんじゃないかなと。前半のペルペル族の村あたりからオーティスと一緒に同行して、蒼天のエスティニアン&イゼルのように旅をしながらプレイヤーと距離を近づけてほしかった。きっと今よりも愛着は湧いたでしょう。少なくとも、オーティスの死で泣けたんじゃないかな。黄金のオーティスの死は無駄死に以外の何物でもなくて、正直泣きどころがわかりませんでした。スフェーンの身体が入れ物だと知っているこっちからしたら茶番でしかなかったです。
バクージャジャは…まぁ、あのままでいいです。セノーテのシーンですべて許された感はある。ヴァリガルマンダの復活、食べ物を粗末にするシーンといった前半の悪行がノイズだなぁとは思ったけど。ゾ兄の悪行をなすりつけられる容疑者役とかだったら、より面白くなってたし既に多いファンもさらに増えた気がします。問題行動をする人物を愛されキャラにするには、「可哀想」が必要なので。
③キャラクターの一貫性がなくて雑
特にひどかったのがウクラマトでした。散々言われていますが。「知りてぇんだ!」と連呼する割には兄であるゾラージャのことすら知ろうとしないし、あの年まで住んでる自分の国のことすら全然知らない。それなのに、単身でエオルゼアに乗り込む行動力はある。船酔いするくせに。すべてが繋がらなさすぎて違和感しかなかったです。また、力のゾラージャ、知のコーナ、心のウクラマト、と棲み分けていると思っていたら、気がついたら謎のパワーアップを果たしバクージャジャを凌駕する力を得て武王と名乗っていたのも謎でした。そもそも荒事はヒカセン任せだったはずだし、それなのに「武」王名乗るの…? あと突然の「アンロスト・ワールド!」はキャラ崩壊も甚だしかったと思う。結局誰もそう呼んでないし。
暁のセリフも行動も暁月の頃に比べるとIQが一桁下がっており、何が起こってもぼっ立ちでウクラマトを賛美するだけのなろう系モブになっていました。おれたちが愛した暁はどこへ…。
→じゃあ、どうすればよかったのか
ウクラマトが幼女だった、箱入り娘だった、などの描写があったらまだ納得できたと思います。「この歳まで何してたんだコイツ」という印象は払拭できたのでは。謎のパワーアップに関しても、デュナミスという都合のいい概念があるんだからそれを使ってもよかっただろうし、ヒカセンに弟子入りするシーンなどがあったらまだマシだったと思う。黄金はこのようにユーザーの納得感を置いてけぼりにする場面が多かったです。
暁は…もう出さなくていいです、こんな描かれ方するくらいだったら。暁の面々は大好きなのでひたすら悲しいけど。フェイス要員くらいでよかったよ。
④「夏休み」も「暁を二分する抗争」も一切回収されず雑
夏休み要素、あった? 暁を二分する抗争、サンクレッドが岩落としたあれのこと言ってる? 今回は特にコピー詐欺が酷かったです。
あと、タコス食えると思ったら食えなかったり、エレンヴィルと鉄道旅行できると思ったらできなかったり、ロネークに乗れると思ったらできなかったり、期待させといてお出しされずにモヤモヤすることが多すぎてさすがにうんざりしました。
→じゃあ、どうすればよかったのか
トライヨラに着いて街を散策するタイミングで、バカンスのシーンなりミニゲームなり入れたらよかったのでは。タコス食ったり、海で海水浴したり、コテージを堪能したり、釣り勝負したり、ミニゲームでとにかく楽しませて、ユーザーにトライヨラを好きにさせる描写がほしかったです。なんならバクージャジャはここで初登場してミニゲームの敵役になってヘイトを稼いだり、ウリエンジェとサンクレッドもミニゲームの敵役で登場するなり、色々と盛り上げようはあったのでは。また、ウリサンに関してはIDのボスとして出すとか、そういうのが欲しかった。なんで知らないカマキリと戦ってんだよ。
