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ネットワークビジネスにハマって一家離散した話⑬ ~現実は小説より奇なり~

この物語はフィクションだったと願いたい作者の記憶をここに綴る2015年の物語である。

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最後の家族全員集合

~帰郷~

久しぶりの帰郷と大切な人との別れ…。
そんな時間さえも私には与えてもらえない…。
葬儀の前に顔を出し、故人と別れを告げ、私はすぐに実家へと出向く。
足取りは重くまるで両足に鉄球でも付いている囚人かと思うほどだ…。
家につくと待ち構えていたように家族が全員そろっている。
それはそうか…。
本当に待ち構えていたのだろうから…。
食事もとっていない私だが、だれも口を開こうとはしない。
少しくらい長旅を労う言葉が出てもいい気はするが、それは私の勝手な考えなのだろう…。
耐え切れず唯一社会で戦っている長男が口を開く。
『俺は明日仕事だし、本当だったらもう寝たいんだ。黙ってても何も始まらないぞ。せっかく遠い所から来た上に居たくないハズのここになんで座ってると思う?お前のために来てくれてるんだぞ。早く喋れよ?』

流石だ…。
私の思っている事を代弁してくれた。
まず第一歩が始まる…。
出来ればうやむやにしたかったが…。

その言葉にようやく弟は話を始めるのかと思えば黙っている。
なるべく穏便に済ませたかったがそういうわけにもいかないらしい。

私が口を開けば弟はアイアンメイデンの中に入るのと大差ない状況を作り出してしまうだろう…。

だが、拷問への猶予時間は無い。
最後のチャンスを黙秘してしまったのだから…。

~移住の理由~

私が口を開き拷問の時間が始まる。
アイアンメイデンの扉は開かれたのだ…。
『仙台で暮らすっていうけど、なんで急にそう思ったの?』
返事はない。
私が実家へ帰る事が決まってからこの席へ着くまで軽く見積もっても10時間はあったはずだ…。
こんな第一歩すら黙秘とは…。
仕方がない…。
対人援助技術の初歩であるクローズドクエスチョンでの対応へと切り替える。
『この家で生活するのが申し訳ないと思ったの?』
『夜は寝れてるの?』
『仕事は出来そうなの?』
そんな当たり障りのない答えやすい質問を投げかける。
最早私にとって、天気や野球の話をしているのと変わらない。
会話を成立させるためだけに帰しやすい質問をただただ投げかける。
ずっと顔色や声色をうかがいタイミングを探している。
もうそろそろという所で本題を切り出す。
『仙台で暮らすって言っても保証人は?』
『この家で保証人になれるのは長男と私しかいないんだよ?』
『費用どころか借金の返済も家族全員で払っているんだよ?』
現状と思い描いている理想はまさに対極だが、これをどうする気なのかさっさと理解させるためにアイアンメイデンは大きな扉を開いたつもりだった。

『アパートは一緒に暮らす相手がいる。その子の名義で借りてもらう。
あっちで働いて借金は返していくからいい。』

その子?
『その人』ではなく『その子』?
コナンドイルでもシャーロックホームズでも江戸川乱歩でもない私ですらその言葉から推測できる答えは一つである。
これで深夜にマルチ商法で友人全てを失った男が毎晩誰かとしゃべっているという証言と整合性が取れる結果が導き出せる。

地獄への入り口か?
天国への階段か?
火を見るよりも明らかなこの先は想像を絶するものだった事は今振り返ってもこの時点で気付ける名探偵はいなかっただろう。

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ワーキングプアのケアマネ介護福祉士に毎日楽しく生きれる愛の手を…。