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dom/subを体験してみました。-短編-

今日は久しぶりのオフ日だ。

佐々木さんからは、3日間羽を伸ばしてと言われている。
「そうは言われてもなぁ。」
こんな日は何をして良いか分からないな。仕事が趣味みたいなところがあるから家に居たって結局台本読んだり役作りの資料を纏めたり。休みか…休み休み…。

チュン太は今日まで仕事で明日から休みらしい。
「チュン太んち行って待ってるか。」

俺はさっそく身支度をしてタクシーを拾ってチュン太の家に向かった。

「チュン太にメッセージ送っとくか。」
走るタクシーの中でタタタ…っと文字を打つ。最近打つのが早くなったと思う。

――暇だからお前んち行っとく。――

すぐに返事が返ってくる。

――冷蔵庫におやつのプリンとケーキがあります。お昼はテーブルにサンドイッチがあるので食べてください。終わったらすぐ帰りますね♡――

「あいつ…いよいよ俺の保護者みたいだな」
俺の行動はバレバレのようだと苦笑した。

チュン太の部屋に着くと慣れた手付きでロックを解除し中に入った。入った瞬間、チュン太んちの香りがして落ち着く。

スタスタとリビングに行くと、上着を脱いで置きソファーに座ると雑誌を広げる。

ふとテーブルに棒つきの丸い飴が転がっているのを見つける。苺味と包みにかいてあるそれは、子供のころによく舐めていた飴にそっくりだった。

「なんだチュン太、甘い物なんてあんまり食べないのに。貰い物か?」
まぁ、あいつは食べないだろーな。と思い、雑誌のお供にぺりぺり包みを剥いで口に頬張る。
「うっま…なんだこれ。」
食べ切ってしまうのが惜しいくらいに美味しい飴だ。

食べているとなんだか眠くなってきて、食べ切ったころには眠ってしまっていた。

「…―かとさん、高人さん起きて」
「ん、なんだチュン太か、俺いつの間に寝ちまったんだ…」

ふぁー!と欠伸をしていると、チュン太が神妙な顔で俺を見ている。

「これ、食べちゃいました?」
見れば飴の包み紙だ。
「ん…ああ、すごく美味しかった…あ、だめだったか…?」
目を擦りながら起き上がる。よく寝た。外を見ればもう夕暮れだ。

「いえ、ダメというか…身体は大丈夫かなと。それ普通の飴と違うんで…先に俺が食べてからって思ってたんですが…。なんともないですか?」

「?…ああ、なんともないな。てか変なもんテーブルに置いとくなよ。食べちまったじゃねーか。美味しかったけど。」

「なら良かったです。ちょーっと待ってくださいね」
チュン太は何かの説明書と、飴をもう一つ手に持っている。

チュン太が持っていたのは青い包装の飴。それを開封し、ぱくっと自分の口に入れると俺の隣に座った。

「チュン太が飴なんて珍しいな。」
「普段は食べませんね…。」
チュン太は俺の問いかけに生返事をし、説明書をじっくり読んでいる。真剣そのものだ。
ただし、飴をコロコロと舐めながらなのだが。

「へぇ…面白いな。」
意気揚々と読み進めている。
「これ、ちょっとしたスキンシップグッズなんです。最近流行りなんだそうですよ。」

「その飴がか?確かに美味かったけど、これがなんでスキンシップグッズなんだ?」

ただの飴じゃねーか。

そうしてる間にチュン太も飴を食べ終わる。ペロリと唇を舐めながら俺に視線を向けた。
「高人さん俺を"Look/ルック"(見て)」

「へ…っ⁈」
チュン太から目が離せない。
頭がふわふわしてくる。

「高人さんは誰のもの?"Sey/セイ"(言って)」
真剣な目、それでいて優しくて逆らえない光。
答えなきゃ。と思ってしまう。
「チュン太の…もの」 
「Good‼︎ good boy‼︎(いい子!よく出来ました‼︎)」
チュン太が抱きしめて頭を撫でてくれる。
それだけで嬉しくて嬉しくて堪らない。

