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命が爆弾に変わった日

「今、爆弾抱えてる状態なのね」
病院の先生にそう言われ、
私、いつの間に爆弾を?と首を傾げる。

※ 子宮外妊娠・手術の話があります。
 苦手な方、トラウマがある方はお気をつけください。


子宮外妊娠になった話

GW中旬。
微熱・腰痛・食欲不振を感じ
妊娠検査薬を使ってみる。

【陽性】

ああ、新しい命だ。

震える手で検査薬を夫に見せる。
私たちも親になるのか。
ふわふわした気持ちで病院の予約をする。

予定日的にあの子やあの子と同じ学年かな?
色々相談していた職場の上司にはいつ報告しようかな。
仲良しの友人たちにはどう話そう。



通院日。
エコー検査をするも、
子宮内に見えるはずの胎嚢が確認できなかった。
ここで初めて、子宮外妊娠という言葉を耳にする。

本来は子宮で起こる着床が
別のところで起こってしまう。
この場合の妊娠継続は難しく、
自然排出を待つか、手術を行う必要がある。

全妊娠100%のうち1%の確率で起こるらしい。

とはいえ、そう確定するにはまだ早いようで、
また日を空けて来院するように告げられる。

微かな不安を感じつつも
「まあ大丈夫でしょ」と思っていた。



1週間後
婦人科での内診を終えた私は
大学病院への紹介状を握りしめていた。

子宮の中に見えるはずの命が、
見当たらないままだった。
意味がわからなかった。


大学病院へ転院

婦人科の先生が内診を終えた後、
その足で大学病院での検査を受けられるように手配してくれた。病院のはしごである。

大学病院で再びエコー検査と血液検査を行う。
担当の先生はこちらの不安に寄り添いつつ、
身体の中で起こっていることを説明してくれた。

  • HCG値(妊娠すると上昇するホルモン値)的にどこかで妊娠は起こってる

  • 子宮の中に見えるはずのものが見えない

  • 残念だけど子宮外妊娠の確率が高い

  • 週2回の通院を3週間続けて、その間に判断する

「仮に卵管に着床していていて、卵が育ってしまうと、卵管が破裂・大量出血し、母体に危険が生じる。分かりやすく言うと…今、爆弾を抱えてる状態なのね。言葉は悪いかもしれないけど、そのくらいの危険性がある」

命って、爆弾になることあるんだ。

大学病院での初めての診察を終えた後は、
不思議ともう諦めの感情になっていた。
私の身体のせいではないと分かっていたので、
自分を責める気持ちもなかった。

2週目の通院でMRI検査を行い、
卵管での子宮外妊娠が確定した。

この頃には少しお腹の痛みがあった。
微熱もあったのでぼーっとする時間が増えた。
鈍い痛みを感じる度に不安になった。

(爆発したらどうなってしまうんだ)

最悪、死ぬかもしれないという不安のせいか
手汗と足裏の汗がずっと止まらなかった。
今までの人生で一番強いストレスを感じていた。

夜寝ようと布団に入ると、
もし今夜破裂して、助けを求めることもできないくらい痛くなったらどうしよう。
不安で眠りの浅い日々が続いた。

トイレに入ると、
このままここで体調が悪くなったら大きい声で夫を呼べるだろうか?
日常生活の行動ひとつひとつに不安がつきまとう。

血流が良くなることは避けてと言われていたので、極力安静に過ごした。
大好きなお風呂もシャワーだけで済ませた。

本当に1日中ずっと、
"死ぬかもしれない" という恐怖を感じていた。

数日後の通院でHCG値の上昇を確認。
これ以上の数値上昇は危険と判断され、手術確定。

手術が怖いというよりも、
せっかくの妊娠が〜という気持ちよりも、
状態が分からない爆発物をお腹に抱えてる現状から解放される安心感の方が強かった。


手術をする

診察後、入院の手続きを行い病室に向かう。
個室にしていいよという夫の言葉に甘えた結果、
トイレ・シャワー、応接セットのついたとても豪華なお部屋に案内された。
一番高いお部屋や!!!!!!

病室の手配に時間がかかり手術まで1時間ほどしかなく、
検温、点滴、手術の説明などで看護師さんが代わる代わる部屋にやってきた。

15時前。
あと15分ほどで手術を行うと告げられ、
各方面に「がんばってきます!」と連絡する。

腹腔鏡手術を予定していたため、
昨晩から何も食べていない。
水も朝7時に飲んだのが最後。
この時一番辛かったのは空腹感と喉の渇きだったかもしれない。

看護師さんと一緒に手術室のある階まだ移動する。
映画【dancer in the dark】の最後を思い出す。
私は処刑されるわけじゃないと思い、一瞬浮かんだ不のもやもやを払う。

手術室はよくドラマ等で見る暗くて無機質な部屋を想像していたけど、とてもクリーンで明るい部屋だった。

口元にマスクのような物を近づけられる。
「クラクラして来たら、慌てずに目を閉じて深呼吸してくださいね」

「はーい」
眩暈がすると怖くなっちゃうから、
先に目を閉じよう……。

…………………?

目を開けた時、すでに手術が終わっていた。

「え、終わりました?」
「あれ?」
「ほんとに?」
「何時間経ちました?」

なぜかこの時、爆裂にテンションが高かった。
視界がぼやけているので、看護師さんを担当の先生と見間違え、
「先生、ありがとうございます!」と言っていた。
「先生じゃないですよ〜^^」と返され、ヘラヘラしていた。

ペラペラ話しているとあっという間に病室に戻され、
すぐ面会できるように待機してた夫と母と少しだけ会話した。

流石にこの日はお腹の傷が痛み、
痛み止めを全種類絶え間なく入れてもらった。
ありがとう看護師さん。

翌日には歩行練習をし、
計4日の入院を経て退院。
HCGの値も無事に下がっているという。
本当にジェットコースターのような1ヶ月だった。

終わりに

もうすぐ術後1ヶ月となる。
色々な感情はあるけれど、
私でも自然妊娠できるんだという前向きな気持ちでいる。

早い段階で大学病院に回してくれた婦人科の先生と、
寄り添いつつ、事実を明確に伝えて、ギリギリまで可能性を捨てずにいてくれた大学病院の先生にはとても感謝している。

長いこと通院に付き合ってくれ、
気持ちの面で大きな支えになってくれた夫には感謝してもしきれない。

手術になっちゃったとTwitterに書いた時、
励ましの連絡をくれた友人たちも本当にありがとう。

そして命になれなかった、命(仮)ちゃん。
絶対また私たちのところにおいでよね!

おしまい

補足
先生は爆発物と言いましたが、
前後の会話を含めての表現です。
私が傷つくような言い方はしていませんので、
ご安心ください🙏

もしこれを読んで、今まさに子宮外妊娠の疑いがあり不安な思いをされてる方。
答えられる範囲で答えますので、なんでもお聞きください🙇‍♀️

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