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世界の文様❶ 世界最古の文様

みなさま、2022年新年あけましておめでとうございます。
今年からここにおいて、さまざまな文様を紹介していきたいと思います。
私はきもの研究家であり、きものやその染織技術全般を次世代に繋げていくための活動をしていますが、一方で日本だけでなく世界の文様の研究もしています。昨年5月には講談社学術文庫より「和の文様辞典 〜きもの模様の歴史〜」と言う本を出版いたしました。よろしければ是非ご覧ください。

文様とひと口で言っても、線引きがあるわけでなく、皆さんがご存知の日本のきものはもとより、世界各地の衣装の文様、宗教、建築、装飾、書物など様々なものに施されているものや、文明による遺跡に残された考古学的なものまで無数に存在するのです。

それらを専門に研究しているとはいえ、もちろん全てを網羅しているわけではなく、まだまだ発見と学びの連続であることは言うまでもありません。

文様には3つの表現があります。「文様」「紋様」「模様」です。それではそれぞれをどう使い分けているのでしょうか?一番わかりやすい例として、NHKではこれらの使い分けを下記のように分けています。
❶文様・・・美術・工芸としてつけられる図形のことを示す
❷模様・・・ものの表面に自然に発生する、または人工的に表された図、絵、形などのこと。また、なりそうな様子やそのような状況、という意味で慣用句として用いることもある。
❸紋様・・・染物・織物などにつけられる図形

ここではこれらを人間の表現ということにフォーカスし、「文様」と言う表現をすることにします。

さて、文様の1回目は文様の起源について触れたいと思います。
冒頭の写真は南アフリカのブロンボス洞窟で発見された世界最古の文様といわれる7万5000年前の確かに人によって描かれた文様です。古人類学ではこれを「ホモ・シンボリクス」と呼ばれています。
文様的には幾何学文様に分類されますが、三角形が連なった文様が描かれています。これが果たして何を表現しているのかは不明であり、現代の感覚で考えがちですが、それは間違いです。

古人類学でこれを考えると、60万年前に我々の祖先は現代人のような音声器官は備わっていたそうですが、コミニュケーションに使用していた音声?はチンパンジーとさほど変わらない程度だったようです。ところが、そこから50万年以上経て、7万年前頃から人類の文化的創造性は飛躍的に進化しました。ボストン大学の神経学者であるアンドレイ・ヴィシェドスキー博士の研究論文では、7万年前にメンタル統合と再帰言語を取得したことで、本質的に行動が異なる新たな種が誕生したが、それは真に現代行動をとる最初のホモサピエンスである。といっています。

そう考えると、この7万5000年前に描かれた世界最古の文様と言われるものは、何かの伝達を意味しているものと考えても不思議ではありません。
それが何かの目印なのか?何かのメッセージのような意思表示なのか?それとも何かを表現したものなのか?はたまた抽象的な絵画的なのか?

いずれにしても、ヴィシェドスキー博士が言う「劇的な脳の発達」がなされていた可能性のある人類によって描かれた表現であることには間違いないと思います。

そしてその後、長い年月の中で文様は旅をします。旅をしながら、使われ方も表現方法もそして意味も無数に変化していくのです。

「一は始まりであり、一は全て」と言います。
人類の感情やコミニュケーションの発達と共に文様は進化するように、人間と文様は切っても切れない関係であると思います。

2022年元旦から始まる文様の旅。
今回は第1回目として、現時点で世界最古の文様を紹介いたしました。
これからもご期待ください。

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