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補助金の留意点

新型コロナウィルスの影響で、経済産業省から中小零細事業者向けに数多くの金融支援や補助金支援策がでています。

私も職業柄、補助金に関する問い合わせを多く受けます。経産省のサイトやミラサポやJ-net21などの情報サイトを見れば、今どんな補助金がでているかはわかると思いますが、補助金助成金の相談を受ける中で、中小企業経営者が見落としがちなポイントをまとめておきたいと思います。

補助金は、返済の必要のない、国や地方公共団体、あるいは民間企業等から一定の条件で渡される資金のことを言いますが、ここでは主に税金で賄われる行政からの補助金について書きます。(コロナ関連で出ている持続化給付金等とは性質が異なります)

補助金申請の上で、
・コロナ関係なく、元々事業でやろうと思っていたことが補助対象
・ 会社のキーパーソンの時間を補助金申請に費やさず申請する余裕(リソース)がある
・コロナ関係なく潤沢なキャッシュがある

という前提のもとであれば、積極的に活用すれば良いと考えています。

逆にいうと、上記の前提条件が、経営者が気づいているかいないかにかかわらず満たされていないと、事業に様々な支障がおきて、歯車が狂うことあります。

補助金を初めて申請する経営者はこのポイントを抑えておらず、ただ国からお金が貰える、と考え、あとでコスパが悪い(かけた時間に対する対価のバランスが悪い)ことに後悔する方が一定数いらっしゃいます。

以下に、補助金申請において留意すべきポイントを書いておこうと思います。

1. 補助金対象の経費項目は、「元々」使おうと思っていた戦略上の経費か

私は「補助金のワナ」と呼んでいますが、補助金はただで貰えるもんでしょ?貰えるもんなら貰っておこう、という方が、必要ないものまで補助対象経費に無理に乗っけてしまうパターンです。
事業で使用する経費はすべて、事業を成長させたり、継続するために使われるものです。しかし、補助金をなるべく多くもらおうとして、必要とは思えないモノやサービスを無理に購入することがあります。補助対象経費といえども、戦略上必要かどうかよく検討した上で、申請するようにしましょう。理由は3つあります。

① 補助額が使用経費の3分の2など、満額でないことが多く、無駄なことに会社の資金を一部費やすことになる。

② 本来必要のない支出のために資金繰りを悪化させる

③ 不要な支出のために業者とのやりとりなど人員を割かなければいけない

すべての事業は投資、効果がありそうな対象に対して資金や人員などの資源を投じ、あとから果実を得るものです。しかし補助金は基本的に「消化するもの」と捉えられやすく、補助金をもらうこと、使い切ることが目的化しやすいです。これによって貴重な社員の時間や資金が失われることも見ています。ぜひご留意を。

2. 補助金申請や事業報告等を社内のキーパーソンがつとめていないか

1の③に関連するのですが、補助金は税金を使用することが多く、しっかりとした目的で申請され、かつ適切に使用されているかが厳格に管理されます。

そのため、申請書作成、申請用の書類準備に結構な時間をかけ、採択後も支出の証憑管理や事業の報告をしたりと、結構な量の事務作業が発生します。特に従業員数が10名以下のような中小零細事業者は、事業の全体像がわかる社長や右腕的な人が補助金申請をせざるを得ないことがあります。

この事務作業などをうまく社長を含めた社内の事業推進のカギとなる人「以外」に任せられるようなリソースがないと、補助金をもらう額とそれにかける時間価値が合わないということがザラです。

「こんなめんどくさくて大変だったら最初から外注しておけばよかった」「補助金に時間をかけず事業づくりに集中しておけばよかった」という声もよく聞こえます。

3. 補助金申請額を数倍上回るキャッシュがあるか、または数ヶ月以内に調達可能か

1の②に関連するものですが、補助金を初めて申請する多くの事業者さんが勘違いしていることのひとつに、補助金の入金タイミングがあります。

原則として補助金の入金は後払いです。補助金の申請をして、採択が通知され、そこから数ヶ月〜数年の事業実施期間があり、事業終了後1ヶ月程度以内に事業報告をして、受理されてから1ヶ月程度で入金になるイメージです。

その間に先に自己資金もしくは借入で支出を賄わなければなりません。しかも、ほとんどの場合100%補助されるわけではありません。一部持ち出しとなります。こ

れは補助金額が大きく、自社に資金調達能力(借入能力が低く)、しかも事業期間が長い場合は資金繰りに致命的な影響を与えます。

例えば事業期間が1年で、補助申請金額が1,200万円で、補助上限が3分の2の場合、事業開始後1年数ヶ月後に800万円が入金されるカタチになります。

もちろん補助事業に採択されれば、金融機関から借入はしやすくなるものの、基本的に申請額と有事の備えで3〜6ヶ月分の固定費をまかなえる現預金あるいは調達能力がある状態で申請することをおすすめしています。補助金で資金繰りが悪化して金策に時間を取られるのも、本末転倒です。

以上、補助金申請時のポイントを自分なりにまとめました。

補助金の制度がだめと言っているわけではなく、また上記はあくまで補助金制度の原則について書いたものなので、使い勝手の良い補助金もあると思います。

私自身も使えるものは使うという考えではありますが、誰がやるか、どれくらいの作業が発生しそうか、申請は外注できるのか、補助金が出る予定の経費は事業の成長に必要な支出かなど、その補助金の公募要領を見ればイメージが湧くこともありますし、補助金申請を支援している国が認めている経営革新等認定支援機関である税理士、会計事務所に聞いてみても良いかもしれません。
ぜひ有効な活用を!

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