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298 ECBは利上げ打ち止めを示唆

ECBは、2023年9月14日、政策金利を0.25%引き上げる一方で、利上げ打ち止めの可能性を示唆した。利上げは10会合連続。
(リファイナンス金利は4.25%から4.5%に、中銀預金金利は3.75%から4.00%に引き上げた。)
 
中銀預金金利は今回の利上げで1999年の単一通貨ユーロ導入以降で最高水準となった。ECBが2022年7月に金融引き締めを開始した際はマイナス0.5%と過去最低水準にあった。
 
ECBは声明で「政策金利はインフレ率の目標回帰に多大な寄与をするとみられる水準に到達し、十分長い期間維持されたと理事会は考える」と述べた。
 
理事会後のラガルド総裁の記者会見で、
 
今日の決定により、われわれは現在の評価の下でインフレ率を目標に戻すのに十分な寄与を果たした
 
経済は今年上半期は全般的に停滞した。
今後数カ月間、引き続き低迷する可能性が高い。
成長率見通しは23年で0.7%と6月時の0.9%から下方修正。24年の成長率は1.0%。
これまで底堅さがあったサービス部門も現在は軟化しつつある。
金融政策の影響が予想以上に強まったり、中国経済の一段の減速などで世界経済が弱体化したりすれば、成長はさらに鈍化する可能性もある。
る。
金融引き締めは以前よりも迅速に資金調達状況に波及しているという証拠があり、また、不動産セクター全体を困難な状況に陥らせている要因の一つとなっている。
 
逆に、好調な労働市場、実質所得の増加、不確実性の後退により、人々や企業の信頼感が高まり、消費が拡大すれば、成長は予想を上回る可能性がある。
景気減速にもかかわらず、労働市場はこれまでのところ底堅さを維持している。
 
インフレ率は低下し続けているが、依然として高過ぎる状態が長期間続くと予想される。
新たな予測では、インフレ率は8月の5.3%から2024年に3.2%、25年に2.1%へと鈍化する見通し。基調的なインフレ率見通しも24年で2.9%、25年で2.2%と、ECBの迅速な利上げにもかかわらず、ECBの目標である2%への回帰は緩やかなものにとどまる見込みだ。
賃金上昇は、労働集約性が高いサービス部門の賃金インフレに深刻な影響を与えている。
インフレの上振れリスクにはエネルギーと食料品のコストに対する新たな上昇圧力の可能性や悪天候が含まれる。広範な気候危機の進行により食料品価格が予想以上に上昇する可能性がある。
 
なお、ECBが追加利上げや銀行システムからの資金引き揚げの可能性を示唆しなかったことで、市場では利下げ予想が前倒しされた。
市場では現在、ECBは24年6月にも利下げに踏み切り、その後は同年末までに2回の利下げが実施されるとの見方が織り込まれている。今回の理事会前は、最初の利下げが実施される時期の予想は24年9月だった。

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