4.「Good Conversation」 – 『PROUD』 全曲ソウルレビュー –

※2016年12月11日に自作ブログに投稿した記事のサルベージです

本格ヒップホップトラック「Good Conversation」

アルバム4曲目、「Good Conversation」はイントロからうねるファンクネスが迎えてくれる。

次々と音が入ったり出たりしながら咲き誇るファンクネスを構成し、全体として一つのヒップホップトラックとして成立しているさまは、まるでCommonの「Like a Water for Chocolate」(2000)のようだ。

清水翔太はこの「Good Conversation」という曲をだいぶ楽しんで作ったのではないかと、俺は想像する。

いろいろな音を入れたり抜いたり、構成を変えたりしながら、試行錯誤をくり返して作ったのだろう。

そして自分のセンスに忠実に、かっこいい音を作っていく喜びを感じていたのではないだろうか。

ともすればリスナーの感性に気を遣いながら、ポップネスのために自分のセンスを抑え気味にしていたこれまでの清水翔太とは違って、自分の好きなものを突き詰めていく清水翔太の姿を、俺はこの曲に感じる。

清水翔太の「やっちゃえ」宣言

歌詞は一聴したところ、大人同士の刺激的な出会いの一幕を描いている。

出会った瞬間にピンと来る相手というのはいるものだ。

そういう場合、不思議なことにお互いにピンと来ていることが多い。

「惹かれ合っているなら、さあgood conversationを始めましょう」、という、全体としてはそんな歌詞だ。

しかしここでも俺は、2曲目「PROUD」の時と同じように、「君」とは誰だろう?という疑問で立ち止まる。

君の脳内へ一人旅へ 一瞬でそこへ降り立つぜ
腹ん中何があるかなんて
知りたくないでしょ 見てみぬふりで
Pretty Babe 我慢しないで
俺は何も気にしてやしないぜ
君とここにいれるだけでいい
どっかの誰かよりだいぶいい

俺がなんとなく勝手に思いついたのは、「君」というのは「音楽」のことなのではないかということだ。

そう聞いてみるとこの曲は、なりふりかまわず改めて音楽と本気で取っ組み合い始めた、清水翔太のアティチュードを表現しているとも受けとれる。

たとえばパーティだとか、知り合いが多く集まるような場で、初めて会って惹かれ合うような誰かがいた場合のことを考えてみる。

そんな時、お互いの交友関係だとか人目を気にして、もう一つ踏み込まないまま関係が始まらずに過ぎ去ってしまうなんていうこともある。

しかしこの歌は、そんな時でも全力で頭を絞ってgood conversationにたどり着き、関係を深めてみようよと呼びかけている歌だ。

つまりそれを解釈すれば、清水翔太が、リスナーや制作・販売関係者に気を遣って音楽的な何かをあきらめてしまうのではなく、そんな中でも自分の音楽への探求をあきらめないのだと強く思い定めたという宣言にも聞こえる。

次々と積み重ねられるラップの一つ一つから、俺はそんな宣言を感じる。

それはひるがえって、様々なしがらみやバランス取りに汲々として息苦しくなっている世の中の人々への、「やっちゃえ」宣言でもあるような気がして、俺は勝手に勇気付けられるのである。

Put your hands up
思い込んでみませんか
できると思えばきっとできる
初体験でも Try してみる
Put your hands up
思い込んでみませんか
君がいるならば俺は生きる
これが俺の意志です

成功するかとか、受け入れられるかなんて、やってみなければわからない。

相手が自分をどう思っているかなんて、知り合ってみなければわからないのである。

君を知れば 僕を知れる
そのドアを早く開けさせて
惹かれ合う 求め合うなら
さあ始めよう Good Conversation

気になる相手がいるなら、絶対に声をかけてみたほうが後悔せずにすむというのが、俺の人生をふり返った教訓だ。

むしろ、それをしないならば、いったい何をしようとして生きているのか。

遠慮や躊躇など捨てて、さあやってみよう。

書く力になります、ありがとうございますmm