⑤ぽっと出のキャラが感情移入する間もなく退場するパターンが多くて雑
スフェーンも感情移入できるほど会話をしなかったし(というかウクラマトとの交流がメインで蚊帳の外だったし)、リビング・メモリーにいたNPCたちと慌ただしく会話しては消すのを繰り返し、「感動RTA」なんて揶揄されていましたが、とにかく駆け足が過ぎました。
ナミーカのシーンは確かにほろりと来たけど、そもそも生きてるナミーカとそんなに交流していないので、想像で補完するしかなかったのがもったいなかった。
カフキワはロボの姿で登場だったけど、本当の姿を知っているのはエレンヴィルのみだったので、彼と一緒に驚くことができなかったのも置いてけぼり感がありました。あそこまで本来の姿を見せない必要があったかな。元の姿を知っていても問題なかったのでは。さらに言うと、あの宿場にいたのはイヤーテじゃなくてカフキワ本人でよかったんじゃないか。
黄金はこの例だけではなく、「ヒカセンは知らないけどNPCは知っている情報」が少なからずあり、「NPCの感情に沿って驚きや感動ポイントをお出しされる」傾向にありました。プレイヤーからしたら知らんがなです。
そしてクルルさんの両親の話。黄金で最も重要なパートだと思っていたので、あんなにあっさりした描写で終わったことにびっくりしました。というかクルルさんが両親と気まずくなっていたシーン、20年会ってない親と再会したらその20年分の情報交換で話題は尽きないだろうと思うのですが。何を話していいかわからなくなるのは、ひととおり重要事項を話し合って20年の溝を埋めて、改めて親子として関係を築こうとしてからでは、と思ってしまい、感情がついていかなかった。大事なことを話し始めたのはグ・ラハの奇行の後だったし。
あとノスタルジアとワヤッケの父親のアンブローズが実験体となってオリジェニクスのボスになって登場するのは、さすがに「わかる人だけわかればいい」じゃダメだと思いました。せっかくの設定なんだからちゃんと描いた方がいいし、描くならテスリーンみたいに生前に交流させるか、別の描き方をしないとこっちは何の感情も湧かないです。名前だけ聞いたことのある人が悲惨なことになっている、だけだと感情移入するにも限度があります。
→じゃあ、どうすればよかったのか
あの無意味な荒野のシーンを削ってでも、ナミーカやカフキワと一緒に過ごすシーンが必要だったと思います。エルピスでエメトセルクたちとお茶をしたシーンのように、カフキワの宿に招かれて食事をするなりしてナミーカが幼いウクラマトとエレンヴィルとどんな時間を過ごしたのか、彼ら彼女らにどんな絆があったのか、語ってほしかった。そもそもエレンヴィルとウクラマトの幼馴染設定ですら活かされているとは言い難かったので。また、その場にアンブローズを登場させるなどして接点を作れば、その後の展開もよりショッキングなものになったと思います。
クルルさんの両親に関しては、そもそも永久人としてあの場にいること自体が不自然だったので、手掛かりのみを残して次パッチでじっくり描いてもよかったと思います。さらに言うと黄金のレガシーをクリアした後に「次が気になる!」とはまったく思えなかったので、せめて大きな謎は残したままでもよかったのでは。
⑥伏線にもならない不要なカットシーンが多くて雑
冒頭の嵐のシーン、結構尺取ってたけど…あれ必要だった…?? その後で船員が出てくる様子もないし、あれ全カットでよかったよね? シャーローニ荒野の決闘シーンも、その前の同行シーン含めると結構な時間がかかったわりには中身がスカスカだったのでムービーにする必要はなかったのでは。あとライフルで決闘しているのが気になって仕方がなかったです。せっかく西部劇風のフィールドを作ったんだから、ちゃんとしたリボルバーを作ってくれてもよかったんですよ。
