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ナッシュ均衡とは?分かりやすい解説と実例

マガジンの分類 インフォサイエンスラボ

ナッシュ均衡の基本概念

ナッシュ均衡とは、ゲーム理論において重要な概念で、プレイヤーがそれぞれ最善の戦略を選択した結果、他のプレイヤーの戦略を変更しても自分の利益が増えない状態のことを指します。つまり、各プレイヤーが最善の選択を行ったとき、誰も戦略を変更する動機がない状態です。この概念は、ジョン・ナッシュ(John Nash)が1950年代に提唱しました。

ゲーム理論との関連性

ゲーム理論は、複数の意思決定者(プレイヤー)が相互に影響を及ぼし合う状況を分析する学問です。ナッシュ均衡は、ゲーム理論における中心的な概念であり、特に非協力ゲームの分析において重要です。非協力ゲームとは、各プレイヤーが自分の利益を最大化するために行動し、協力することが必ずしも期待されないゲームのことです。ナッシュ均衡は、プレイヤー間の戦略の相互依存性を考慮し、全員が最適な戦略を選んだ結果、誰も戦略を変更する動機がない状態を示します。

ナッシュ均衡の実例:囚人のジレンマ

ナッシュ均衡を理解するために、最も有名な例である「囚人のジレンマ」を見てみましょう。

囚人のジレンマとは?

二人の犯罪者が捕まり、別々に取り調べを受けています。彼らは次の選択肢を持っています:

  1. 黙秘する(協力): 自分も相手も黙秘すれば、両者ともに軽い刑(例えば、2年の懲役)で済みます。

  2. 裏切る(非協力): 自分が相手を裏切って証言すれば、自分は無罪放免となり、相手は重い刑(例えば、10年の懲役)を受けます。

もし両者が裏切れば、両者ともに中程度の刑(例えば、5年の懲役)を受けます。

囚人のジレンマにおけるナッシュ均衡

この状況では、各囚人が他の囚人の行動を予測して最善の戦略を選択します。お互いが黙秘することが最善ですが、各自が相手が裏切るかもしれないと考え、自分も裏切ることを選択します。結果として、両者ともに裏切る選択をし、中程度の刑を受けます。これがナッシュ均衡です。なぜなら、どちらの囚人も相手の戦略を変えたところで、自分の利益が増えないからです。

ナッシュ均衡の応用例:ビジネス戦略

ナッシュ均衡は、ビジネス戦略にも応用されています。例えば、二つの企業が同じ市場で競争しているとしましょう。各企業は、次の戦略を選ぶことができます:

  1. 価格を下げる: 市場シェアを増やすために価格を下げる。

  2. 価格を維持する: 現状の価格を維持する。

企業間の競争におけるナッシュ均衡

もし両企業が価格を下げると、利益率が下がり、市場シェアは増えない。もし一方が価格を下げ、他方が価格を維持すれば、価格を下げた企業が市場シェアを増やし、価格を維持した企業はシェアを失う。しかし、もし両方の企業が価格を維持すれば、利益率が高まり、安定した市場シェアを保つことができます。

この状況でのナッシュ均衡は、両企業が価格を維持する戦略を選ぶことです。なぜなら、どちらの企業も相手の戦略を変更しても、自分の利益が増えないからです。

ナッシュ均衡の実際の応用と意義

ナッシュ均衡は、経済学、政治学、生物学など多くの分野で応用されています。例えば、市場競争、国際交渉、生物の進化戦略など、多岐にわたる場面でその概念が活用されています。ナッシュ均衡を理解することは、複雑な意思決定の場面で合理的な選択を行うための重要な手助けとなります。


ナッシュ均衡は、ゲーム理論においてプレイヤーが最善の戦略を選択した結果、誰も戦略を変更する動機がない状態を指します。囚人のジレンマやビジネス戦略の例を通じて、この概念がどのように実際の状況に応用されるかを理解することができます。ナッシュ均衡を理解することで、複雑な意思決定の場面でも合理的な選択を行う手助けになります。

次回は、ナッシュ均衡が他のゲーム理論の概念とどのように関連しているか、さらに深掘りしていきたいと思います。お楽しみに!

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