「なんだこれ…怖いんだが」

抱きしめてもらったまま、チュン太の持ってる説明書を横取りする。

「なになに…"dom(ドム)/sub(サブ)ユニバースキット"?なんだこれ」

「んー簡単に言うと、気持ちよく素直になれちゃう薬?…みたいな…」
ちょっと考えて、にこにこと怒られなさそうは単語だけ並べてくる。

「…」
なんかかなりハショッてないか?ジト目でチュン太を見た。

チュン太は、やっぱ流してくれないよな…と、説明を始める。
「domとsubていうのは、いうなれば性です。簡単に言うと、domは支配したいという欲求がある人、subは支配されたいという欲求がある人。これが表面に顕著に出て言葉にも力を持つんだそうです。この状況を一時的に作るのがこの飴。最近話題なんです。」
へぇ。最近は妙なもんが流行ってんだなぁ。

「んで、今の英語は?あれ凄いお前の声で聴くと逆らえない感じだったぞ。」
「でも、気持ちいいでしょ?」
たしかに気持ち良かった。なので素直に頷く。
チュン太は満面の笑みだ。コイツはコイツで飴の効果が出ているようだった。

「あれはコマンドって言う逆らえない命令?言葉の力ですかね。domとsubの双方の欲求を満たすワードです。例えば―…」
俺の顎をくいっと上げて、視線を自分の目に固定する
「"Look/見て"。」
チュン太の言葉で目が離せない。
「…っ、ほら、高人さんはもう俺から目が離せなません♡」
普段ならふざけるなと言っている所なのに、そんな気さえおきない。見ていればいいの?と従順な思考になってしまっていて流されてしまう。
「可愛い高人さん。"good/いい子"。でもまだ"Stay/ステイ"(そのまま)で。」
チュン太に頭を撫でてもらって、恥ずかしくて下を向こうとしたが、stayと言われているので思いとどまる。まだ見てないといけないのだ。

「…これはまた…」
チュン太の熱っぽい視線にゾクリとする。

「チュン太…なんか変な感じ…」
視線が逸らせない。
「どう変なんですか?」
「……っ」
恥ずかしくて口籠もる。
「"Sey/教えて"」
チュン太が発したコマンドに口が開いてしまう。
「あ…っえ…えっちな気分に…なって…その…」
目が逸らせなくて、それでも口は恥ずかしい言葉を並べていく。
も、もうこれ以上は…っ。涙目になってしまう。
チュン太はハッとしてぎゅっと抱きしめた。
「もういいですよ。lookもおしまい。すみません、やり過ぎました。」

チュン太に抱きしめて貰えると、肩の力が抜けて落ち着く。
「なでなでは?」
見上げて催促してしまう。だって頑張ったのだから当然だ。
「…っ、はい、撫で撫でしましょうね。"good boy/よく出来ました"」
チュン太は髪を梳くように優しく頭を撫でてくれた。
すごく気持ちいい。

「こんな具合です。どうです?凄いでしょう?」
確かに凄い。支配される心地良さはクセになりそうだ。
「あと、やりすぎ防止に、セーフワードを決めておくみたい。 subが嫌だと思ったらそれを言うんです。」
「…先に決めとけよ」
ジト目で抗議する。
「すみません。ちょっと試すつもりが熱が入っちゃって…」
困ったように笑うと、また、すみません。と頭を撫でてくれた。

「で、セーフワード何にします?」
チュン太が顔を覗き込んで聞いてくる。
「…"ばか天使"で。」
「了解です♡」
にこりと笑うチュン太を見て、俺は諦めたようにため息を吐いた。

やれやれだ。

――――――――――
あとがき

ちょっと先にこれを吐き出してしまわないと次に行ける気がしませんでした。dom subちゅんたかです。Twitterでパロディを見て衝撃を受けて色々調べてこのジャンルの魅力に気付いてしまいました。とりあえず他の方のを読む前に自分の文字を起こしておきたくて書いてみました!

今回はそういう主従関係の擬似体験ができるキットがあるって事にしています。
効果持続時間は2日間くらい。精神作用のある薬(飴)で副作用無く気付いたら作用が消えている感じです。
まだ色々dom subの基本設定があるようですが軽く流しただけなのであまり出しませんでした!

続きどーしようー⁈
とりあえず、長編に戻ります♡
読んで頂きありがとうございました♪



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