平田オリザさんのオンラインワークショップをプロデュースさせて頂いた話

Online Synaptic technologyの小瀬(かずゆき・かーず)です。

1ヶ月も前の話であり、すでに「ナレッジサイエンス・ラボ」の立花さんが記事を書いていますが、私自身も振り返りもかねてブログの記事として残しておこうと思います。

イベントの申込ページ

https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01087v10zp02e.html

参考動画(最初の30秒ぐらい) 

https://www.youtube.com/watch?v=_qRGPt3_n1E

序章

5月初旬のある日、それは何気なくみていたニュースと、私のSNSでの呟きからはじまりました。

そのニュースは、劇作家の平田オリザさんがNHKのニュースで行った取材を起点とし、その後のSNSでの発言により、いわゆる「炎上」状態になってしまったという記事でした。

私は、ちょっとしたご縁で、日本ファシリテーション協会北海道支部のイベントのお手伝いをしており、そのテーマは「私たちは「わかりあえなさ」とどう向き合うのか」というものでした。

このイベントは折しも北海道におけるCOVID-19の感染者増加などの理由により中止となってしまいましたが、この中止プロセスにおいても「人と人とのわかりあえなさ」というのは何故発生するのか?と考えさせられました。

平田オリザさんに話を戻しましょう。

平田オリザさんはその著書の中で「人と人とのわかりあえなさ」について語られています。しかしその様な知識や見識をお持ちの方でも、ネット社会では炎上してしまう。「なぜこんなことになってるんだろうな」と呟いたところ、知人から1つのメッセージが届きました。

「平田オリザさんに、興味があるんだ。オンラインでいろいろイベントやってるし、平田オリザさんのワークショップ、オンラインで開催できないかな?」

オンラインでの様々なワークショップを模索していた私自身、どこまでできるか?という思いもあり、今回のワークショップ設計のお手伝いをすることにしました。

準備

平田オリザさんは、演劇を取り入れたワークショップや、青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイナー育成プログラム(通称WSD)でワークショップのデザインに関する講義を行っておられます。

まだまだオンラインでのツール使いこなしなどが広まっていない状況で、あまり高度なことを要求することには無理があるだろうとおもいつつ、対面で行われているワークショップでよく行われている「ゲーム」の1つはワークショップに入れたいという思いもあり、「カードを使ったゲーム」をオンラインでのワークショップに取り入れることにしました。

そのゲームとは、数字が書かれたカードを配って、配られたカードの番号に応じて、他の参加者と話をするというものでした。

対面でのワークショップではカードを配ること、そしてその場で同時に話をすることは比較的容易に行うことができます。

しかしオンラインで、その参加者が同時に話をすることはそのシステムの制約から行うことができません。

そこで、参加者が購入したチケットの番号を配られたカードの番号に見立て、近いチケット番号の参加者を「ZOOM」の機能である「ブレイクアウトルーム」を使い、小グループにして話をしてもらうという方法を考えました。

そして、もう1つのワークショッププログラムは「フィッシュ・ボウル」の技法をオンラインで行ってみることにしました。

「フィッシュ・ボウル」とは、数名の対話を行うメンバーを中心に、他のワークショップ参加者が、その周りを取り囲む様に座り、中心メンバーの対話に耳を傾けます。

中心メンバーの席は常に1つの余り席を開けておき、周辺メンバーは話し合いに参加したくなったらその席に座って、対話に加わります。

一方、中心のメンバーである程度話をしたと感じたメンバーは、席を離れ周辺のメンバーとなるという対話手法です。

「フィッシュ・ボウル」に関しては、中心メンバーを4人とし、それ以外の参加者はビデオをオフ、かつ参加者に「ビデオ以外の参加者を非表示」にしてもらうことで、中央の参加者に集中してもらうという工夫をしました。

そして、多くの参加者は1秒でも長く平田オリザさんのお話を聴きたいだろうと考え、当日のZOOMの利用方法については、最低限で済む様に事前に参加者がその使用方法を把握できる様、説明資料を作成することとしました。

募集期間は2週間弱ながら、平田オリザさんを批判するために参加する参加者を避けるため、ワークショップデザイナー育成プログラム修了生,日本ファシリテーション協会の会員および北海道大学CoSTEP修了生等の関係者限定とし、非常に限られた範囲としたものの、195人もの方々にお申し込みをいただきました。

最終的にアレンジを含めた4つのプランを平田オリザさんにお示しし、1つのプランに絞り込んだ上で、当日のワークショップに臨むこことなりました。

開幕

万全なつもりで望んだ当日のワークショップ。多くの想定外が発生。オンラインでのワークショップは開幕直後から多くの火消しに走り回ることになりました。

まず最初のワークショップで使うチケットの番号は、全ての参加者がその番号を把握していない状況。チケットデータを確認しながら各参加者に番号を割り当てていきます。

さらに事前の資料も確認されておらず「読んでないので解りません」とのコメントが...

まぁ、そうですよね。掲載していたら読んでもらえるというのは主催者の傲慢かもしれません。

さらには、オープン直前や、オーブン後に「申込メールが見つからないのでで、参加のためのURLを教えてください」とのメールが飛んできます。会場の混乱を解消しつつ、バックグラウンドでその問題を解消するというマルチタスクをこなしていくことになりました。

ありがたいことに、メインの話題提供をオリザさんにお願いしていたこともあり、私はトラブル対応に集中することができました。そんなこんなで、オリザさんの話は数%しか印象に残ってない訳ですけど...

なんとか1つ目のワークである「カードゲーム」を乗り越え「フィッシュ・ボウル」に移行します。

この説明やデモでも、やり方を見直すべきことがありました。通常のオンライン対話と異なり、一言だけを発話して、対話から外れてしまうリレートークとなってしまい、意図していた対面での「フィッシュ・ボウル」のような対話の場を作ることが難しくなりました。

その後、ブレイクアウトルームに別れ、再度各グループで前述のフィッシュボウルでの対話を試してみたり、参加者全員で対話をしたグループもあった様です。

最後に数名にチェックアウトのための共有をしてもらいいったん終了となりました。

終了するも冷めない熱量

ほぼ定刻でワークショップは終了、後は残った人とオリザさんでの対話が続きます。会が終了しても30分以上オリザさんを含む100人近い人が残り、夜11時近くまで対話を続けたところで、流石に3時間も続けていてはオリザさんもお疲れだろうし、ご家族にご迷惑となる可能性もあったため、オリザさんのお話を終了させていただきました。

オリザさんが退席後でもなお、50人近くの人が残り、フィッシュ・ボウルでの対話が進みます。オンラインで行うフィッシュ・ボウルは確かに難しいものの、さらにブラッシュアップしていけば対面と同じ様に、あるいは対面で開催する以上のフィッシュ・ボウルが開催できるのでは?とその可能性を感じることができるイベントとなりました。

オンラインでのイベントやワークショップは、このCOVID-19禍により大きく発展し、また新たな道を模索できるステージを作ったと考えます。

現状に満足して止まることなく、新たなワークショップ手法を開発していきたいなと考えるイベントになりました。


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