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予告

「辻潤のひびき」のような年譜が作りたい。
そんな野望を抱き、メモを取りながら著作集を読み進めている。一向に進まない。あっちに寄り道したりこっちに寄り道したり飽きてきたり。一向に進まないというのは語弊があるな。皆無である。お手上げである。そしてある考えが頭をかすめるのだ。「辻潤のひびき」ミラーサイトを再構築した方が良くないか?

読書に必要なのは楽しむ心。読み手が読みたいように読めば良い。年譜作りに必要なのは徹底的な懐疑主義と資料批判。当事者によって書かれたものでも錯誤、錯覚が存在する。この前提で他資料との整合性妥当性を追求する。欲しい情報は6W1H。いつ、どこで、誰が、誰に、何を、なぜ、どのような視点/趣旨で書いたものなのか。

例えば「陀々羅行脚」。『絶望の書』に収録されている紀行文である。本文から1923年3月以後の記述であることは分かる。1923年9月1日の震災に言及しているからそれ以後のものであることも分かる。『絶望の書』序文が1930年10月だからそれ以前の発表であることも分かる。箇条書きにすると下記のようになる。
・1923年3月以後の記述(本文から)
・1923年9月1日以前の記述(震災以前)
・1930年10月以前の記述(『絶望の書』序文から)

問題は「いつ」(発表時期)と「何を」(紀行内容)の部分。紀行内容は1923年3月以降で9月1日以前とは特定できる。発表時期は序文1930年10月以前と言える。それでは、初出はいつなのか。どの雑誌に、どんな趣旨で発表したものなのか。小見出しが6まで付いてるから6回に渡って連載されているように推察されるのだが。

『絶望の書』収録の目次構成は下記の通り。
・陀々羅行脚(小見出し4まで)
・_博多から長崎まで(小見出し5から6まで)
・_島原と天草のグリンプス(小見出し7に相当)

『辻潤全集 別巻』の年譜によると
・「陀々羅行脚」の4まで:1924年12月『世紀』第一巻第三号。
・「島原と天草のグリンプス」:1925年02月『東京』第三巻第二号
・「通俗陀々羅行脚――博多から長崎まで」:1925年07月『新小説』

唖然とした。執筆対象(紀行順)はABCだが発表時期はACBなのだ。しかも掲載場所がバラバラ。実はこの追跡調査も手元にある「辻潤のひびき」で検索をかけている。その検索結果に対して『辻潤全集 別巻』で裏を取っているのだ。電子化されたものはやはり偉大だよ。「辻潤のひびき」が無かったら『辻潤全集 別巻』の年譜を目検で追うことになっていたし。そもそも年譜に記載されていない可能性もあるわけだ。その場合は延々と彷徨うことになるのだから。

改めて紹介しよう。
「辻潤のひびき」とは、et.vi.of nothing氏による辻潤の研究サイトである。トップページのスクリーンショットを載せれば雰囲気を掴めるだろうか。

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辻潤に興味があってここを読んでいるなら気づく方もいるだろう。そう、青空文庫「辻潤」作品の入力者、et.vi.of nothing氏その人である。

圧巻だったのは辻潤年譜。
『辻潤全集 別巻』の年譜を下敷きとしつつ矛盾と思われる点を他の資料から整合性チェック。それでも解消されない疑問はメモとして残してゆくというもの。「年譜作成に当たって」のページが泣ける。メモ取りながら著作を読んで行くとその苦労と苦悩が痛いほど追体験できる。そしてここに貫かれているのは徹底した懐疑主義と実証主義。自らの作業をも懐疑し、他者が再検証できるように出典を載せてくれているのだ。
他にも「実話蔵前夜話」の全文入力を置いていたり。「辻潤に関する新聞雑誌記事」のページを作成していたり。二重の意味で泣ける。辻潤ファンとして読むことができる歓喜の涙と、その作成苦労に思いを馳せて流れる共鳴共振の涙。

実はこのサイト、2000年代初頭に閉鎖されている。それを惜しんだKANENO Mushinという人がYahoo!ジオシティーズにミラーサイトを残していた。2019年3月31日をもって、Yahoo!ジオシティーズのサービスも提供終了となる。ミラーサイト「辻潤のひびき」も消滅してしまった訳だ。

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辻潤についてネットで検索をかけると、引用元として「辻潤のひびき」をよく目にする。リンク先がgeocitiesの場合、それはミラーサイトである。オリジナルはjustnetであった。

今回、wordpressに登録してミラーサイト「辻潤のひびき」を試みた。その結果は、断念。理由は2つある。

1.Webサイト構築方法が異なる?
階層構造。フォルダとファイル。ディレクトリとも言う。パソコン使いにとっての基本概念で、ファイルの管理はこの階層構造によって行う。ミラーサイトの管理も同様で、HTTPのURLが階層構造に対応している。そうすることによってFTPによる一括送受信が可能になる訳だ。
ところがwordpressの無料サービスでは異なるらしい。何がしたいのか。FTP一括送信がしたい。どこを設定すればできるのか。ワカラナイ。以前は階層構造や親子関係を作る時にindex.htmlページをRootとして同階層に別名ファイル、子階層にフォルダとファイル群を保存していたのだが。wordpressの無料サービスは違うらしい。ワカラナイ。この一語に尽きる。かつての無料サービスとは勝手が違うようだ。

2.HTML文法が大幅に改定された?
wordpressの無料サービスにミラーサイトのファイルを一つアップロードしてみた。表示のされ方が微妙に違う。
実はローカルファイル側でもこの問題が確認されている。「辻潤と唄」(Song.html)というページ。これをブラウザ(Google Chrome87.0.4280.88)で開いても真っ白な画面が表示されるだけなのだ。この20年間でHTML文法が改定されてしまったのかもしれないし、そうでないのかもしれない。ただ単に俺の理解不足なのかもしれないし、そうでないのかもしれない。俺は馬鹿だと謙虚に慎ましく低空飛行しているつもりだが、実際はオノレが思っている以上の大馬鹿なのかもしれない。下方修正しておこうか。俺は大馬鹿だ。実際はそれ以上の大大馬鹿だったらどうしよう。更に下方修正しておこうか。俺は大大馬鹿だ。実際はそれ以上の大大大馬鹿だったらどうしよう。うわーん、ママン、どうしたらいいですか?

前振りが長くなった。

予告しよう。このNoteにミラーサイト「辻潤のひびき」を復元すると。

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