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483 日本の国際収支(2)

(2)国際収支(最近)
単月では経常赤字になったことはあるが、12か月合計ではない。
経常収支が重要なのは、経常赤字になると、赤字分を海外から借りなければならないからである。そうなると、今の日本のような低金利では貸してもらえないだろう。いろいろ厄介なことになる。
これはフローの「貯蓄・投資バランス」論になる。別の機会に取り上げよう。日本は経常赤字になりそうにないので、大事な話ではない。

(3)経常黒字なのに通貨は弱い
経常黒字ということは、国内に資金(外貨)が余るということであり、経常赤字国(資金不足)にカネを貸す立場である。普通は、カネを貸す方が、借りる方より立場が上のような気がするが、日本は、相手が欲しいと言っていないのに、貸しにいっている弱みがある。例えば、新NISA制度でも、国内への投資はほどほどに、進んで(尻尾振って)オルカンを買い、海外へ投資(要は、海外へ資金を出す)している。相手は日本を見下している。通貨も日本は弱くなる。
もっとも、そのおかげで、その投資からの配当は所得収入として、経常黒字に貢献している。

それでも、対外証券投資の場合は、いつでもオカネを引き揚げることができる(無理に引き揚げると、安値で買い叩かれるかもしれないが)。
実は、問題は直接投資なのだ。直接投資とは、海外に現地法人を設立して工場を作り、人を雇うために投資することなどを言う。こうなると、その投資を引き揚げることは容易でない。相手の国にとっては、オカネをだして工場を作ってくれ、人も雇って生産活動をしてくれ、経済に貢献してくれるということになる。そのオカネはもらったようなものだ。
日本からすると、せっかく経常黒字で稼いだオカネを相手にあげたようなものだ。その直接投資額(緑の部分)だが、最近は経常黒字(赤の部分)より大きいくらいだ。これでは円は強くならない。

こうして必然的に円は弱くなる。背景は多額の直接投資だ。日本に生産工場を作り、人を雇い、生産し、輸出すれば、日本の経済成長にも貢献する。
それが、相手国に生産拠点を作り、相手国の経済成長に貢献している。そして円は弱くなる。

しかし、しかしである。設立した海外現法が儲け、配当を日本へ送ってくれる。働くのは現地の人で日本人ではない。われわれは、働かずして収益を得られる。いいことではないか。円安で輸入品は高くなるといっても、海外からの配当の円換算額も増える。何の問題もない。

しかし、何かがおかしい。以上のように、日本全体ではつじつまが合うが、日本人の全てが海外に投資ししているわけではないことだ。
海外投資をしている人は、円安で輸入物価が上がって、その点では痛みを感じるが、片方で投資収益でその痛み以上の快楽がある。しかし、大部分の海外投資をしていない人は、痛みだけが残る。

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