【一からの投信分析活用】ファンドを選ぶ指標を自分で作ってみる

原理原則の再考

3. ファンドを選ぶ指標を自分で作ってみる

投資信託を初めてすぐに悩むのは、どのファンドを選べばいいかということです。初心者向けに勧められるのは、全世界株式とか、先進国株式とか、あるいは米国株に集約するのであればS&P500のインデックス投信ですね。そうした定番のインデックス投信は、いろんな投資会社が手がけているので、手数料の安くて投資資金が伸びているところを選べとよいと勧められます。また、他の様々なファンドを選ぶにしても、リターンばかりに目を向けず、リスクがあることがしっかりと強調されます。教科書的には当然のことと思うのですが、どうしても違和感があったのは、ハイリスク・ハイリターンを同等に比較して検討することの意味のなさでした。

どういうことかと言いますと、ファンドの主な成績として一定期間での騰落率とリスクという指標が表示されているわけですが、概ね同じカテゴリーにあるファンドはほぼ同じ数値を示すわけです。ということは、騰落率とリスクの数値だけで選ぶのは至難の業です。もちろん、他にもアルファ値、ベータ値、シャープ値などあり、それなりの特性はわかりますが、何か決定的な判断をするには不足している感があります。そうは言っても、始めた当初はそうした数値以外に選択肢はありませんでしたので、とりあえずいくつかのファンドでのそれら数値をテーブルに並べて、検討はしていました。

しかし、ファンドの値動きグラフをじーっと眺めれば眺めるほど、何かもっと、ファンドの特徴を把握できるようなわかりやすい指標がないものだろうか、単なるハイリスク・ハイリターンで済ませるのではなく、どういう時にどの程度のリターンが得られ、どういう状況であればリスクが大きくなるのかをもう一段深堀して分析できる指標はないものか、そういうことを考え始めたのです。インデックス・ファンドやテーマ型ファンドは何らかの意図で選択された株で構成されているわけですから、集合化された株はそうした”意図の結果として動く”ように見えるはずです。そうすると、そのふるまいの特徴をよりよく記述できる方法があってもいいのではないか、と考えたくなるわけですね。

最初に行ったのは、ドルコスト平均法に適したファンドはどれなのだろうという素朴な疑問でした。一般的なドルコスト平均法の説明は、それこそ腐るほどありますが、どういうファンドに適しているのか、まで調査・分析しているのは見たことがありませんでした。特定のファンドの良否を議論してしまうことになるので、業界的にはご法度なのかもしれませんが、初心者の実際問題としては、切実です。来月から積立NISAを始めたいのに、どのファンドを選べばいいの?という万人の質問に、定量的に回答できていないのは、不思議で仕方がありません。なので、まずはこのテーマから始めたところ、変額ドルコスト法というアイデアにすぐにたどり着きました。詳しくは、第3章「変額ドルコスト法」で紹介します。

そのころまでは、Excelを駆使して試行錯誤していましたが、単純な分析やルールしか適用できないという限界があります。本気でやろうとすると、値動きデータを統計的に分析する手法を自分で作ってみないといけないことはすぐにわかりました。大昔にFORTRANを書いていたので、どうにかなるだろうということで、意を決してPythonプログラムを一から勉強し始めることにしたのが、2021年12月でした。最近のネット情報のありがたいのは、本を買って読まなくても、簡単なプログラムをコピーすることから始めれば、意図するプログラムをあれよあれよという間に書けてしまうことです。つぎはぎだらけの真似事とググりだけで、意図していた以上の分析プログラムができて、しっかりと動作するのは実に驚きでした。第2章「ファンド分析シミュレーション」で、その詳細を紹介することになります。

例えばということで考えてみます。値動きは山谷の集まりです。数学的に表現すると極大値と極小値の繰り返しです。極大と極小の間である、上げ下げ幅を統計処理し、ファンドのマクロ的な特性として活用できれば、いろいろな投資手法に適したファンドを適切に選ぶことができるのではないか、というアイデアです。うまく行けば、リスクをリスクとしてだけ見るのではなく、うまく活用できる投資手法を考えられるかもしれない、ということです。さて、今回はここまでとしましょう。



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