→じゃあ、どうすればよかったのか
全カット
⑦紅蓮漆黒暁月の劣化版焼き直しのようなシーンばかりで雑
みんなで協力して大きいものを作るシーン→漆黒で見た
オーバーテクノロジーなフィールド→漆黒で見た
無垢な幼女のラスボス→暁月で見た
特に在来線爆弾のシーンが本当にダメでした。乗客や住人の安否がわからず一刻も早く救助に行かなくてはいけない中で、あんなにみんなでニコニコ工作してるのはさすがに…。「漆黒で見たやつだ」となって白けてしまったし、あの音楽もすばらしいのに愛せない曲になってしまいました。
「黄金は新しいフィールドを探索するワクワク感がすばらしかった!」って言ってる人もいたけど、それすら紅蓮で既に経験済なんだよなぁ。
→じゃあ、どうすればよかったのか
削るか表現を変えるなりして工夫してほしかったです。漆黒暁月はセルフオマージュをするにはまだ早すぎるよ。
⑧これまで洪水のように仕込まれていたフレーバーテキストが極めて少なく、情報の補完もなくて雑
黄金の後に、サブキャラで過去パッチのクロニクルクエストをプレイしたら、その膨大な情報量に圧倒されました。クエストマークがついていないNPCのセリフひとつひとつに、世界観とリンクしつつキャラクターへの理解が深まるようなテキストが仕込まれている。今までどれほど贅沢なゲームをプレイさせてもらっていたのかを思い知ってしまったし、黄金のスカスカ感にも気づかされました。
シナリオ班の手が足りてない? 予算の配分先が変わった? 思わず開発環境への邪推をしたくなるくらい、これまで持っていた14のリッチさが失われていたことが残念でした。
→じゃあ、どうすればよかったのか
シナリオ班がんばって、としか言えないけれど、今回は特に無駄なシーンが多かったので、それらを減らしてでも情報の「深さ」を追及してほしかったです。
ところで同じタイミングでオグルのクエをやったのですが、「嫌いなものを描くことで個性をつける」「『ばあちゃんが言っていた』的な決め台詞を繰り返し使う」という点でキャラクターの作り方がウクラマトに酷似しており、同じライターさんの作だろうなと思ってしまいました。嫌いなものを描くキャラづけの手法は当人の好感度には繋がらないので、もうやらない方がいいんじゃないかな。尺を食う割にはあんまりプラスになってないよ。
おわりに
この他にも、ジョブ調整が明らかにミスっていたり、ロールクエに出てくる敵が大虐殺レベルのことをやらかしてもお仕置きが軽かったり、全体を通してチグハグなところが目立ち「ちゃんとチェックした??」と思うことばかりでした。新生からプレイして11年で初めて見る雑なアプデに「開発、大丈夫?」と心配してしまいました。全体を通して明らかに手と目が足りてないように見えて、ライターさん個人の話ではなく体制に問題があるのではと感じました。
7.3でキャラクターの掘り下げをやるという話が今日流れてきたけど、興味が持てないキャラクターのエピソードをどれだけ知ろうが、好感度なんて上がらないと思います。もはやトラル大陸で知りたいことなんて何一つないので。唯一彼女の好感度が上がるチャンスがあるとするなら、ウクラマトが闇堕ちするなり蛮神化するなりしてヒカセンの敵になり、討伐されることだけですよ。それくらいプレイヤーから嫌われたキャラになってしまった。プレイ中は元気な子だな、くらいにしか思っていなかったけど、もう顔を見るのも嫌です。
開発の側にもこの不評は届いていると思うし、既に危機感は伝わっていると思います。11年プレイした、人生で一番愛したゲームがこんなことになっているのは本当に悲しいので、どうにか持ち直してほしい。7.1と7.2は間に合わないんだろうけど、7.3以降からリカバリしてくれることを祈っています。それを信じて、まだしばらくは課金していこうと思います。