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181 国際収支に見る日本経済の構造変化

かつて日本企業は決心した。円高(つまり国際的に賃金が高くなる)で国内で生産しても国際競争力に劣り、輸出が振るわない。なので、もう働くのはやめて、海外に投資して(生産の海外移転など)、海外で儲けた利益を日本に送ってもらおうと。
それはうまくいった。物の輸出は少なくなり、貿易赤字は膨らんだが、それ以上に海外投資(海外子会社、海外への証券投資)からの収入が大きくなった(所得収支の黒字の拡大)。そして経常黒字を維持している。
(注)原油価格があまりに大きいと、エネルギー輸入で経常赤字になるときもある。
万々歳である。

今や、日本は貿易黒字国から貿易赤字国になっている。しかし、海外投資からくる所得収支の黒字拡大から、経常黒字は維持している。

日本の直接投資(海外生産移転)が本格化したのは2005年くらいからなので、2010年くらいからその果実が出始めた。

最初のグラフは12か月合計で、これは12か月平均。揃っていなくて申し訳ない。12か月平均を12倍すれば12か月合計になる。その時の気まぐれで作っているので、こういうこともある。

上記の通り、万々歳なのだが、世の中そうはうまくいかない。
海外への生産移転で、日本の工場の生産従事者は仕事がなくなった。労働賃金が入らなくなった。他に仕事を見つければいいが、いい給与の仕事はそうはない。日本の労働は不要になったが、その分、海外の生産移転先(中国や東南アジアなど)では労働者が増えた。要は、日本国内の人は働いていないのだから労働賃金は入らず、海外移転先の人は働いているのだから賃金が入るという図式である。

日本の労働者の収入が細ったので、結婚も躊躇するようになり、子供を産むことも躊躇するようになり、労働者が要らないのとともなって、人口は減少した。日本は人手不足と言われるが、かつての比較的高賃金の工場生産者のニーズは減り、比較的低賃金の外食や宿泊業などのサービス産業での求人が多いだけである。

国内労働者の取り分(賃金収入)は増えないが、一方で、海外からの投資収益の上りが増えている。国内に生産活動がないので経済は停滞しているが、国内に金はあるのである。労働者の報酬は伸びないが、海外へ投資する人、海外生産拠点をマネージする人には大きな収入があるのである。そうした富裕者の収入で購入される商品・サービス提供者にもお金は回ってくる。百貨店でも高級品は売れるのである。ユニークなサービスも儲かるのである。なにしろ、日本全体には資金(海外投資先から得られる収益)があるのだから。

以下、改めて、書き足す






参考


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