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名前をつけたい現象

先日、ハンバーガー屋に行ってきた。
フランチャイズのやつじゃなく、個人でやってるガチハンバーガー屋。

おいお前なにそんなしゃばいとこ行ってんだ、ともう一人の自分からの指摘があったので、一応言い訳させてもらうと、そのハンバーガー屋を目がけて行ったわけではない。

たまたま行った。

何も栄えてない広々とした通りを、たまたま友人と歩いていると、たまたまちょうどお腹が空いたタイミングで、たまたまハンバーガー屋が現れた。

これは行かざるをえない。

意を決して中に入った。

雰囲気そこそこ、味はまあまあ、BGM良き、店員さんめっちゃいい、客層微笑ましい、要約するとまあ最高な空間だった。

まあ最高の空間とはいえ、入り浸るのはださい。
一瞬でハンバーガーをたいらげ、残ったコーラを友人に譲った。

そそくさと会計を済まし、満足気に店を出ると、店の外に灰皿が見当たらなかった。

あー惜しい、灰皿さえあればまた来てやってもよかったのに、なんなら常連になってやってもよかったのに、なんなら知り合い全員におすすめしてやってもよかったのに、灰皿さえあれば、店内で吸えないにしても外に灰皿さえあれば、惜しい、惜しいことしたなこの店は、とか思っていると、

「ん〜?これはなんだ〜?」

友人が僕に問いかける。

目の前には歪なオブジェ。
形容し難いでっかいオブジェ。
まじで見たことない形、オブジェかもわからん。
続けて友人が僕に言う、

「もしかしてこれか〜?」

そんなわけはない、こんな灰皿見たことない。
灰を落とすところも皿のようなものもない。

「それはないやろ〜」

僕は軽くいなした。

だが、何かが変、なんか変な穴がある。
僕は恐る恐るそのオブジェに顔を近づけた。

「うーわ灰皿や」

オブジェの穴のところに、そのオブジェと同色で書かれたタバコのマーク、そして smoke in みたいな誰でもわかる英語が書かれてあった(正確には覚えてないけど)。

まじか!ほんとにこれが灰皿とは!
やったータバコが吸える!いい店認定!
なんでこれを起用した!わかりずらい!

驚きと喜びと疑念がほぼ同時に襲ってきた。

見たことない灰皿。
ぱっと見じゃ絶対わからない灰皿。
本当にタバコを吸いたいものだけが見つけることができる灰皿。
店の前でタバコを吸ってく輩を排除する店側の魂胆なのかもしれない。


次の日、街を歩いていると、同じオブジェ灰皿をたまたま見かけた。
へぇ〜、奇遇なこともあるもんやなあ、ぐらいにしか感じていなかった。

その次の日、また別の場所でも見かけた。


「いやめっちゃ溢れとるやん」

ぽつぽつとあのオブジェ灰皿を見かけるのだ。


こういうことがたまにある。
今までは気にもしてなかったのに、一度認知すると、世界はそのものばかりで溢れている。

マルチ勧誘撃退のyoutube動画を見てからというもの、カフェに行くたび絶賛マルチ勧誘中のやつらばかり。

友達から中野新橋に引っ越したと報告があり、へぇそんな駅あるんやあ、と思ってからというもの、ニュースや会話や文字で中野新橋を見かけすぎる。


この現象に名前をつけたい。
もしかしたらもうあるのかも。
ググってみよう。

「一度知ると結構ある 現象」

これ以上の表現が思いつかなかった。
さあ頼んだグーグル、出てこい。

(、、、ん?なんかそれっぽいのがあるぞ?)

上から三つ目の記事を開いた。

「バーダー・マインホフ現象」
1.今まで身の回りに存在し出会っていても意識していなかったものが、自分にとって新しい知識や情報となって認識したときに、脳は「新しいことを学んだ!」と興奮状態になり、選択的注意が無意識に働きはじめる。

2.脳は学んだ情報と近い、または同じパターンを見つけようとしている状態なので、その後の生活の中でそのパターンに気づきやすくなる。

3.何度かそのパターンに気づくことがあれば、確証バイアスの作用により「なんだか急に目にするようになったな」という思い込みが強くなる。


これだ。
絶対これ。

ちなみに名前の由来は、1994年に新聞に寄せられた読者投稿から、この現象が有名になったといわれているらしい。

新聞の読者だった人が1970年代に存在したドイツ赤軍のバーダー・マインホフの話を友人と話した翌日に、同じ友人から「ニュースでバーダーマインホフに関する話を目にした!」という連絡を受け、驚いたという。
そのエピソードを新聞に投稿すると、他の読者からも同じような体験談を数々もらった、とのこと。


わずか29年差で僕も歴史に名を残せたかもと思うと悔しい。
僕が名前をつけたかったのに。


ん?待てよ?
何か違和感がある。

あの灰皿のオブジェは変な形で超目立つ。
灰皿と認識しなくても一度は目にとまるはず。
今まであれの存在に気付かないはずがない。

ということは、一度知ったから急に目にするようになったのではなく、一度知った瞬間から急に現れだしたのだ。
これは、バーダー・マインホフ現象なんかではない。
脳の仕組みなんかじゃない。
世界が働きかけている。
何かを暗示しているかのように。
僕に何かを教えようとしてくれているのか、はたまたこの世界が仮想空間だということを証明しているのか。

てか何現象だこれは。
調べてもでてこない。

じゃあしょうがない。

僕が名付け親になろう。

よし、じゃあ、ガチハンバーガー現象と名付けるとしよう。

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