(世の中のすべての)りょーちんへ

りょーちんへ
あるいはりょーちんを見て心が疼いている君へ

りょーちん、元気ですか？
仕事は楽しいですか？ご飯はしっかり食べていますか？ちゃんと眠れていますか？

りょーちん、きみはとっても偉いです。
誰がなんと言おうと、偉い。よく頑張っているね。
りょーちんは、本当に優しい子だから、自分の辛さや苦しさを後回しにして、家族や友達に寄り添うことを優先するよね。
なかなかできることじゃない、とびきり優しいりょーちんだからできることです。
そのうえで、少し私の話を聞いてください。

まずは、最初も聞いたけれど、食事と睡眠はしっかりととれていますか？
今、りょーちんが、心と身体のどちらかが元気じゃなかったら、もしくは元気かどうか判断がつかない状態だったら。
まずはすぐに周りの大人に声を掛けてください。
「ちょっと疲れてる」「何か食べたい」「ぼーっとしてたい」
なんでも良いよ、言える人はいますか？
友達か、職場の同僚や先輩か、ご近所さんか。
そういう「自分のことを知っている人」に弱さを出すことがどうしてもできなければ、病院か役場に行ってみてください。
それもできなければ、何かしらの相談窓口への電話でもいい。

りょーちん、誰かに話してみよう。悩みを打ち明けなくてもいいから、笑えるようになるまでそばにいてもらおう。
アントニオ猪木さんも言ってるけど、「元気があればなんでもできる」ってあながち間違ってない。
少なくとも、「元気がなければなにもできない」からね。
まずはりょーちんが元気になってみよう。

そして、りょーちんを悩ませている、お父さんのこと。
お父さんのこと、誰かに言うの、怖いよね。
誰かに相談するのってすごく勇気がいること。
だって相談するって、それが現実だって認めることだから。
丸裸の自分を誰かの前にさらすってことだから。
だけど、優しいりょーちんはきっと、お父さんを助けたいって思ってるでしょ。
だとしたら、誰かに相談した方がいいと思う。だって、お父さんは今、心の病気だから。
病気に対して素人のりょーちんじゃ、お父さんを助けきれない。支えることはできるけど。
だから、専門機関に相談して、新しい一歩を踏み出すお父さんをそばで支えてあげよう。

りょーちんが相談することで、お父さんが悪者になるとか笑いものになるとか思ってる？
そんなことは決してないんだよ。
だから大丈夫、お父さんのためにも誰かに相談してみよう。
「相談する」という行為ができるだけでもすごいことだと思う。
優しくて、勇気のあるりょーちんは、きっとお父さんの拠り所になるよ。

もし、もしね、りょーちんがお父さんのこと
「こいつのせいで俺が苦しめられてる」
「なんで俺ばっかりこんな目に遭わなきゃならないんだ」
「こんなやつ、いなくなればいいのに」
って思ってるとして。いつもじゃなくても、ときどきそんな思いが心をよぎったとして。
その気持ちを否定しなくてもいいからね。
優しいりょーちんは「父さんの方がつらいのに、自分なんて」って思うかもしれない。
確かに、お父さんもきっと苦しんでる。
でも、りょーちんが傷ついて苦しんで悩んでるのだって、本当のこと。
自分の痛みを、誰かと比べることはないんだよ。
誰かよりも苦しくはないから自分は耐えるべきなんてそんなことはないんだ。
りょーちんが苦しいなら、辛いなら、痛いなら、嫌なら、そう大声で叫んでいい。

りょーちんがお父さんを捨てても。
見捨てずにずっとそばにいても。
どっちの道を選んでも、それ以外の道を選んでも、その選んだ道が正解だから。
誰かにとっては間違いでも、りょーちんが幸せになる道ならその道が正解だから。
胸張って堂々とその道を歩けばいい。

それから、りょーちんがこうやって悩んでいること自体も決して無駄なんかじゃないからね。
こんな目に遭わなきゃよかったってきっと思うと思うけど、でもそうやって感じた痛みって忘れられないから。
だからこそ、同じような痛みを抱えた人を守ることができる。支えることができる。
優しいりょーちんにとって、きっと周りの人の支えになれるってことそのものが喜びになると思うよ。

人はみんな幸せになるために生まれてきたの。そのために生きてるの。
だから、まずは自分を一番大切にしてね。自分を大切にしたうえで、周りの人の幸せを考えてあげてね。
りょーちんの幸せを、我が事のように願っている人が、実はいっぱいいるんだってこと、忘れないでね。

りょーちんは、独りじゃない。独りぼっちじゃないからね。

りょーちん、そして世の中のりょーちんの力になりたいと願う者より。

NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』