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246 ECBの金融政策の背景

ユーロがことのほか強いこともあり、また、今回の国際フォーラムでラガルド総裁がユーロ圏のインフレの背景や金融政策について、詳しく述べたこともあり、まとめておく。(まとめ方は不十分だが)

ECBラガルド総裁 これまでの発言などから
 
■インフレについて
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻以降、エネルギー価格の上昇は非常に厳しかったが、物価を押し上げてきたエネルギー価格が下落し、製造業における供給のボトルネック(目詰まり)の解消でインフレのピークは過ぎた可能性は高い。
海運の混雑状況の緩和や貨物運賃の下落など良い方向を向いている。
しかし、エネルギーや食料を除いたインフレ率はまだ高すぎる。
2022年は利益がインフレ押し上げに寄与していた。
2023年は賃金がよりインフレに寄与している。
ドイツとスペインでは今後2~3年間の賃金上昇率が2ケタとなる。これは実質賃金の目減り分を取り戻す動きだ。
 
今のところ、賃金・物価スパイラルは発生していない。
詳しく言うと、ユーロ圏では賃金の力強い上昇と予想外に鈍い生産性の伸びが相まってインフレ圧力が高まっている。
 
<何故、賃金の力強い上昇と予想外に鈍い生産性の伸びが起きているか>
労働市場の回復力と雇用の増加が寄与している。どちらの要因も長く続きインフレ圧力を長引かせる可能性がある。
ユーロ圏はリセッションに陥ったにもかかわらず、企業は雇用を削減せず賃金上昇に拍車がかかっている。労働力不足を背景に企業が労働者を抱え込んでいることが一因。これは生産性の上昇を圧迫している。企業が労働者を維持する誘因はすぐには解消されないだろう。
歴史的に生産性の伸びが低い業種を中心に雇用が増加していることも問題となっている。これらのことは全て、生産性の伸び悩みによって単位労働コスト圧力が悪化し、名目賃金が今後数年間上昇することを意味する。
 
<なぜ、企業は雇用をキープできるか>
企業はここ数年で利益率を向上させたため労働者を維持できる。ECBは企業が価格決定行動を調整するよう圧力を掛け続けなければならない。企業が人件費憎を価格転嫁するのでなく、人件費増加を利益率で吸収するようにしなければならない。需要を当面抑制して最近みられる価格決定行動を企業が続けられないようにする、それはわれわれの政策にかかっている
一部のセクターでは、需要が供給を上回っており、比較的高い利益を維持することが可能となっている。製造業は世界的な需要の低下とユーロ圏の資金調達条件の逼迫を一因に引き続き弱含みで推移しているが、サービスは依然として底堅い。
  
■ECBは、総合インフレ率と、(価格変動の激しい食品やエネルギーなどを除く)コアインフレ率のどちらを政策決定にあたって重視するか。
総合インフレ率が政策目標で、物価が安定しているかを測る物差しだと考えている。人々が体感する物価というのが非常に大切だと思う。それには食品とエネルギーを含むべきだ。これが私たちの体温計であり、中銀として全力を注ぐ対象だ。
むろんインフレ基調にも注目している。コアインフレ率はそのひとつだ。なぜ、さまざまな観点からインフレをみるのか。それはインフレの核心に迫るためだ。しつこく上昇が続く項目をみることで、中期的に総合インフレ率がどう動くのか理解できる。
 
■利上げ効果
企業融資などに影響は出ているが、物価に影響を及ぼしインフレ低下につながる実態経済への波及は見られず、十分な効果が波及しているかどうかは分からない。
  
■今後への対応
インフレ率2%の達成は早ければ早いほど望ましい。ただ、現実的で慎重な対応が必要だ。
(金融政策は)間違いなく制約的だ。十分に制限的かと言えば、まだだ。
目標達成に向け必要な限り制約的であり続ける。
利上げ停止を検討し始めてもいない。
 
金融政策決定プロセスにおいて2つのことを決めている。ひとつは経済指標に準拠すること。2つ目は(どのような経済情勢の変化が金融政策に影響するかを示す)反応関数が重要なデータになることだ。インフレ見通し、インフレ基調、金融政策の浸透度合いといった反応関数が決定を左右する。
 
■金融政策
利上げの旅路は終わっていない。まだ目的地に到達していない。ベースラインに重大な変化がない限り、7月も利上げを継続する可能性が極めて高い。
利上げの一時停止は検討していない。
ターミナルレートは、そこにたどり着いて初めて判明するものだ。金融政策を動かしているのは、最終的に(インフレ率)2%の達成だ。
  

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