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耳がとろける会議

ついに、出会ってしまったのかもしれない。

ちょっとハスキーで、おっとりとして、それでいて凛としている、

理想の声に。


ミニーマウスのカチューシャをつけた女性が、アイコンの中で控えめに微笑んでいる。直接あったことはない中国人の同僚。アイコンしか情報がなくて、その写真が今の彼女なのかすら分からない。(昔の写真を使っている人がけっこういる。)

そんな彼女と、あるプロジェクトではじめて一緒になった。

はじめての会議は、わたしを含めて日本人ふたりとそして彼女ひとり。外国人の同僚が会議にいれば、当然つかう言語は英語になる。そのはずだった。

「はじめまして、よろしくお願いします。」

「それではこの内容はわたしが確認しておきます。」

びっくりした。中国人の彼女からなめらかな日本語が聞こえてくる。しかもネイティブ級。というか、わたしよりも綺麗な日本語だった。

そしてなによりも、その声が綺麗で、ストレスなく入ってくるの。


渋みもありつつ滑らかな味わいのワインのように。

甘口だけど後味さっぱりな日本酒のように。

たとえが全部お酒なのこわい。

えーっと、甘くて酸っぱいイチゴのように!

ごめん、わたしの食への興味は薄かった。

一見すると相反する特性が絶妙なバランスでまざりあったとき、極上というのかもしれない。


ちょっとハスキーで、おっとりとして、それでいて凛としている、

彼女の声は、ひとを、主にわたしをうっとりさせる。


声って大事で、わたしはこれまで、会議ではハッキリと話すようにしてきた。少し強弱をつけて、語尾は言い切るようにする。

「お願いしますっ。」

それは会議には緊張感があったほうがいいと思っていたから。

それにたいして彼女の声は、フラットでゆっくり、そして語尾は消えるように抜けていく。

「おねがいします。」

それでも、主張するべきことはしっかりと言う。会議全体の雰囲気はなごむけれど、決めるところはしっかり決める。


もしかすると、会議の場では緊張感よりもなごやかな方がいいのかもしれない。

緊張感があると、場がひきしまって意見を受け入れてもらいやすい、と思っていた。けれど、なごやかな方が、萎縮する人が減って意見がでやすくなっていいだろう。

心理的安全性が大事っていうものね。時間内に終わらせることばかりに意識がいって、参加者を焦らせて意見がでなくなっては意味もないものね。

つくづく声って大事だなと思う。もちろん内容もだけど。


彼女の声に聞きいるようになってから、他の人の声も気になるようになった。

オンライン会議のほとんどは、顔が見えないから声だけに集中することができる。


言葉が強くならないように、語尾を丸くする人。
意見を否定されて少しイライラしている人。
会議の時間が過ぎて焦っている人。

顔がみえなくても、声で相手の表情が予想できるようになった。

いやいや、仕事で相手の表情を読めてもいいことないから。少し鈍感な方がいいからね。

声に集中するのもほどほどにしよう。


さて、明日は彼女も参加する会議がある。他の外国人もいるので、今回は英語。

英語も美しいんだよ。会議の内容は入ってこずに聞き入っちゃうんだよね(笑)。唯一楽しみな会議です。

よし、集中しようー!



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。また次の記事でお会いしましょうー!


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