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476 米雇用統計(2)

FRBの金融政策の目標は雇用の最大化と物価安定だ。80年代以降ディスインフレが続いてきたので、目標は専ら(景気が過熱しない程度の)雇用の最大化であった。従って、投資家はそういう観点で雇用統計を見ていた。
しかし、今は違う。FRBの目標は2%物価に集中している。そのために、雇用市場が軟化し、賃金上昇率が低下し、物価上昇率を抑制するというシナリオが期待されている。なので、今は、そういう観点で雇用統計を見ることになる。
ただし、雇用市場の軟化は賃金上昇率を低下させるために必要と考えられているが、賃金上昇率が低下するのであれば雇用市場が軟化するする必要はない。つまり、今は、雇用統計を見る上で、賃金上昇率が最も重要だ
雇用の最大化という観点からは非農業部門雇用者数前月比に注目が集まった(それが目標なので)が、今は、物価上昇率抑制が目標なので、雇用統計においては、賃金上昇率が最も注目される。
なお、賃金上昇率が低下しなくても、物価上昇率が抑制されるなら、賃金上昇率は高い方がいいに決まっている。

今は、賃金上昇率、雇用コスト指数(ECI : Employment Cost Index)上昇率、ユニットレーバーコスト(ULC : Unit Labor Cost)上昇率が注目される指標だ。
ただし、ECIとULCは四半期単位の発表で、しかもかなり遅いので、市場の注目度はまぁまぁ。雇用統計ほどの熱狂性はない。ECIとULCは別の機会にとりあげよう。

というわけで、賃金上昇率をチェックしよう。賃金上昇率には、三つの指標がある。
(1)平均時給前年比上昇率(民間全労働者
(2)平均時給前年比上昇率(民間生産労働者&非管理職
(3)AtlantaFed wage-growth-data

時給データはもともと(2)民間生産労働者&非管理職があった。1964年1月からある。全ての生産労働者とサービス業の管理職を除く人が含まれる。全労働者の8割を占める。
2006年3月から全労働者のデータの発表が始まり、単に賃金上昇率というとこれを指す。
さらに、アトランタ連銀が賃金上昇トラッカーを発表している。賃金データを分析し、同一個人の当月とその12ヶ月前の時間当たり賃金を比較・対応させた賃金の伸びを推計している。労働力構成の変化による歪みが抑えられる。但し、雇用統計のデータを分析して推計する為発表が遅くなり、市場の熱狂度は低い。

3種類のデータは必要に応じて使い分ければいい。(3)が最も有用だと思うが、発表が遅い。(2)は全体のデータで経済全体を見る上ではいいと思うが、ヒストリーが短い。

時給の前年同期比増加率は次。アトランタ連銀賃金上昇トラッカーについては別の機会に(まだ4月データは発表されていない)。

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