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「待つ」ことが広げてくれるもの。

はじめてかもしれない、こんなに「待つ」ことを経験しているのは。

草々をオープンして1ヶ月が経った。お店にひとりでいると、当たり前のことだけれど「待つ」時間が多い。

オープン前は、開店準備でどたばたしながら色んなことを想像する。今日はどんな出会いがあるかな、いいうつわや体験と出会えたらいいな。ワクワクとドキドキと。うつわを並べたりお花を活けながら、なるべく一つひとつのことに、願いを込める。

そうしてお店が開いて、ありがたいことにぽつりぽつりとお客さんがきてくれる。草々は2階にあって、入り口に到着するまでに階段がある。だからひとりでカウンターにいてもお客さんが階段をのぼる音で「誰か、きた!」と気づく。瞬間、直立不動になって、うれしさをこらえながら少しだけ前のめりで挨拶をする。最初は恥ずかしくて小さな声だった「いらっしゃいませ」が、最近だんだんとほどよい大きさとおだやかなトーンで言えるようになってきた..気がする。

毎日毎日、「待つ」時間が長いからこそ、うれしさは絶大だ。
草々は駅近でもないし、市内からもすこし離れたところにある。目指してこないとたどりつけないようなお店だ。だからこそ、わざわざ来てくれることがいちいちうれしすぎるのだ。

先週は、1時間以上もかけて電車を乗り継いできてくれたお客さんがいた。それを聞いて「あぁ、申し訳ないな」という気持ちがよぎったけれど、お客さんの姿をみてすぐに吹っ切れた。草々に来ることをすっごく楽しみにしてくれたみたいで、一つひとつのうつわをじっくり見て迷いながら店内を何往復もしてくれて、たくさんおしゃべりもして、お気に入りのうつわを見つけてくれた。そうしてうれしそうに帰っていった。

お見送りしながら、「背中は気分を語るんだ」ってことを知った。

同時に気づいたのは、「待つ」ということは、お店をやっている私だけではなく、来てくれるお客さんにとっても同じくらいの濃さで起こっているのではないかということだった。
草々のことを知ってくれて、いつ行こうかと決めて、仕事をしながら休日に行けることを楽しみに、「待つ」。まぁまぁ遠いけれど、電車や車、徒歩で向かっている時間に想像をふくらませる。どんなお店なんだろう、どんなうつわに出会えるのだろう。そうして、お店に着いて入った瞬間に「わぁ」っとなる。出会えても、出会えなくても、自分でいくことを決めて足を運んだ時間はきっと誰にとっても特別なものだろうと思う。

だから私は、その「待つ」をがっかりさせないような、なにかを持って帰れるようなお店であり続けたいなぁと思う。たくさんあるうつわの中からお気に入りを見つけるだとか、おしゃべりしたことやお店で見た風景がずっと心地よく残り続けるような、そんな場所。

一般的に「お店」って、長居できるようなところではないと思う。お店側は「回転率を少しでもあげたい」、お客さん側は「長居してしまうと悪いな」という気持ちが働いてしまうことが多い。実際にわたしもよく経験しているし、経営のことを考えると、避けては通れないことでもある。

でも、そんななかでも誰にとっても時間は有限なものなのだから、その大切な時間をもっと「味わう」ことができたらいいなぁと思う。味わうことでしか出会えないこと、ひらいていく感性ってきっとあるだろうと信じている。

「待つ」ことがご褒美に変わるような、そんな場所に育てていきたい。1ヶ月お店に立って、改めて思ったのです。

また明後日からせっせと看板を置きます。
そういえば、こうしてnoteを書いている時間も「待つ」時間なんだよなぁ。

***

うつわと暮らしのお店「草々」

住所:〒630-0101 奈良県生駒市高山町7782-3
営業日:木・金・土 11:00-16:00

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