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214 米 中小銀行の資金流出動向など

参照 207 米 中小銀行の資金流出動向など

米国経済で、今注目されることの一つは、
・3月10日にシリコン・バレー銀行(SVB)が破たん。
・5月1日にFirst Republic Bank (FRC) が破たん。
・いくつかの地方銀行の株価の下落が激しい。
<参考>
・地方銀行のETF:KRE SPDR S&P Regional Banking ETF
KRX| KBW Nasdaq Regional Banking Index

以上などから、
(1)中小銀行に金融不安が起きていないか、つまり、
 (A)資金流出(預金引き出し)が加速していないか?
 (B)FRBからの借入に頼っていないか?
(2)銀行は融資態度を厳しくし始めているようだが、銀行の貸し出し状況はどうなっているか?
が注目されている。

また、5月19日、パウエル議長は「最近の銀行業界のストレスによる信用引き締まりのは経済成長や雇用、インフレを圧迫する公算が大きい」「結果として、われわれの政策金利はそうでなかった場合ほど大きく引き上げる必要はないかもしれない。当然、その度合いは極めて不確かだ」と述べた。
そういう意味でも、銀行の貸出態度や銀行の貸し出し状況が注目される。

銀行の貸出態度であるが、FRB銀行融資調査*が背景にある。
*銀行貸出業務に関する連邦準備制度(Fed)上級貸出担当者調査調査 (Federal Reserve System (Fed) Senior Loan Officer Opinion Survey on Bank Lending Practices)
FRBは四半期に一度、銀行の融資担当者を対象に貸出基準や資金需要等に関する調査を実施している。調査は通常1月、4月、7月、10月に実施される。主要調査項目は以下の通りだ。
• 商工業向け貸出(C&I loans):貸出基準、資金需要、融資条件等
• 商業用不動産向け貸出(CRE lending):貸出基準、資金需要
• モーゲージ・ローン(Residential mortgage loans):貸出基準、資金需要
• リボルビング・ホーム・エクイティ・ローン:貸出基準、資金需要
• クローズドエンド型住宅ローン:組成の増加/減少、その理由
• 消費者信用:クレジット・カード、自動車ローン等の貸出基準、資金需要

これについては、NRIの木内さんのレポート(米銀の融資基準厳格化と企業の資金需要鈍化が同時進行(FRB銀行融資調査) | 2023年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI))を参照してください。

というわけで、いつものように、

(1)中小銀行に金融不安が起きていないか、つまり、
 (A)資金流出(預金引き出し)が加速していないか?
傾向的には大手行から資金流出が続いている。MMFなどへ資金が移動したということだろう。銀行の預金金利はゼロに近いが、MMFや短期国債の利回りは4%後半である。銀行預金から資金流出が起きるのはやむをえない。しかし、それは金融不安による資金逃避ではない。
しかし、中小行ではSVB破たん時に預金流出が起きたが、その後は安定している。
今回は前週から大きな変化はないので、長期のグラフを掲載する。

最後は5月10日

 (B)FRBからの借入に頼っていないか?
FRBから金融機関への貸し付けはほぼ横ばい。資金繰りに困窮してFedに頼る銀行はないようだ。銀行に信用不安が起きている様子はない。
なお、FRBによる市中銀行への貸出制度はいくつかあるが、それぞれの制度まで知る必要もないだろう。それでも、敢えて知りたいということであれば、Bank Term Funding Program (BTFP) and Other Federal Reserve Support to Banking System in Turmoil をご覧ください。

最後は5月17日


(2)銀行は融資態度を厳しくし始めているようだが、銀行の貸し出し状況はどうなっているか?
銀行の融資には、企業向け融資(C&Iローン、商工業向け融資)、不動産開発融資、住宅ローン、消費者向けローン(自動車ローン、クレジットカードローンなど)などがある。
中小銀行の企業向け融資(C&Iローン、商工業向け融資)残高はわずかだが引き締まり気味である。信用状況の逼迫とまでは言えない状態。多少、米経済の重しとなっているだろう。

これも前週から大きな変化はないので、長期のグラフを掲載する。



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銀行は融資態度を厳しくし始めているようだが、中小銀行の企業向け融資残高はわずかに引き締まり気味程度。信用状況の逼迫とまでは言えない状態。多少、米経済の重しとなっているだろう。




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