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辻潤のひびき「古谷栄一について」

辻潤のひびき参考資料>5.古谷栄一について

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古谷栄一について
 辻潤の「錯覚自我説」「錯覚した小宇宙」に出て来る古谷栄一については、少し前に調べてみたが、殆ど何も分らなかった。戦後の『虚無思想研究』の中に、国家主義の人という文章を見つけただけであった。国会図書館蔵書の著者索引にも名前がなかったので、それであきらめた。
 実は今もって分らない。『ニヒリスト 辻潤の思想と生涯』の中で、松尾邦之助の所に訳の分らないものを寄越したとか、何か不快げに書いてあったようだ。やっと大東亜戦争前の帝国図書館蔵書目録の中にその名前を見出し、著書を幾つか見つけることができた。
 古谷栄一は哲学者ということになるが、特に日本とかドイツでは哲学者というとアカデミーに関係した人で、かたわらドイツ語でも教えながら哲学でも研究する人ということになっているようだが、古谷栄一はアカデミーの人ではないようだ。それが彼が全く忘れられた一因でもあるのだろう。著書の中には出版社が記されていないものがある。おそらく個人出版なのだろう。何とものずきな。そして辻潤もまたよくも古谷栄一の本を見つけたものだ。辻潤によると、古谷栄一は『オイケン哲学の批難』という本を出して居るようだが、それは見つからなかった。このオイケンにしてからが今日では幽霊のようにその姿が見えない。そのオイケンを非難した本が見えないのも無理はなく、見えたら奇跡に近いだろう。
 帝国図書館蔵書目録大正編にあった古谷栄一の著書は次のようなものである。明治編にはなく、昭和にある古谷栄一は、「防共強化か三国同盟か」といった政治の本の著者なので同一人物かどうか分らないが、10 冊ほど出て居る。

1.エネルギー不滅則とニウトン運動第一則との形而上的困難
2.人間の自我は錯覚 付 哲学の基礎としての純粋経験の困難 T.12 83p.
3.比喩的形象主義之世界文字論概要 古谷栄一(述) T.14 64p.
4.循環論証の新世界観と錯覚自我説 池上村(東京府) T.15 240p.
5.虚無哲学体系 第一巻 春秋社 T.15 419p.
 第一巻 人間の自我は錯覚 附 虚無思想と日本主義との調和の原理
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