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ラスボスが高人さんで困ってます!33

「ちょ、ちゅんたッ……まってッアッあぁ!!」
「まだです、まだ……もっとッ」

気付けば障子の外は薄暗くなっている。もう秋も深まり日の入りも早い。暗くなった部屋で、俺は今にも高人さんを喰い尽くしてしまいそうな程に欲情し、抱き続けていた。
着物はとうに全てを剥ぎ取り、二人一糸纏わぬ姿で肌を重ねている。

四つ這いで上半身をぐったりと布団に沈ませて、ふらつく腰を俺が支えてやる。溢れ出る白濁を中に戻すように、グリグリと彼の奥に俺自身を捩じ込んだ。
「あっ……ァッぐっくるし……っ」
「はぁっはぁっ……」
いくら中に押し込もうと入りきらない欲望は、いやらしい水音をたてながら溢れ、彼の太ももを伝い流れ出ていく。
彼の身体はずっと快楽に震え弛緩していたが、俺はまだ彼を離してやれない。
俺は後ろから彼を抱きしめて、激しく腰を打ち付け、首筋をベロリと舐めた。
「ァッあァッ!あっはぁ……んッ」
高人さんは眉を顰め涙目だ。されるがまま俺を受け入れてくれている。決して苦痛だけでは無い蕩けた瞳は、俺を昂らせていった。

ミストルに帰ったら、きっと逃げられない。
そうなった時、俺は高人さんを守り切る事ができるのだろうか。
発作のように湧き起こる不安を振り切るように彼を彼を強く抱きしめる。
「ちゅんた……」
「高人さん……ッ」
泣きそうに呼ばれて、俺はズルリと自身を抜き取り、彼を仰向けに寝かせて、噛み付くように唇を奪う。
「んンッはぁっ」
キスをしながら何度となく犯したそこに自身をピタリと押し付け、また中へと押し入ると彼のそこは俺に抱き付くように締め付けてきた。
「あッァッ!」
「高人さん……っ……気持ちいい??」
彼はコクコクと頷く。蕩けた瞳は濡れた宝石。黒の絹糸のように滑らかな髪……紅色に染まる血色の良い肌……吸いすぎて赤くふっくりと腫れた椿のような唇は唾液に濡れて、涙が目尻を濡らす。
下半身は俺と貴方の欲望でこれ以上ないほどに濡れている。

ああ、俺の宝石。大切で大切で恋焦がれて仕方ない。
誰かに取られてしまうくらいなら、いっそ共に連れて逝きたい。そう思わせるほどに俺は彼に溺れている。 
彼もそれを望んでくれた。

けれど……けれどそれでは駄目な事もわかっている。

「高人さん……愛してます。」
縋るように彼を見つめていると、濡れた瞳がこちらを見つめた。
「そんな顔するな。大丈夫だから。ずっとそばにいる。」
ぎゅっと抱き寄せられ髪を撫でてくれる。こんなに酷く抱いてしまっているのに、彼はそれでも優しい……。
罪悪感と愛しさと……これからの不安を振り切るように彼をぎゅっと抱きしめた。

――――――

月がもうあんなに高い位置にある。障子を開き、広がる庭を眺める。秋の月は美しく輝き庭を照らす。生垣の隅に生えたススキがサワサワと揺れ、そのしばらく後に冷えた風が部屋へと入ってくる。

高人さんは隣でスゥスゥと寝息を立てていた。彼の布団を肩まで掛けてやる。
口寂しい。彼を見ているとまだ犯し足りなくて、寝ている彼を襲ってしまいそうだ。
俺は虚空を開き、アイテムボックスから煙草と着火用の燐寸を取り出す。

煙草なんて、何年振りだろう。細身の紙煙草に火を着け、パッパッと吹かして火を拡げた。見る間に紙と葉が灰になり落ちる。
肺に煙を満たして、ふぅ――ッと外に向かい煙を吐き出す。
美味しくもなんともない。ただ、口寂しさを紛らわすだけだ。
りぃ――んりぃ――んと鈴を転がすような虫の声に耳を傾ける。

孕みにくいという彼の言葉通り、彼はまだ子供を宿していないようだ。
もし、俺に万が一の事があっても、もし子供が居れば彼は子供を優先するだろう。孕れば本能的に警戒心も強くなる。
死ぬ時は一緒に死にたいけれど……。

彼は最後の龍であり、この国の希望だ。俺が居なくなっても……子供が居ればきっと支えになるだろう。もしどうにもならなかったら自害をしてでも……。

この事は絶対に彼には言わない。
高人さんはきっと許さないだろう。
眠る高人さんを見つめて髪をサラリと撫でた。
最後の最後まで彼と共に。もし逝く事になるのならば、その時は……俺一人でいい。

月の光が瞳を冴え冴えと光らせる。俺は貴方を生かす方向で動く。あの国が滅ぶか俺が滅ぶか。

勝負だ。

俺は不安を覚悟に変えて、煙草を握りつぶしたのだった。

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