239 日本株リバランス売

年金は基本的に、基本ポートフォリオ(長期的な観点からの資産構成割合)を策定して、4資産(日本株、外国株、国内債券、外国債券)に投資している。
どれかの資産の増加率が他の資産に比べ特に高かったり低かったりすると、資産構成割合が基本ポートフォリオから乖離するので、定期的(通常は四半期末)に、基本ポートフォリオに合わせるように調整する。この調整をリバランスという。

2023年4-6月期は、日本株と外国株の上昇率が高く、日本株と外国株の資産構成比が高まった。そこで、その調整がなされていると思われる。つまり、構成比が高くなり過ぎた日本株と外国株を売り、その資金で国内債を買っていると思われる。

今、3月31日時点で各資産の構成割合25%の年金があるとしよう。
3月末から6月16日までの各資産の上昇率は、日本株14.9%、外株13.4%、日本債0.4%、外債4.6%だったので、6月16日の各資産の構成割合はそれぞれ、26.51%、26.17%、23.17%、24.15%となっているはずだ。つまり、日本株と外国株が基本ポートフォリオより大きく、国内債と外国債が低い。
なので、この調整(リバランス)が必要になる。

次の表を参照。

ところで、日本の公的・企業年金総額は資金循環統計によれば、公的が271兆円、企業年金が167兆円である。うち、公的年の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産は約191兆円である。

これらの年金のうちで、基本ポートフォリオに忠実に運用している、厳格にリバランスを行っている年金の額を220兆円(全体の半分)としよう。
基本ポートフォリオからの乖離を3%以内(アロウアンス)であれば許そうというファンドが殆どであるからだ。つまり、多少の乖離ではリバランスしないファンドも多いということだ。実際、私もアロウアンスの範囲内なら特にリバランスを行わなかった。売買コストもかかるし、相場の勢いに乗ることを好んだからだ。

リバランスを行う年金の額を220兆円として、上記のグラフを作成すると、次のようになる。日本株には3.6兆円の売り、外株には2.8兆円の売り、国内債には4.4兆円の買い、外債には2.0兆円の買いが発生する。

これが6月最終2週間程度で出てくれば、それなりにインパクトがある。
この売買は相場観に基づくものでなく、ルールに則って行われるものであり、相場が下がっているから、様子見しようなどと言うことはない。外からは売っている理由はわかりにくい(ファンダメンタルズ上の理由あるわけではな)が、それなりにインパクトがある。

参考まで、規模感の為に、投資部門別の売買動向のデータを参照。
投資主体別売買動向 | 信用・手口 | トレーダーズ・ウェブ

書き忘れていたが、各資産の変動率は、次のETFを参考にした。
NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信(1306)
NEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI(H無)
NEXT FUNDS 国内債券・NOMURA-BPI総合連動型上場投信(2510)
NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債(除く日本・H無)



年金のリバランスにより、日本株には3.6兆円の売り、外株には2.8兆円の売り、国内債には4.4兆円の買い、外債には2.0兆円の買いが発生していると思う。この売りは、ルールに則って行われるものであり、相場が下がっているから、様子見しようなどと言うことはないので、それなりにインパクトがある。



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