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ギタリストなら弾きたい曲 Felicidade


マガジンの分類 Notes de Soie クラシック・ギターの音の美しさ

「Felicidade」は、ブラジルの著名な作曲家アントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)が作曲したボサノヴァの名曲です。彼の代表作の一つであり、ポルトガル語で「幸福」を意味します。この曲は、映画『黒いオルフェ(Orfeu Negro)』のサウンドトラックとしても有名で、多くのアーティストによってカバーされ続けています。

1. 曲の背景と魅力

ボサノヴァの誕生とジョビンの役割

ボサノヴァは1950年代後半にブラジルで誕生しました。その特徴的なリズムとメロディは、サンバやジャズの影響を受けており、静かでリラックスした雰囲気を持ちます。ジョビンはこのジャンルの開拓者の一人であり、彼の楽曲はボサノヴァの象徴とされています。「Felicidade」は、その中でも特に美しいメロディと詩情に満ちた歌詞で知られています。

映画『黒いオルフェ』との関係

「Felicidade」は、1959年の映画『黒いオルフェ』のために作曲されました。この映画は、ギリシャ神話のオルフェウスとエウリディケの物語をリオ・デ・ジャネイロのカーニバルに置き換えたものです。映画のサウンドトラックはジョビンとルイス・ボンファ(Luiz Bonfá)が手掛け、多くの名曲が生まれました。その中でも「Felicidade」は、映画のテーマソングとして特に有名です。

2. ギタリストにとっての「Felicidade」

技術的なチャレンジ

「Felicidade」は、一見シンプルに聞こえますが、実際には高度な技術が求められる曲です。まず、ボサノヴァ特有のリズムを正確に再現することが必要です。これは、右手の親指と他の指を使った特殊なストローク技法が求められます。また、左手では複雑なコード進行をスムーズに移行する能力が必要です。この曲は、ギタリストにとって良い練習素材となるでしょう。

メロディと和音の美しさ

「Felicidade」は、ジョビンの作品に共通する美しいメロディラインと、豊かな和音進行が特徴です。特に、コードの展開とメロディの絡み合いは、弾き手にとっても聞き手にとっても魅力的です。これをギターで表現するには、メロディを際立たせつつ、バッキングのリズムと和音を維持するバランス感覚が求められます。

3. 練習方法と演奏のコツ

リズムの理解と練習

ボサノヴァのリズムは、4拍子の中に独特のアクセントがあり、ジャズとは異なる独自の揺れがあります。このリズムを習得するためには、まずは基本的なパターンを繰り返し練習することが重要です。メトロノームを使って一定のテンポを保ちながら、右手のリズムパターンを体に染み込ませていきましょう。

コードチェンジのスムーズさ

「Felicidade」には、多くのジャズコードが含まれています。これらのコードは、通常のメジャーやマイナーコードとは異なり、指の配置が複雑です。まずはゆっくりとしたテンポで、各コードのフォームを正確に押さえる練習をします。その後、徐々にテンポを上げながら、スムーズにコードチェンジができるように練習します。

メロディの表現

ジョビンの曲は、メロディが非常に重要です。「Felicidade」でも、メロディラインを美しく表現することが求められます。ギターでメロディを弾く際には、指板上でのポジション移動をスムーズに行い、各音をクリアに出すことが重要です。また、メロディに感情を込めるために、ビブラートやスライドなどのテクニックを適切に使用しましょう。

4. 実際の演奏例とインスピレーション

有名なカバー演奏

「Felicidade」は、数多くのギタリストによってカバーされています。例えば、ジョアン・ジルベルトやパット・メセニーなどの演奏は、非常に参考になります。これらのアーティストの演奏を聴くことで、ボサノヴァのリズム感や表現方法を学ぶことができます。

自分なりのアレンジ

「Felicidade」は、ギタリストによって様々なアレンジが可能です。基本的なリズムとコード進行を習得したら、自分なりのアレンジを試みてみましょう。例えば、ソロギターでの演奏や、他の楽器とのデュオなど、様々なスタイルで挑戦することができます。

「Felicidade」は、ギタリストにとって技術的にも表現力的にもチャレンジングな曲です。しかし、その美しいメロディとリズムをマスターすることで、大きな達成感と演奏の喜びを得ることができます。ジョビンの音楽を通じて、ボサノヴァの魅力を存分に味わい、演奏の幅を広げていきましょう。

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