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BookReview 世界は贈与でできている


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人間はなぜ、プレゼントを贈るのか

クリスマス、バレンタインデー、誕生日、結婚記念日。プレゼントを贈る機会は数え切れません。なぜ私たちはこんなにもプレゼントが好きなのでしょうか?それは、贈り物が単なる「モノ」ではなく、特別な意味を持つからです。同じ商品でも、プレゼントとして受け取ることでその価値は大きく変わります。例えば、友人からもらった手編みのセーター。お店で買うセーターとは違い、その背後には贈り主の思いと時間が詰まっています。

生まれた時点で贈与の連鎖は始まっている

人は生まれた瞬間から無償の愛という贈与を受けています。厳しい母親が孫には甘いのは、贈与の連鎖が関係しているからです。親に育てられた経験が、自分の子供、そして孫へと引き継がれます。親から受けた無償の愛を、次の世代に渡すことで贈与のサイクルが完結するのです。このサイクルを意識すると、私たちがどれだけ多くの贈与を受け、また与えているかが見えてきます。

贈与と社会福祉の関係性

社会はgive&takeで成り立っています。しかし、giveするものが尽きたとき、私たちは贈与に頼らざるを得ません。孤立して生きている人々は、この贈与のネットワークにアクセスすることが難しいかもしれません。そういったときこそ、社会福祉の重要性が増します。贈与を受け取ることができる人間関係を築くことが、社会全体の安定に繋がるのです。

贈与は人知れず行うべし

贈与は見返りを求めないからこそ、その価値があるのです。例えば、匿名で寄付を行うこと。見返りを求めずに行動することで、真の贈与となります。また、日常生活の中で他人に親切にすることも、贈与の一形態です。後になって「あれは贈与だったのか」と気づいてもらえるような行動が理想的です。

実例: 駅での贈与

ある日、私がいつも通勤に利用する駅で、ちょっとした感動的な出来事がありました。電車を降りて改札に向かっていたところ、前を歩いていたおじいさんが急に財布を落としてしまいました。彼はそれに気づかずそのまま歩き続けていたのですが、通りがかりの若い女性がすぐにそれを拾い、おじいさんに駆け寄って財布を手渡しました。その時、おじいさんは深く感謝し、女性も「気にしないでください」と笑顔で応えました。

その光景を目にした私は、見知らぬ人同士が思いやりを持って接する姿に心が温まりました。次の日から、私は駅で困っている人を見かけたら声をかけるようにしようと思うようになりました。例えば、重い荷物を運んでいる人を見かけたら手伝ったり、道に迷っている観光客に道案内をしたりと、小さなことから始めました。

この経験を通じて、私は贈与の連鎖がどのように広がるのかを実感しました。贈与は大きなことでなくても、日常の中でちょっとした親切を示すことで、多くの人に感動と温かさをもたらすことができるのです。そして、その親切がまた別の人へと広がっていくことで、社会全体がより良いものになっていくのだと思いました。

逸脱的思考によって可視化できる贈与

日常の中で贈与に気付くためには、常識を疑い、日々の小さな変化に目を向けることが大切です。例えば、朝の通勤途中に落ちていた空き缶が、夕方にはなくなっていると気づいたことはありませんか?それも誰かが気付かれないように片付けてくれた贈与です。こういった小さな変化に気づくことで、私たちもまた誰かに贈与をする意識を持つことができます。

書評

現代社会はますます個人主義が強まり、効率やコスパが重視されるようになっています。しかし、『世界は贈与でできている』は、そんな時代に一石を投じる一冊です。贈与の大切さを改めて考えさせられる内容であり、人と人とのつながりを見直すきっかけになります。

この本を読んで、私たちの社会が贈与によって成り立っていることを再認識しました。そして、贈与の精神を持つことが、より良い社会を作るための第一歩であると感じました。特に、現代の子供たちが学ぶべき価値観として、持続可能な社会の構築に欠かせない「贈与」の考え方は非常に重要です。


『世界は贈与でできている』は、贈与の本質を探求する素晴らしい一冊です。この本を通じて、私たちがいかに多くの無償の愛を受け、そして与えているかを再確認することができます。読者の皆さんもぜひ、この本を手に取って、贈与の連鎖を感じてみてください。そして、日常の中で小さな贈与を実践することで、周りの人々と素晴らしいつながりを築いていきましょう。

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